木工品量産?

偶然にも数多く作る(かも知れない)木工お題が重なっている。

ひとつ目は、ボールペン。話によると会社敷地に植えられていたソメイヨシノの木を伐採して建物を建てることになった会社があり、その桜の木を使ってお客様や関係者に記念品として配布できる品を、との依頼が木材会社に舞い込み、知人の木工家を経てボールペンを作っている私のところに話がやって来た。もしかしたらボールペン200本ぐらい、とか。5本、10本なら何の問題もないが、200本となると朝から晩まで長期間必死にやらないと間に合わない。その間他のことが出来ないので、それは些か荷が重いとためらったのだが、納期は長く取って構わないとのことで、お受けすることにして(まだ最終決定ではない)、まずは試作品を作ることになった。最初、話があったのは昨年なのだが、切った桜の木が乾燥するまで数カ月待つことに。製材した薄板をしばらくストーブ側で乾燥させたという激しく反った板が今月になってやって来た。早速、切って鉋掛けをしてボールペン用に小さな木の棒にしたが、まだ少し湿気を感じたので工房でしばらく乾燥。ソメイヨシノは、初経験の桜だが(家具用に山桜やブラックチェリーはよく使われる)きめ細やかな上品な木で桜の花とどこか通じる印象を受ける。中心部にはこのような茶色のシマ模様があり、辺材はこのように明るい白色である。

ここから心材、辺材、その境目あたりの材を使って3タイプ5本の見本を完成させ昨日郵送した。なかなか上品な仕上がりで気に入った。少し木の模様がついた心材の方がどちらかと言えば面白みがあるかも。この先、どういう展開になるのかな。

 

もう一つは、こちら。知人の依頼で限られた予算で200個のイベント用の小さな木工土産との話からスタートした。色々と会話した結果鍋敷きに決定。材料の木の棒を準備するのを引き受けた。これらに穴をあけてダボで接合して完成させる工程は、大勢でワイワイやりながら作ってもらうことになっている。千個近いダボは、物干しざお用のシュリンクチューブで数多くの丸棒をまとめて締め付けてカットするという素晴らしいアイディアでYさんが一気に完成済みである。

5種類の木で約800個余りのパーツが出来上がった。最終的には下のような形の鍋敷きとなる予定。「井」の字型鍋敷きより作る手間が少なそうなのでこちらに決定。来月中旬には、10名ほどで一日で組み立てることになっている。

木工教室3月

今月の木工教室での作品から(完成間近含め)。

こちらは、ヒノキのティッシュペーパー・ボックス。ヒノキの香りと共に使えます。ティッシュペーパーを収めた後に上蓋を乗せて使います。4辺は板両端を45度(留め)にカットして留め削り台を使って手鉋で仕上げてもらいました。接着時にヒノキの薄板(約10mm)が幾分反ってしまったのも手鉋できれいにに修正してアクセントと強度強化用にチキリを入れて完成されました。奥はおまけの練習用一合升風ペン立て(?)。

もう一人は、職場での書類配布に使う同寸の箱3個。1個目は、すべて手加工・手道具で完成し、あとのふたつはバンドソーを始めて本格的に活用してもらって、半日で2個の組み立て接着まで終了、手加工の2~3倍のスピードです。次回、ほぞ組の出っ張りを手鉋で平らにして塗装してもらえば完成予定。徐々に難しい技と機械利用が増えていきます。

工房訪問+木材市

今週、愛知県一宮市の家具工房 Trunk さんをお訪ねした。代表の福岡さんは、名古屋で毎年6月に開催される木の家具40人展の運営委員をされていて、2年前の6月に初めてこの家具展に参加させてもらった時、ブースが近くてまた年齢もほぼ同じということもあり、親しくお話をさせていただいたのが最初の出会いでした。工房は、元繊維工場だったそうでこの写真のように超広々としていて木工房YZが5つも6つも入りそう。ここで数々の素敵な手作り家具が生まれている。隣には広い常設ギャラリーも。

 HPから拝借

ちょうど木工教室の最中にお邪魔したので、生徒さん達の製作の様子を見せていただいたり、教室の進め方などについて貴重なお話を伺うことが出来た。巨大なプレスマシンやルーターマシン、ベルトサンダーほか教科書に出てくるおよそ全ての木工機械も完備されている。最重量機械の手押し鉋盤や自動鉋盤などもキャスター付きの頑丈な鉄枠の台に乗っていて手で押せば移動可能になっていることに感心。あれやこれや、大変勉強になりました。大変有難うございました>福岡さんへ。

訪問の翌日が岐阜県各務原の木材市の日であることに出発直前に気付いて、これ幸いとその日岐阜で泊まり翌日の木材市に今年初めて行ってきた。福岡さんの工房内の壁に立て掛けられている物凄い量の木材を見た直後だったからという訳でも無いが、今回は軽トラの荷台を埋めるぐらいの板材を積んで帰ることになった。

殆どは、値段が吊り上がることもなく(それどころか入札者がいなくて値下がりするのも多い)お買い得品が殆どながら、一枚だけ少し背伸びして一枚板を落札。

 いつ、家具になれるかな?

これまでボールペンや一輪挿しで少量しか使ったことのないクラロ・ウォルナットというシックな材を落とすことが出来た。軽トラから降ろして家具移動用のキャスターに乗せて工房の壁に立て掛けるまで、やたら重くて妻との二人掛かりでも大変だった。乾燥しきるまで当分壁飾りである。

自動鉋整備と曲木用帯鉄

年末に出来なかった自動鉋盤の整備が3月に入ってようやく完了した。刃の切れ味が落ちたので予備の刃と交換し、合わせてベアリングのオイルバスに入っている機械油の交換である。

 4枚の刃の入れ替え

 オイルもそっくり入れ替え

材の送りは、未だ快調なので調整不要。刃を変えると材の逆目も起きずツヤツヤの仕上がりに復帰した。

で、刃の研ぎを依頼するための工房近くの一円機械さんに持って行ったのだが、図らずもスクラップ置き場に破断した帯鋸の刃が捨てられていた。以前参加した曲木講習会で曲木に必須の帯鉄は、帯鋸の刃から刃の部分を切り落としたハガネのベルトがベストというのを聞いていた。ということでその帯鋸のスクラップを喜んでもらって帰ったのは言うまでもない。

 これが帯鋸刃

幅10cmほどの、何か所かでひん曲がった恐ろし気な鋸刃である。早速、工房のディスクグラインダーに金属切断用の刃を取り付けてこの鋸刃から3cm幅程度の鋼板を切り取ろうと悪戦苦闘の開始。

 

取りあえず、刃の折れ曲がった箇所で切断して、一番短い部分を使って3cm幅に切断してみた。ディスクサンダーをスタンドに取り付けた工具で何とか短い帯鉄を切り取ることは出来た。だが、欲しいのは大人用椅子に使う2m超と子供用椅子に使う1.2m程度の長さである。その長さを切り取る根性なく(余程うまくやらないと切断ディスクが折れて飛び散りそうで怖い)、この作戦はあえなく中止。

ここで止めるとまた何年かがあっという間に経過しそうなので、引き続きネット検索して帯鋸の製作会社を検索してみた。関西圏の会社にひとつ目星をつけて、電話して事情を話すと帯鋸刃を作る際の材料から刃のない帯鉄を譲ってもらえるとのこと。早速、幅と長さの連絡をしたところ、数日後にはついに待望のハガネの帯鉄がついに手に入ったのである。

 光り輝く新品帯鉄

これでやっと曲木に再チャレンジの道具立てが揃った。遠からず再挑戦である。因みに前回の失敗の原因のひとつは、梱包用の幅の狭い鉄ベルトを使ったので棒のサイズがベルトより広くてそこから割れが生じた、というのが勝手な仮説である。結局、まともな帯鉄入手まで3~4年も掛かったことになるのだが、今回のスクラップ帯鋸の発見を機に思いがけず解決したのであった。

今度、機械屋さんに行く際に不要となった帯鋸刃を再度スクラップ置き場に戻させてもらわねばならない。市のごみ回収にこんなのを出すと叱られそうだしね。

椅子解体修理

壊れた椅子の修理を依頼された。今回もウィンザーチェアに分類されるタイプの木製椅子。飛騨高山のメーカーのもので購入後40年以上経っているとのこと。さすがに40年以上も経つと接着剤の効きが衰え、座板も接着が駄目になり二ヶ所でパックリ割れているほか、背中を支える丸棒が座板にささっている部分ややはり脚のほぞ部分で何カ所もの接着が外れてかなりお疲れの状態である。肘掛けの塗装も40年間の使用で半ば剥がれ落ちている。

ブナ材が使われているようだが、木自体は非常にしっかりしたいい材で接着さえやり直せば、まだまだ使えそうである。最初のハードルは、椅子の分解である。10年や20年しか経っていない椅子だと接着剤がまだまだ強固に効いていて、全部を分解できないこともあるが、今回はゴムハンマーで叩いて写真のようにバラバラにすることが出来た。

文字通り、バラバラになった。接着剤がすっかり劣化してしまったようで、接着部で木が割れたりすることもなく接着箇所だけがきれいに外れている。ここまできれいにバラバラに出来ると有り難いというものではある。

最初に座板を再接着。元はいわゆるイモ接ぎという接着剤だけで貼り合わせてあるたのだが、接着強度の向上も狙ってビスケットを使って接着し直した。薄皮一枚分の鉋を掛けて新しい木材面を出すとともに平面を出し直して接着するわけである。

座板はこうやって接着し直すのだが、元の木が不均一に収縮していたり、接着箇所に若干の段差が出て、塗装も一部取れてしまうので、座板のカーブにそってサンディングして塗装も全て削り落とした。裏面もついでに平らに鉋掛け。

肘掛け部分の塗装も削り落として、あとは背板部分と脚部分を順番にエポキシ接着剤で組み立て直せば、組み立て完成となる。座板と肘掛け部分が真っ白な無垢の木状態になっているので、再塗装せねばならない。

このような部分的な塗装は、非常に悩ましい。色も合わさねばならないし、丸ごとのスプレー塗装も出来ない。というわけで刷毛を使って2種類の塗料を3度重ね塗りして何とか元に近い色に近づけてみた。

工房で作る家具の塗装は全てオイル塗装で、木の内部にオイルを刷り込むイメージなので塗りむらは発生しないのだが、今回のような濃色のウレタンニスでは木の表面に塗料の層を残さないといけないのでなかなかに難しい。刷毛を一気に木の端から端まで塗れればいいのだが、座板の奥は丸棒が邪魔をするのでどうしても塗り継ぎが必要となり、刷毛むらが見えてしまう。このあたり、更なる勉強が必要と感じる。

ともあれ、これでまたこの先何十年かは使い続けてもらえるであろう。

木のお皿を旋盤加工

工房近くにお住いの奥様から、お孫さん兄弟に木の手作り皿を贈りたいので作ってほしいと注文をもらいました。いくつかの候補の中からブラックチェリー材に決定。厚さ23ミリ程度で直径23センチ(工房の旋盤で掴める最大径)ほどの薄いお皿を作らせてもらいました。

丸い板に旋盤取り付け用の金具を取り付け、皿尻側にチャックで掴む凹みを作り、次にこの凹みを旋盤のチャックで掴んでお皿の表側を掘り、再度表裏をひっくり返して今度は外周部を大きなチャックで掴み直して、先ほどの皿尻の凹み加工部を削り落として底面を平らにします。

食器にも使える安全安心な塗装を数回施し(室内ではやりたくないほど強烈に溶剤が匂うのですが、乾けば無臭です)、耐水性のある仕上げをすれば水洗いも出来るのです。

小さなお孫さんたちが、これから毎日木の食器に接して、木の温かみを知ってもらえればこんな嬉しいことはありません。

木工教室2月

2月の木工教室では、手づくりボールペンを希望されたので初めての木工旋盤を経験してもらった。おふたりが、それぞれ友達やご家族へのプレゼントということで合わせて5本が完成。いろいろな木材をボールペン用に準備しているのだが、好きな木を選んでもらって、それと組み合わせるボールペン金具部分のキットにもモデルや金・銀・ガンメタル色などがあり、そこから選んでもらう。旋盤作業で最初に角棒の中心に穴をあけ真鍮パイプを接着するところからスタートする。角材を丸く削る段階で木の角部分が割れて顔に飛ぶ可能性があるので安全のためフェースマスクを使ってもらう。一旦丸棒になってしまえば、あとはお好みでオリジナルの形に仕上げてもらう。サンドペーパーを120番から4000番まで順番に掛けて表面をスベスベにしてワックス塗装したのち金具をパイプに圧入すれば完成となる。3時間ほどで1本が完成できる。

という訳で無事に完成したボールペンがこちら。

左から神代欅、パープルハート、トチ。パープルハートは削った直後は茶色なのだが、一日も経つと紫に変色するという不思議な木である。最初は、プレゼント用に2本を作るつもりでスタートされたのだが、出来上がってみると自分用のも欲しくなったと更に1本追加されたのでありました。

こちらの方は、パオロッサと黒檀。黒檀は誠に渋い。

ご希望の方は、半日教室で一本完成できますので宜しければどうぞ作りに来てください。完成品がいい方は、工房に1ダース以上はいろいろな木とモデルで完成品を取り揃えていますのでお好きなものをお選びください。お好きな木での特注ももちろんOKですよ。