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テンセグリティー・テーブル製作

昨年9月の工房ブログで模型のテンセグリティー・テーブルを作ったという紹介をさせてもらった。

 その時の模型

その際にこの模型を実物大で欲しい酔狂な方からのご連絡をお待ちしています、と本気で期待する訳でもなく投稿の最後に書いていたところ、岐阜県の会社から本当に注文が来るという思いがけない出来事が起きた。

模型では、簡単に作れるように直角の加工だけで作ったのだが、もう少し浮揚感の強いデザインを所望されたので、最終的にこんなデザインに決定した。40cm足らずの正方形の天板が浮いている小ぶりのテーブルである。

通常の家具作りでは木と木を直角に組むことが多いのだが、今回は斜め配置する部材を斜めに継ぐ必要があり、滅多に出番のないデジタル角度計付の定規で墨付けした。これらをデジタル角度計を活用して設定した丸ノコ盤で斜めに部材を切ったり、斜めにほぞをカットしたり、何カ所かは手鋸で斜め切りしたりと結構大変だったものの何とか部品加工を終了。

「へ」の字に曲がっている部品がここでは最も重要な箇所で、大きな力がほぞ組を破断する方向に掛からざるを得ないので大きめのほぞを組んで接着後にさらにほぞ部を横断して貫通するダボを入れてさらに補強した。

 ほぞ補強のダボ

模型のように釣り糸で吊り上げる訳にはいかないので、今回は鉄製の細いワイヤーを何十本か撚って作られているワイヤーロープで吊ることにした。その金具も色々ある中から悩んで選定し取り付けた。

今回は、木工だけでなくワイヤーロープの両端に金具を通してから丸く折り返してアルミパーツをカシメて固定するという金属加工で四角(すみ)と中央部をつながねばならない。木を切るのと勝手が違って高い精度で作るのにも難儀した。ワイヤーをつないで宙に浮かせてから脚裏にあるナットでワイヤーの張力を調整しつつ、天板が水平になるように微調整して。。。ついに完成!

静止画では、浮揚感が伝わらないので動画も撮りました。

完成したテーブルを引き取りに来られるまで1週間ほど工房に置いていたのだが、この間やって来られた皆さんほぼ例外なく不思議な面持ちで見たり触れたりされてました。まじまじと眺めてどうなってるの? 一体何に使うの? と質問連発。

昨日、岐阜から引き取りに来ていただいたのだが、お話を伺ったところ、お酒を飲む場に置いて話題作りにしたいとのことで、テンセグリティーテーブルで検索して当工房のホームページに来ていただいたらしい。酔狂な家具を求める方だけあって、デカい豪華海外スポーツカーに積んで持ち帰られたのでありました。

今回のこのテーブル、これまで珍注文ランキングトップだった「兜の角」を抜き去り、トップにおさまりました(工房主の独断ランキングですが)。

少ないお酒で酔うことが出来るテンセグリティーテーブル、あなたも如何ですか? もっと違うデザインでももちろんOK!

工房小ネタ③:マジックテープ

工房小ネタその③は、マジックテープ。

電線などを束ねるときにクルクルと巻き付けて固定し、何度使ってもなかなかへたれないというあれである。正式名称がどれなのかよくわからないが、他にも面ファスナーだとか、結束バンドとか色々な名前があるようだ。

工房には、いろいろな電動工具があるのでそれらを片付ける際にこのマジックテープを使って電線を束ねるようにしている。

テキトーにホームセンターなどで買ったり通販で買ってみたりするのだが最近性能の差が気になって来た。何年も使っていると固着力が落ちてきたように感じるテープもあるし、新しいにも関わらずイマイチだったり、逆に最近買った中に素晴らしいと感じるものもある。

感覚的には引っ掛かる側と引っ掛ける側で(早い話、テープの裏表で)構造が違うのは分かるのだが、目を近づけて見てみても老眼には何も見えない。

という訳で小型顕微鏡の出番! 何年も前に神戸の竹中大工道具館で鉋の研ぎ方教室というのに参加したことがあってそこで初めてその威力を教えてもらったのである。私が行った職業訓練校の研ぎの時間は、ただ見本の研ぎと各自が研いでみるだけの授業でちっとも科学的でなかったので自己流脱出を夢見て参加したのである。結局は、その後も自己流が続いてる訳だが顕微鏡で見る習慣だけは身に付いたので十分に参加した値打ちがあった。

こんなに小さくて2千円ちょっとだけど威力抜群。鉋の途中が引っ掛かるなという時これで覗けば、はっきりと刃の欠けが見えるのである。で、こいつの出番。

まず最初に一番古い近所のホームセンターで買ったマジックテープを見てみた。こんな微小キノコがテープ片側の一面に生えていた。このテープは大分ヘタってしばりつける力が弱くなってるものである。

テープの反対側は、こんな感じ。写りがイマイチですみません。何しろ小さな顕微鏡の接岸レンズにiPhoneのカメラレンズを近づけてかなり拡大して写さないといけないので手持ちではこれが限界なのだ。細い繊維がもじゃもじゃとループ状にテープ表面を覆っていた。まあ、これは想像通り。

次に泣く子も黙るアメリカの名ブランド3M製のもの。ワンタッチベルトという名前が付いてた。去年ぐらいに高性能を期待して買ったもの。

ところがこれがサッパリ冴えない。新品なのにくっつき力が弱くて頼りない。はがすときのバリバリという音もしない(ように感じるぐらいナヨナヨと剥がれる。こいつも見てみた。

なんだ、このクラゲのようなきのこは? もっと気合を入れろ、と言いたくなるではないか!  キノコのカサの下側も丸みを帯びてるのでループに引っ掛かる力が弱い、と見た。反対側は、ほぼ上のと同じループ繊維の森だったので写真省略。

で、最後は最近お気に入りのやつを見てみた。このテープは(まあ新品なのでもあるが)しっかりくっついてはがすときも気持ちよくバリバリっと音を立てる(ような気がする)。この気持ちいいという点が大事。

なんとキノコ型ではない!2本足のタコが逆立ちしている(ような気がする)ではないか。2本の反り返った脚が反対側のループをしっかり捕まえて、あのバリバリ感を生むに違いない!

そんな訳で小ネタ③のまとめなんですが、じつはこの3番目のマジックテープも中国通販で買ったもの。手元のたった3種類のを見ただけで結論付けてはいけないのだが、なんだかオリジナリティーを感じるではないか。中国製造業はもはや模倣からオリジナル品に着々と進歩しつつある、というのが工房小ネタ①~③を通じての吾輩の考察となった(書き始めはそんなつもり全くなかったのに気が付いたらそうなってた)。さて、間違ってるか、正しいのか? 答えは、遠からず身の回りの品々でよりはっきりするに違いない。がんばれ、ニッポン! てか?

 

工房小ネタ②:工房のリモコン化

小ネタその②は、工房のリモコン化。

まずは、機械室照明の無線リモコン化。工房スペースは、全く同じサイズの隣り合う倉庫をふたつ借りて壁をくり抜いて(むろん家主の許可を得て)通路を設けてますが、照明スイッチはそこから少し離れたシャッター脇なのでついつい消すのが億劫で点きっぱなしの事が多かったのです。今年になって無線式リモコンのいいのを見つけました。

壁の電源スイッチから壁の中に追加で電線を這わせて床上に新たに設けた穴をあけ、近くのコンセントから延長コードを引っ張って来てACアダプターで12Vを作り、壁の中に入れたリモコン本体に供給し、スイッチからの電線を本体基板のリレーにつなげば出来上がり。

リモコンはこんなのを通路脇にテープで貼り付け。

追加のリモコンを組み立て室にも置いてるので消し忘れに気付いた時には、さっと消せます。壁があるので赤外線リモコンではまね出来ない技。お陰で機械室100Vの電気代が半減しました。

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これに味を占めて次に集塵機のリモコンも赤外線式から無線式へ切り換えました。工房の集塵機はパイプを通じて色々な機械で発生する木屑を集塵するのですが、複数の機械と繋がっていて、これらの機械を使う際に集塵機を予めスタートする必要があります。その都度、集塵機のところに行ってスイッチを入れるのがメンドーな訳です。ということで、数年前に取り付けたのは、赤外線式のリモコン。今は外しましたが、こんなのでした(日本メーカー製)。

左の本体の背面にあるプラグをコンセントにさし込めば、右のリモコンのスイッチで本体表に付いてる100Vのコンセント電源を入れたり切ったりできます。ここからの100Vの電線を集塵機の3相200Vをオンオフする電磁接触器という大型リレーの操作コイルにつなげば、小さなリモコンで数キロワットの大型モーターも入れたり切ったりできます(3/11修正:間違って電磁開閉器と書いていました、修正します。電磁接触器+サーマルリレー=電磁開閉器の関係です)。

まあ、それなりに便利で5~6年使ってきましたが、木工教室でいろんな方が操作する際にリモコンの向きが悪かったり、発光ダイオードの付いてる頭の部分を手で覆ったりすると操作出来ないという弱点が。で、こちらも照明用と同じく無線式に変更しました。

上の写真の黒いケースに入ってるのが交換した無線式リモコン本体の基板。ここに100Vをつなげばリモコン操作でリレーが働き、100Vを入れたり切ったりできます。

手に持ってるのが集塵機用のリモコン。どっちを向いていようと、手のひらですっぽり覆って操作しようとも安定してオンオフ出来るようになりました。工房のあちこちに3個のリモコンを置いたので実に便利。おすすめです。

因みにこれらの無線式リモコンは学習機能があり、更にリモコンを一個一個個別に識別出来るので複数リモコンの使い分けも可能。実によく出来てる。これも昨日のバンドソー・ブレードと同じく中国製。検索しても日本製やアメリカ製は出てこないので多分中国オリジナル製品。ワンコイン前後(本体+リモコン、更に送料込み)とこれまた驚きの価格。買い占めたいぐらいです(しないけど)。

工房小ネタ:バンドソー刃のたたみ

工房がらみの小ネタを幾つか披露したい。

最初は、バンドソー(帯鋸ですね)のブレード(刃です)について最近ビックリしたこと。工房のバンドソーのブレードは、長さが1周で125インチ(=3175mm)もあるので保管や輸送時は3つのループを作るように折りたたみます(折りたたむには少しコツが要りますが、ネットで動画がすぐに見つかります)。ブレードをネットで注文すると大体40cm角ぐらいの薄い箱に入って送られて来て箱を開けると35cmぐらいの直径の3重に折りたたんだブレードが入ってる訳です。

私のバンドソーは、Lagunaという会社のもので(製造はアジア製に間違いないけど)これまでその会社の米国通販で数年に1度ぐらいまとめて買ってました。ところが、先月在庫が無くなりかけて来たのでその会社のホームページを見たら直販ページがなくなってる! 別の米国の木工用品の会社にはありますが送料含めれば倍以上の値段になるので断念して日本で探して先日無事に調達出来ました。やはり3重に束ねた箱で届きました。

ついでにいろいろ探したところ中国の通販でも売っていることが分かったので(当然かなり安い)初めて注文したところしばらくして届いた箱が20cm角ぐらいしかありません。ありゃ、これは寸法を間違えて送って来たんだとがっくりして開梱したら何と5重に折りたたんだブレードが入ってました。ええっ~、5重に折りたためるんだとビックリして目からウロコが数枚剥がれ落ちました。

日本で調達したのと同じ幅広(19mm)のブレードも注文していたのが本日届きました。今度は箱が15cm角ぐらいです。今度こそダメだとがっくりして箱を開けたら何と7重に折りたたんだブレードが入ってました。目からウロコが今度は10枚ぐらい剥がれ落ちました。

あまりにも驚いたので記念撮影。

全体をぐるりと取り巻いているのが1周3175mmの折りたたんでいないブレード。左上がこれまで買っていたブレードの箱、デカいですがこれが刃の幅ごとに違う箱に入ってアメリカから届いてました。その下が3重に折りたたんだブレード。真ん中は同じサイズだけど(幅はちがいますが)5重に折りたたんでコンパクトになったもの。右端のが今回ウロコを剥がしてくれた7重巻きのもの。箱の大きさが半分以下です。

折りたたんだブレードは、ハガネ製で凄く弾性があるので折りたたんだ状態で結束バンドで勝手にほどけないように固定されてます。7重に折りたたんだのはいかにも窮屈そうなので3重にして保管しておこうと結束バンドを切りました。2本目の結束バンドを切ったその瞬間にバネが伸びるかのように(まあバネみたいなものですが)7重の折りたたみがとけて1重のブレードになりました。中国から来るブレードは、刃の側にブラスチックのカバーで囲ってあるので怪我せずに済みました。

因みに5重に折りたたむのは、3重に折りたたむのを2回やればいいに違いないとやってみたら出来ましたね。7重は怪我しそうなのでやりません。

で、今日の教訓。この7重に折りたたんだ工夫と刃をむき出しにせずカバーをしてある点など、中国の技術や工夫凄いな、と感心した次第。昔は安かろう悪かろうとか、コピー商品だとか言われていたけど(その要素はまだ否定出来ないけど)気が付いたら先頭走ってる感がする。肝心の切れ味は、まだ試してないので何とも言えないけど、1本のブレードに刃のピッチを2種類混在させていたりするので(ピッチが荒いと切れ味がよくて、細かいと切断面が滑らかと言われてます)、きっと切れるに違いない、という予感。値段も随分安いので競争相手は大変だなあ。

私も現役時代電子部品業界で、韓国・台湾・そして中国と競争に明け暮れて散々苦労したことを思い出しました、とさ。

木工教室から(2021年2月)

前回報告から4カ月ほど経ったので、その間にも続々と新作が出来上がっています。

この数カ月小物づくりに集中されてきたTさん。近江八幡の里山の半生だったリョウブで手彫りスプーン(大人用x2、子供用x2)、カエデの湯飲みを3個、それにシュリ桜のサラダボールを3個。カエデもシュリ桜もとても硬い乾燥木で旋盤加工は随分苦労されましたが、すっかり腕を上げられました。ガラス塗料で仕上げです。次回作の曲木加工の作品も近日完成予定。

精力的にプレゼント用のおもちゃに取り組んでいるHさん。動画は大きくてアップできなかったのですが、ゴムひもを支柱に巻き付けてから手を離すと長い間左右にクルクルと回り続けます。

最新作のガラガラは、左右に振るといい音がします。

合間には、傘立てとコースターも。置き場所が限られてきた、とかで最近はやや小物寄りです。

Kさんは、お洒落なテーブルを。今、このテーブルに合わせてケヤキのスツールを製作中です。

そしてご自宅用とお友達のクリーナースタンドも。

まだ教室スタートから1年も経たない女性のTさんですが、どんどん上達されてます。この小箱、見本はあったのですが、すぐれたデザインで蝶番を使わずにスマートにふたの開け閉めが出来ます。別の木工品に使われていた飾り板をふたに取り付けて一段とオシャレになりました。

  

そしてキャスター付きワゴン台、上の小箱と同じ山桜の板で作られています。初めてほぞ組を使った作品で、角のみ盤にも挑戦してもらい、とても頑丈に出来てます。

 端材でタブレット台

飛騨のからくり格子細工を取り入れた鍋敷き。上から見ても裏返しても木を編んだように見えます。コンマ数ミリの精度で加工しないと組めません。接着剤は使ってないけどもう分解できません。

Yさんは、最初の教室課題作を終了してステップアップ中。栗の小引出しもきれいに仕上がりました。

 

当初、書類箱としてスタートしましたが、最終的には鏡台に変身して奥様へのプレゼントとなりました。ふたのパネル部分は鏡板と言って4辺を斜めにカットしてロの字の部材の隙間にピッタリと納まってます。

 

 

お寺の傘立て製作

12月に郵便ポストを納めたお寺さんに今月は傘立てを無事納品完了。お寺の行事で来客が多い際にも対応できるやや大ぶりの傘立てである。設置場所が玄関先の収納棚の隣の50cmほどの空きスペースにピッタリ収まるサイズで収納棚のナラの木目とも合わせるために同じナラ材を使った。

最初は、こんなデザインを書いてみたのだが、さしたる特徴もなく今ひとつ。複数の傘を立てると向きも乱雑になりリフォームされたばかりの新しい玄関がごたごたしそう。

 

で、書き直したのが、これ。傘を吊り下げられるようにしたので傘の向きが揃ってスッキリするはず。ご住職が袈裟を着て雨天にお使いの際の傘サイズは、通常の物よりひとまわり大きそうなので予めサイズを聞いたうえで十分に収まる高さにしてある。

ついでに玄関先に設置したイメージ図も作って見てもらい、これに決定。デザインツールに付属のペイント用の素材がイマイチなので木やタイルの質感はいまいちだけど、まあイメージなので。

いよいよ、ナラ材を使って製作開始。格子のあるデザインなので部品数やほぞ・ほぞ穴が沢山必要でそれなりに加工は手間取ったものの何とか準備完了。

接着手順を間違えないように順番に組み立てていく。

というような段階を経て無事完成しました。

細かい配慮も幾つか。。。折りたたみ傘を吊り下げるつまみも4個ほど取り付けてみた。

塗れた傘を入れると雨水が垂れるのでそれを受ける角皿を底部分に引き出しのように差し込めるようにした。これは、傘立てが完成してから底部の寸法を控えホームセンターを探し回って見つけたピッタリサイズのアルミ製。

塗装を終えて無事に玄関に収まりました。隙間スペースに設置する最初の瞬間はちょっとばかり緊張が走りましたが、無事最初の図面通りに置けて一安心。玄関キャビネットと色・質感も揃い、寸法もドンピシャ。

すっかり気に入っていただき、頼んでよかったとのありがたいお言葉を頂戴いたしました。こちらこそ有難うございました。

因みにこれが新しい作業台での最初の木工となった訳ですが、いやあ新しい万力ふたつ大活躍してくれました。そちらも満足満足!!

新しい作業台デビュー

工房に新しい作業台がデビュー。木工教室や注文製作の間隙を縫って、完成までに随分時間がが掛かってしまったが、1月に完成したばかりである。

巨大な万力をふたつ取り付けた。フロントバイスと呼ばれる左側の巨大な万力は、最大で30cm近く開くので大きな木工品もガッチリと固定できる。クイックリリース機構が付いているのでハンドルを左に一回転すると引き出しのように前後にずらして動かすことが出来る。

もう一つの万力は、エンドバイスと呼ばれるもの。実は6年も前にアメリカの木工ショップから通販で買って、いつか作ろうと思いつつこれまで果たせずにいた。日本の木の中では相当に硬い部類に属するナラの厚材を根性で(?)鋸とノミで刻んでアリ継ぎという丈夫な組み方でL字を作り、中に金属製の万力金具を組み込むというなかなか面倒な構造をとる必要があった。

この巨大なL字型の木の塊の中に極太の万力用ボルトが潜んでいてハンドル操作で前後に動くのだがフロントバイスと違ってこのバイスで直接対象物を挟み込むという使い方はしない。エンドバイスの側面に沿って穴がいくつか空いていて角棒が差し込んであるのが分かると思うが、この角棒に意味がある。

作業台の天板前面に貼り合わせたナラ材にも同様の角穴を設け、これらの穴にジャストサイズの角棒が差し込める。この穴を十数個、等間隔に並べ適当な穴に角棒を差し込み、その角棒間に工作物を挟んでエンドバイスで締め付けることで作業台に固定できる訳である。こんな感じ。

2m近い長さの木材も簡単に固定できるので両手を使って切ったり掘ったりの作業が極めて容易になる。完成してまだ10日程度しか使っていないのだが、この仕組みを使うと仮組したほぞを分解するのにも便利に使えることを今日発見した。圧縮はクランプなどで簡単にできるのだが、引っ張るのは意外に大変なのでこれは嬉しい発見。

この作業台を作るのに大いに参考にしたのが、この雑誌。記事に出てくる見本はアリ継ぎをそこいらじゅうに使ったものだが、そこまでの根性なく多少手抜きの組み方をした(天板と周囲の板間はビスケットで接着)。 エンドバイスはこの雑誌がなければ、まだ眠っていたかも。何しろ謎解きのような構造なのである。

因みに一番古い下の作業台は、作ってからかれこれ10年ほどになろうか、大きな万力を備えて今でも現役である。ツーバイフォー材(2x4)の3倍ほどの幅がある2x12の板を並べた天板は、すっかり貫録を増している。

工房で木工教室を始めるようになって作業台を3台に増やしたのだが、安直な2x4の作業馬の上にベニヤの厚板を乗せただけのもので通常の作業に大きな不便はないものの簡易万力を取り付けて使うのでしっかり材木を固定したりすることが出来ず、必要な時には上の作業台の万力を使ってもらっていた。この手のがふたつあるのだが、こちらは選手交代で引退してもらった。

ということで、木工作業効率大幅アップなるかな?

 

 

師走の木工

新年おめでとうございます。昨年何かとお世話になった皆様もそうでもない皆様も、大変有難うございました。お陰様で2021年を元気に迎えることが出来ました。

2020年、工房もコロナ禍と無縁ではいられませんでしたが、基本ひとり工房で製作に勤しむには影響はありません。木工教室は、そんな訳に行かずしばらく休んだり、人数が減ったりしましたが、有難いことにほぼほぼ以前のようにワイワイと(マスクしつつも)楽しく出来るようになりました。

そんな2020年の師走12月も工房近隣の方々から木工品のご依頼を頂戴し、街の木工屋としてはそれなりに役目を果たせたかもしれません。そんな中の幾つか、ではなくて、すべてをご紹介。

 

市内のお寺さんからのご依頼で大きな書類入り郵便物もすっぽり収まる大きめのポスト。ご住職が中学時代に作られたという歴史あるポストが半世紀の役割を解かれその後釜となりました。実は、工房入り口に設置したポスト(簡便に合板を木ねじで留めて作ったもの)をご覧になって、このイメージで作ってほしいとご注文いただきました。栗の無垢材で縦に深いので下部に小さな郵便物を取り出せる扉も設けました。強力磁石を仕込んでパチンと閉まるように一工夫。

築100年以上という建物の柱に合うよう濃い目の塗装をということで塗装後はこうなりました。設置した際の写真がこれ(2月に写真差し替えました)。

年越しとなってしまいましたが、引き続き今度は傘立てを依頼いただいています。それが、年の初めの初木工となる予定。

隣町の方からの依頼は、お持ちのガラステーブルの脚が気に入らないから作り直してほしいとの事で、同じ柄のナラ材で同サイズで作りました(右のふたつ)。 オリジナルは、ナラ柄の印刷シートが貼られた非無垢材でしたが、角もピッタリあった無垢材に変身。「完璧な仕上がり」と喜んでいただきました、はい。

次は、工房設立以来最も珍しいご依頼。珍注文記録(?)の品です。

彦根藩の兜の角の部分(ネットで調べると鍬形と呼ぶそうです、知らなかった)。ひこにゃんの兜と同じ彦根藩のです。兜収集がご趣味の隣町の方のご依頼。兜は、江戸時代の本物らしいのですが、この角の部分は傷みやすいのでほぼ失われているのだとか。この後、ご依頼主自ら金色に仕上げられるらしいです。因みにこんな風に左右分解できる仕組みになってます(見本通り)。見本以上にピッタリ組みあがると満足頂きました、はい。

年末最後の納品は、別方向の隣町からご依頼の陶器製鍋敷きの受け皿。大量に作らせてもらいました。こちらも栗の木。

濃色をご希望で黒いオイル塗装で仕上げました。栗の大胆な木目は,道管も太く濃色にも綺麗に染まり、お気に入りの材です。

28日に無事納品完了して、2020年最後の木工となりました、はい。

2021年、はたまたユニークなご注文の来ることを楽しみにしております。木で作るものなら何なりと。お待ちしております。

Winds 太平の椅子修理

Winds 太平という今はなき飛騨高山の家具メーカの椅子修理を今年も数多くこなした。 現存する会社だとその会社自身で椅子の修理を受け付けてくれが、なくなってしまった会社の椅子を修理したい場合、ネットで検索ということになるようです。そんな中に天の采配で私の工房にやって来る訳である。インターネット時代なればこそですね。

ウィンザーチェアと呼ばれる系統の伝統的な椅子構造で座板に丸脚の丸ほぞが差し込まれた丈夫なものなので、大抵は30年~40年使いこんだ末の痛みで、最も多いのが座面接着部の割れ。座板に突き刺した4本の脚で体重を支えるため、座板中央に最も大きく剪断力が働き中央寄りの接着部が最初にダメになる事が多いようです。

うまく分解できた場合は、座板の割れた面に鉋を掛けてビスケットと呼ばれる簡易ホゾ的な部材を割れた面の間に溝を掘って差し込むので新品時の接合以上に丈夫な貼り合わせが出来ます。

時には。背中部分や脚がどうしても分解できないこともあります。仕方ないので狭いすき間から薄ノミや金属板にサンドペーパーを貼ったもので接着剤をこそぎ落として再接着しますが、再接着部分の強度が充分でない可能性が残るので貼り合わせ後に座板下から補強しておきます。見た目、ギブスを当てているようですが、裏返さない限り見えないので外見より強度優先ですね。

次は、超珍しい修理事例ですが、背中の曲げ板が何故か途中で破断していて、おまけにそこに金属板を当てがって修理されたものでした(座板にも割れあり)。

この修理痕も見苦しいので再度直してほしいというご希望。いろいろ悩んだ末に破断部を切断して別の曲木を接着して成型することにしました。

という事で、無事修理完了。お送りした椅子をご覧になって、「素晴らしい出来栄えに、感動しました」という連絡を頂いた時は。木工屋として舞い上がります。

背中部分などで長年の使用で塗装がはがれてしまっていることもよくあります。そんな時には、一旦その部分の塗装を削り落としてから再塗装します。

塗装し終えれば、すっかりキレイになってこの先何十年か使い続けられることと思います。この時は、3脚同時修理。

修理の面白いのは、それぞれのケースで破損状況が違っているので修理方法を選んで組み合わせ、時には新たな材で破損部を作り直したりと、いろいろ知恵を絞らねばならない点ですね。うまく修理出来て依頼者に喜んでもらった時にその苦労が報われる気がします。新しい家具を作った時と違う面白さですね。

これが、2020年最後のブログとなりました。大変な一年だったかと思いますが、皆様よいお年を!

アンプ・クレードル

ほぼ2年ぶりにアンプ修理用の台(アンプ修理架台とかアンプクレイドルとかの表記もあるようです)製作の依頼を三重県の方から受け、先月納品しました。以前作ったものから少し寸法を変えて欲しいという事で、今回は少し幅が小さめで高さは高くしたものになりました。前にも書いたように隣町に住む元同僚でギターアンプの製作や修理をされている徳田さんの依頼で作らせてもらったのが最初だが、これが4台目という事になる。1~2年に一度、このマイナーなホームページを見つける方がいるという事実に驚きというか、有難いと思う次第です。

同じものを作るのも面白みがないので、もっと無茶ぶりしたい方どこぞにいませんか? 大量生産はしませんが、変な注文は大歓迎です。