Winds 太平という今はなき飛騨高山の家具メーカの椅子修理を今年も数多くこなした。 現存する会社だとその会社自身で椅子の修理を受け付けてくれが、なくなってしまった会社の椅子を修理したい場合、ネットで検索ということになるようです。そんな中に天の采配で私の工房にやって来る訳である。インターネット時代なればこそですね。
ウィンザーチェアと呼ばれる系統の伝統的な椅子構造で座板に丸脚の丸ほぞが差し込まれた丈夫なものなので、大抵は30年~40年使いこんだ末の痛みで、最も多いのが座面接着部の割れ。座板に突き刺した4本の脚で体重を支えるため、座板中央に最も大きく剪断力が働き中央寄りの接着部が最初にダメになる事が多いようです。
うまく分解できた場合は、座板の割れた面に鉋を掛けてビスケットと呼ばれる簡易ホゾ的な部材を割れた面の間に溝を掘って差し込むので新品時の接合以上に丈夫な貼り合わせが出来ます。
時には。背中部分や脚がどうしても分解できないこともあります。仕方ないので狭いすき間から薄ノミや金属板にサンドペーパーを貼ったもので接着剤をこそぎ落として再接着しますが、再接着部分の強度が充分でない可能性が残るので貼り合わせ後に座板下から補強しておきます。見た目、ギブスを当てているようですが、裏返さない限り見えないので外見より強度優先ですね。
次は、超珍しい修理事例ですが、背中の曲げ板が何故か途中で破断していて、おまけにそこに金属板を当てがって修理されたものでした(座板にも割れあり)。
この修理痕も見苦しいので再度直してほしいというご希望。いろいろ悩んだ末に破断部を切断して別の曲木を接着して成型することにしました。
という事で、無事修理完了。お送りした椅子をご覧になって、「素晴らしい出来栄えに、感動しました」という連絡を頂いた時は。木工屋として舞い上がります。
背中部分などで長年の使用で塗装がはがれてしまっていることもよくあります。そんな時には、一旦その部分の塗装を削り落としてから再塗装します。
塗装し終えれば、すっかりキレイになってこの先何十年か使い続けられることと思います。この時は、3脚同時修理。
修理の面白いのは、それぞれのケースで破損状況が違っているので修理方法を選んで組み合わせ、時には新たな材で破損部を作り直したりと、いろいろ知恵を絞らねばならない点ですね。うまく修理出来て依頼者に喜んでもらった時にその苦労が報われる気がします。新しい家具を作った時と違う面白さですね。
これが、2020年最後のブログとなりました。大変な一年だったかと思いますが、皆様よいお年を!