就業体験生と一週間

就業体験プログラムでやって来たN君との5日間が、あっという間に過ぎ去った。今日の夕方無事に出来上がった苦労作を手に満足げな顔つきの彼とサヨナラをした。

前のブログに書いた通り最初の2日間は馬づくりで鋸・ノミに慣れ親しんでもらい、3日目から予定通りスツール作りである。皮つき板のナラ天板と同じくナラの角棒4本からスツールを作ってもらうという趣向である。今度使う道具は、鉋。曲面も削れる南京鉋と平らな面削りが得意な平鉋のふたつを渡して、まずは天板の皮を南京鉋で削り落として耳をきれいに仕上げてもらう。その次は4本の角棒を両鉋で自分の好きな形の丸棒に手鉋で加工してもらった。

天板と脚4本をカッコよく仕上げるのにほぼ丸2日近く、辛抱強く鉋掛けをしてくれた。徐々に自分の思い描く形に木を削っていく鉋掛けは、やっていてなかなか楽しい作業なのだが、彼も鉋屑を足元に堆積させながら、集中を切らすことなく黙々と作業に励んでくれた。後で聞いてみると、一番気に入ったのはノミで次が鉋掛けだったとのこと。鋸は線通りに切るのが難しいので3番目、納得である。いくらでも写真を撮るチャンスがあったのに撮り損なってしまった。で、削り終えた材がこれである。先に完成した馬2匹も一緒に。

座板への傾斜した穴あけ(丸ほぞ穴)も初めてのボール盤でやってもらう。この穴に差し込めるように脚側の上端を穴径と同じサイズで丸く削る(丸ほぞ)作業は、手鉋ではちょっと厳しいので旋盤でやるのだが、それも粗削り部分は経験してもらった。

で、脚を取り付けた後、脚切りで高さを調整すればもはや完成寸前である。得意の手鋸で脚切りも任せとけ、の図。

最後は、仕上げのサンドペーパー掛けをしてオイル塗装をしたら遂に完成。そうそう、その前に座板裏面に今日の日付と製作者名を電動彫刻刀で入れてもらった。

上の写真の右下に見えるのは馬を作った際に切り落とした馬の顔部分を仕上げてアクセサリーとした、家族へのお土産である。

という事で5日めの夕方、定刻までに無事全てのプログラム完了したのであった。これから先、N君の成長を世界でひとつのこのオリジナル・スツールが見守ってくれであろう。

ところで、普段ひとり作業でタラタラ不規則に過ごしていた工房生活が、彼が来てくれたこの5日間実に規則正しい生活を送ることが出来た。早寝してよく寝て早起きできた(普段よりね)。N君に感謝である。また遊びに来てね。

就業体験生がやって来た

先日、県内の高等養護学校の先生が工房にやって来られた。学校行事として就業体験プログラム(就業前能力養成事業)があり、モノづくりが得意な生徒に工房で木工の仕事を体験させてもらえないかとのお話であった。二日前後ならお手伝い出来そうとお答えしたところ、押しの強い先生(?)から1週間5日間のプログラムなので、という事でお受けする運びとなった。

ひとりで切り盛りする個人工房で、決まった仕事がいろいろとある訳ではないので、工房にある道具や機械を使っての仕事内容やいろいろな木の特徴なども話しつつも、基本的には手道具の使い方の練習と簡単な木工をやってもらうプログラムで進めることにした。

17歳のN君は、趣味が鉄チャンということで電車の事なら何でも来いで、あちこちの鉄道に乗ったり、交通博物館に行ったりはもちろん、自分で電車や汽車のペーパークラフトを自分で設計して組み立てるという猛者であった。で、今週月曜日がその第1日。

工房の機械も道具も危ないものだらけ、という安全についての注意事項を説明したのち、早速鋸とノミの実習スタート。教材は、昔訓練校でやった木の馬づくりである。この木の馬、なかなかうまく考えられていて、縦ノコ・横ノコ・斜めノコの練習、それにノミの練習も出来るという打ってつけの教材である。

鋸もノミも使ったことがないらしいのだが、鋸の基本の力まずにまっすぐ前後に鋸を動かす事が最初から上手に出来るのでビックリ。いい鋸は、鋼材が固いのでヘタクソに木を切ると簡単に鋼が割れてしまうので、ホームセンターの鋸を使ってスタートしたのだが、しばらく練習したら上手に使えて来たので迷わずいい鋸と交換して使ってもらった。昔、訓練校の授業で鋸を使った時の仲間の誰かさんより、はっきり言ってウマい。

という事で、月曜の就業時間中に無事完成。火曜日にも2匹目の馬を作って作ってもらって、今日からは鉋の実習。南京鉋と平台鉋を使ってのスツール製作に挑戦中である。

金物市と木材市へ(2)

金物市の数日後、今度は各務ヶ原の平野木材で毎月一度開催されている木材市へ出掛けた。数年前まで毎週通っていた湖西の慧夢工房の松井さん(私の木工師匠です)と先般匠の祭でお会いした際に11月の市に行かれると聞いていたので、私も一年ぶりに早朝目覚ましを掛けて軽トラで駆け付けたのである。

人生の楽園というテレビ番組をご存知の方も多いと思うが、たまたま6月ごろの放送を見ていたら近江八幡市に隣接する東近江市で手作り弁当箱を作られている寺本さんというご夫婦の話だった。で、その方が弁当箱の材料を仕入れておられるのが、岐阜の平野木材でその木材市での競りの様子も放送されたのでビックリしたことを覚えている。案の定、放送以降この木材市にやって来る人がどっと増えたらしい。

この木材市では、板材と巨大な原木両方の市がたつのだが、当然ながらその板材の方に参加するわけである。午前中5時間で千を超す競りを終える必要があるのでひと競りを0.3分≒20秒以内で終える必要がある。私が買えそうなこじんまりした材など(一山単位の競りもしくは複数枚の塊を1枚当たりの値段で競り落とす)ものの10秒足らずで終わってしまうことになる。スタート時の値段で買い手がない時は、値段が下がっていくのだがその下がった値段で応札者がいるとその瞬間で競り完了となってしまう。値段が上がっていくときにも応札者の値付けの後コンマ数秒で競り終了となってしまい、瞬間的な反応で応札しないと競り落とせないという厳しい(と同時に面白い)世界(?)である。

 板、板、板

 慧夢工房のお二人も

何が何でも仕入れたいと思っている材がある訳でもなく、また下調べもせずに出かけたので、その場で悩みながらひとテンポ遅れた応札はコンマ数秒遅れで常に競り終了後となってしまい、瞬く間に1000番台へと移ってしまった。

空の軽トラで帰る訳に行かないのでウォルナットの幅広めの板(でも1.3m程度の短い)3枚セットを終了間際にゲットしてきたのでありました。1~2年後に椅子になってもらおうと今は思っているが、どうなりますか?

 本日の収穫

金物市と木材市へ(1)

11月に入ってから兵庫県三木市の金物市と岐阜は各務ヶ原の木材市に立て続けに行ってきた。ちょうど、木工の合間の刃物研ぎをやっている最中に金物市(正式名称は三木金物まつり)をやっていることに気付いて、いそいそと砥石を買いに出かけた次第。鉋や鑿の刃物研ぎは、1000番と4000番の人工砥石で研いだ後(この時点で鏡のようにピカピカ)仕上げに少し天然砥石を使うと地金部分(木を削る鋼を支える軟鉄部分)の鉄が銀ピカから曇った黒色に変化して「研いだ!」感が増すのである。研ぎの本などを見ると天然砥石はピンキリではあるものの、素晴らしいものに出会うとよく切れるようになり、なおかつ長きれするようになる、などと書いてあり、少し違ったものを試したくなった次第である。会場に行くと何軒もの砥石屋もあり、試し研ぎもやらしてくれる。とはいうものの、必ずしも平らに仕上げられた砥石ばかりでもなく、違いを感じるもののどちらがいい砥石なのか、正直なところさっぱりわからない。何軒か回った後に、結局巣板と呼ばれる硬そうな砥石を買ってみた。やたらに広い会場には、体育館のような屋内でブランド刃物をブランド価格(?)で売る店もあれば、屋外のテント下で幾分錆が回った刃物や売れ残ったような道具が段ボールに放り込んで特価で投げ売りする店もあり、掘り出し物を探すのはなかなか面白いものではある。

帰る頃には、手元に鉋の刃や裏金だのミニ槍鉋、サビたのみ、売れ残りの外丸鉋(いずれ四方反りに改造予定)、それに唯一新品の替刃鋸などをぶら下げていたのでありました。

(木材市は次回へ続く)

木工教室募集開始のご案内

以前から時々リクエストをお聞きすることのあった木工教室をスタートいたします。先月は、旋盤で作る手作りボールペンをやってみたいという女性のご希望があり、半日コースでやってみたのですが、それもきっかけになりました。この7月、草津のコミュニティFMに出していただいた際にもパーソナリティーの方から教室はやらないんですかと聞かれて、秋にはスタートしたいと勢いで公言したこともあり、ようやく実現にこぎつけたともいえます。

とはいってもどうやって進めればいいか、やってみながら試行錯誤ということになるのかも知れません。取りあえず、単発の教室と継続的な教室のふたつでやって見てみたいと思います。単発教室では、ボールペンづくりやスプーン、カッティングボードなどの一日で出来るものとか簡単な家具を数回で作るイメージを描いています。継続教室は、文字通り継続して決まった日に工房で木工基礎から勉強してもらって、最終的にはご自分でデザインした家具を手工具と木工機械も使いながら作ってもらえることを目指したいと思います。

私自身も独学の日曜大工からスタートして、木工教室で教えてもらったことがきっかけとなり、やがて職業訓練校に行き、ついには大型機械を備えた工房を開設したという経験を経てきましたので、木工をやってみたいという方の手助けが出来れば、たいへん嬉しいことです。

先日おわった匠の祭で配り始めようと、その直前に急きょ作ったパンフレットがこれです。

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