若いご夫婦にちゃぶ台の修理を依頼された。ご家族から受け継いだ家具を再び使えるようにしたいという事で、修理できるか慎重に確認したもののなかなか厳しい。経年の木の痛みがひどく、天板下はほぼ木枠から外れ、木枠角の継ぎ部分には隙間が空き、ひどく反りも入っている。過去の修理によるものと思われるが、脚のほぞ部分が釘で補強されているものの木も痩せてグラグラな状態。何よりちゃぶ台特有の脚の折り畳み機構部分が、ほぼ全壊。金属棒を使ったかなりユニークな機構で興味深いが、構造に無理があり使うほど金属と脚部の接続部がえぐられる仕組み。部材も薄い軟材で再利用も難しい。という事で下半身は新規製作し、天板のみ(割れていて反りも大きいが修理は出来そう、大胆にも釘で取り付け!)元の材料を修理することで了承いただいた。
オリジナルの折り畳み機構の動画がこれ。残っている部材を無理やり並べて置いて手で動かしてみた。
天板は割れ(接着はがれ)でふたつに。
で、新たに作ったちゃぶ台の木枠の接合部は脚の曲げ伸ばしで大きな力が掛かりそうなので丈夫なあり継ぎを採用。
割れた天板は、断面に鉋を掛けて再接着。丸い板を貼り合わせるのはクランプを掛けるのが難しいのだが、今回は中央に火鉢用(?)の丸穴があったのでそれを活用。
貫でつながれた2本の脚が一体となって回転しないといけないので、金属棒とバネを使って木枠に取り付け、脚を立てた際に固定する回転板も取り付ける。これは、脚を折りたたんだ状態。
脚を起こして回転版で脚を固定。
という訳で天板を取り付けて修理完了。
今度の折り畳み機構は、こんな感じ。ちゃぶ台機構としてネットで紹介されているものと同じように製作してみた。各パーツの寸法をかなり正確に擦れ合うようにしないと脚のぐらつきを招くのでかなりシビアな製作が求められる。
引き取りに来ていただいた際、ご夫婦は蘇ったちゃぶ台を見て「また使えるようになって嬉しい」と大層喜んでいただいた。嬉しい一瞬。
脚をたたんでちゃぶ台を立て、丸い天板を車輪のように転がせば、全体を持ち上げることなく移動容易で省スペースを実現、という訳である。先人の知恵は素晴らしい。最近の家具店では、ちゃぶ台を見かけることはなくなったと思うが、こうしてみると改めて優れモノであることを実感したのでした。