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木工教室から(24年8月)

昨年末にご報告してから早くも8カ月を経過してしまいました。この間も木工教室の皆さんの作品がどんどん増え続けています。長い方は、教室に来られるようになり既に7年目に入っていますので大作・力作・意欲作が増え続けています。ここに紹介させて下さい。

製作者ごとに紹介しようか、それとも家具のジャンル別に並べようかといつも悩むのですが、今回は前者のやり方でご紹介。

  • Cさん

最近は、奥様のリクエストで茶道用の道具を次々と作られています。根っからのエンジニアらしくものすごく精緻な工作を追及されています。

お湯を沸かす電気コンロを隠して華麗なる茶道具に変身。

茶菓子用の角皿4セット。一見シンプルに見えますが側面が大きく傾斜しているので切断も接着もそして糸鋸カットも ものすごく大変でした。繊細な糸鋸のカット模様は上のコンロ・カバーと同じです。コンロ・カバーもこの角皿も山桜製。

 和菓子が乗った写真

そしてやはりお茶をたてるときの水指などを置く棚も。見本を参考にして特徴あるケヤキの杢板を使って完璧に出来ました。ひょうたん型なのでひさご棚と呼ばれるそうです。これは塗装前の写真ですが、塗装後はぐっと艶やかに。

使わない時は、このように組んで平らに折りたためます。

家具作りの合間には鉋を納める道具箱も完成。

  • K1さん

ベテラン木工女子のKさんは、この半年ほど掛けてウィンザーチェアに挑戦され続けていたのですが、今月遂に完成!!  脚や背中部分の丸棒は全部で15本もあるのを全て旋盤の削り出しで辛抱強く作られました。これらの丸棒はどれひとつとして座板に直角には差し込まれていないので全部工夫を重ねて電動ドライバーを傾けての穴あけが必要です。また背中上部の笠板はアイロン曲木に挑戦してもらいました。

曲げ終えた後、曲がりが戻らないようクランプした状態で1週間ほど置きました。

お友達から頼まれた可愛い小皿類・コースターも

  • K2さん

栗の丸椅子です。座板も脚も貫も全部旋盤加工で削り出しです。T字型に組んだ貫もうまく完成。

ご自宅でも木工が出来るようにとトリマーテーブルも作られました。

  • Mさん

おもにご家族からの依頼を受けて次々作られています。パンケースに鉢スタンド・額・キーボードテーブルと多彩な手づくり家具を楽しまれています。ケヤキを使われることが多いですね。

 

 扉を開けた時

 

   

  • T1さん

名字のイニシャルがTの方がなぜか7人もおられて書き足す数字も沢山必要です。

色々な家具をひと通り作り終えた感もあってか、T1さんは最近は八ヶ岳あたりで手に入れた生の(乾燥前の)樫の木を使って色々な手道具を自作したり、やはり山桜の丸太をクサビで割って斧で丸棒を削り出す生木木工(グリーンウッドワーキング)でスツールを半年近く掛けてコツコツ作られました。最近は早く多く作るというより作るプロセスを楽しまれています。

旋盤で削り出せば完全な丸棒を早く削り出すことも出来るのですが、グリーンウッドワーキングで敢えて斧や鉋類だけを使って丸太の山桜から手作り感あふれる素敵なスツールの完成です。ペーパーコードの編み込みも手間を掛けてされました。因みにスツール前に置かれている木槌も丸太の白樫から削り出してお作りになってます(柄も頭部分も)。

  • T2さん

奥様の依頼で作られたスライド蓋の道具箱。

最新作は、ご自宅用座椅子。超珍しい、メタセコイアの板材を入手して使われました。針葉樹なので杉と似た雰囲気もあり、木肌も柔らかく肌に優しい印象です。背中部分に少しひび割れがあったので強度補強と意匠を兼ねて黒檀のチキリが入っています。ウレタン系の塗装は匂いが強いので屋外で塗装してもらいました。防毒マスクが写ってますね。

  • T3さん

ふたりのお孫さん用にお作りになった幼児椅子2脚。違ったテーストのデザインで連続して出来上がりました。丸脚の方は旋盤での削り出しです。

  • T4さん

プロの現役住宅設計士でもあるT4さん、設計はお手のもの、次々とオリジナル家具が生まれています。

ローテーブルとしてでもスツールにも。立てて置けば高さのあるテーブルにも変身します。角部分は留(45度カット)接合し、アクセントと補強を兼ねたウォルナットのカンザシを治具まで作って苦労して組み込まれました。材は厚さのある栗板です。とても味のある板が家具に生まれ変わりました。

 ウォルナットでアクセント

こちらは山桜製のベンチ。座板に斜めに角脚を差し込むのを角ホゾ構造にされたので全て手加工のホゾ加工になり、丸ほぞと比べて5倍ぐらい大変になりました。

お洒落な栗の丸テーブルや やはり栗のキャスター付き移動棚も難なく完成。

  • T5さん

このTさんも力作が続々。まずは、飾り模様の板を無数に貼り合わせて超絶手間を掛けた末に完成された宅配ボックスから。ボックスの2面はケヤキの薄板をひし形に切り抜き木目や色合いを見ながらタイルのように敷き詰めています。もう1面はヒノキの板を別の模様に敷き詰めています。完成が近づくにつれ、宅配の荷物よりこのボックス自体の方がずっと値打ちがあるから持って行かれないようにしなくちゃ、とまわりから冗談が出る出来栄えでした。

自然の断面板を天板に用いた小テーブル。斜め脚が個性的です。

最新作は、ケヤキの天板・ヒノキの脚製のサイドテーブル。脚に大きな節穴があったのですが、かわいいワンちゃんの住み家になりました。蛍光塗料入りのレジンで埋めて夜間は光るそうです。

 小さな番犬が見張ってます

  • T6さん

本格的な木工家を目指して多くの作品に取り組む中で様々な技術に果敢に挑戦されます。

分厚いケヤキ板2枚を使ったオリジナル設計の椅子。もの凄い存在感です。教室で木皿に簡単な漆塗りを初体験されてから自宅で繰り返し練習して、何とこの椅子にも拭き漆を10回近く塗り重ねられて既に完成しています。秋の展覧会に出品される予定なので紹介は展覧会後にしたいと思います。この写真では分りにくいのですがお尻を受ける座面には中央部で深さ3cmほどの掘り込みもされています。大作です。

こちらはカバ材を使ったテレビボード、存在感たっぷりの自然板の特徴を生かされてます。

そして今年は手づくり市にも初出展。色々な木材を使った色々な小箱も作られました。そのうちの数点をご紹介。

 

 

手づくり市で必要な陳列台も瘤付き樺板で製作されました。

今は更なる上級編というべき3次元曲木にも挑戦中。完成後にそのウィンザーチェアの姿を紹介させて下さい。

  • T7さん

最後のT7さんの作品は、洗面台横に置かれる背の高い隙間家具。槙材の厚板をバンドソーで2枚の薄板に切り分けた板を使って深い引き出し3段、開き戸ひとつ、アクセスしやすいように上段は壁2面のみで構成されたお洒落な家具です。女性らしい気配りされた使いやすい家具になっています。重ねて設置されるので高さ1.8m近くもあります。

  引出し・扉をあけた時

 

  • Hさん

ご自宅用の家具類が増え続け、最近は職場で使う家具や小物作り用の治具なども作られてます。こちらは欅のスツールと杉板の棚。

  • Y1さん

まずは小物から。ご家族にプレゼントされたキーホルダースタンド。ご自宅裏山で拾って来た自然木を使われてます。

同様に裏山に生えていたヒノキが台風で倒れた時に所有者と共にチェーンソーで切り出した材を使ったスツール。このヒノキは、次々と家具に生まれ変わりつつあります。

こちらは、自宅出窓にぴったり収まるように設計された飾り棚。出窓のガラス側に向けて窓枠が傾斜しているのでそこに合わせるため側板も途中で折れ曲がっているので工作は大変でした。完成してご満悦の表情です。完成して持ち帰ろうとしたら車に乗らないという計算違いも(一目瞭然なのですが(笑))。顔出しは本人了解済みです。

工房の軽バンに積んでご自宅に運び、窓枠に設置した際に一発でピッタリ納まったのかそれとも少し鉋を掛ける必要があったのかそれは二人だけの秘密です(笑)。カッコいいでしょ!

  • Y2さん

木工教室でもっとも過激な節・板割れ大好き女子のY2さんの作品には常に最も目立つ場所に過激な節を持つ板材が選ばれるのです。自分で板材を調達する方には乾燥済み板材を扱う材木屋さんを紹介するのですが、その時も「出来るだけ目立つ場所に節のある板を選んで送ってください」と注文するほど。その影響力で最近は節を避ける人が減って来た気がします。

こちらは山桜の2段式巨大キャビネット、同サイズのもう1段の棚の上に乗せられ3段式のキャビネットが完成形です(写真なし)。上の段も当初は引き出しになる予定でしたが、背が高過ぎて取り出すのが難しいことに(幸いにも)直前に気付かれたので開閉扉に変更され事なきを得ました(笑)。塗装前の写真です、すみません。

 巨大なのでスライドレール必須

こちらはブビンガ板のソファー肘掛け部に乗せて使う小テーブル。その上に乗っている四角い切込みの有る板はさて何でしょう? 実は、スマホやタブレット端末のスタンドなのでした。シンプルにして痛快なデザインです。節のない板だったので仕方なく節無しです。

こちらは自宅の棚に後付けで取り付けたスライド扉。ウォルナット材で上下の溝板を作り、棚に取り付けた上で取っ手を張り付けたアクリル板を入れて完成。扉付のキャビネットに進化しました。ご自宅住環境が続々と快適になって行きます。

 

木工教室ではこのように大作・意欲作・チャレンジ作が続々と生まれています。前回から時間を空け過ぎたので作品数が半端ないですね。まだ写真の撮り忘れがあるかも知れないのですがご容赦ください。

なお、現時点で木工教室に若干名の空きがありますので木工やって見たい方おられましたら教室の見学も歓迎です。経験・道具一切不要です。木工への好奇心なり関心があればそれで結構ですよ。

最近の製作(24年7月)

今年に入ってから7月までに納入した主な家具(?)たちのご紹介です。色々なご依頼をいただいて作って来たのですが、なかなかバラエティーに富んでいるような気がします(笑)。

  • 糸撚り器

工房初物なる糸撚り器。彦根の女性の方からご依頼を受けて図面を書いて相談の上、製作しました。ご自分で繊維を撚って糸を作り、それを織って敷物などをお作りになるのだそうです、凄い!

お持ちいただいた板材プラス工房のパープルハート材を使って製作しました。大きな滑車と取っ手は木工旋盤で削り出しです。木工品で初めてベアリングを組み込みました。ほんの僅かだけベアリングより小さな径のドリルで穴を開けて2個圧入しました。

なぜこれで糸撚りが出来るのか分からないまま完成したのですが、完成後にお使いになる様子の写真を頂戴して初めて理解しました。納品後にこの垂直に取り付けた棒の上部にご自分で別の滑車を4個取り付けられています。大きな滑車を手で回すとヒモで上部の4つの滑車が回転してその滑車の軸に取り付けた糸(隣の部屋まで張られています)に撚りが掛かり、縄を撚るのと同じ原理で糸が撚られていくのです。な~るほど、ザ・ワールド、でした。

  • ベンチとコーヒーテーブル

こちらもやはり女性の方からのご依頼です。市販の家具にはない様な野性的な板を使ったベンチとコーヒーテーブルです。

コーヒーテーブルは、山桜をご希望。工房に合った何枚かの板材からこの板のこの部分を使って、という明快な選択をされました。

納入後のお使いの様子の写真も頂戴しました。

 

もう一方のコーヒーテーブルはこれ。工房での打ち合わせの際に半分冗談で見ていただいた欅の丸太断面材。径がおよそ45cm ~ 50cm ぐらいの厚板ですが、乾燥割れのヒビが全面に入った強烈なもの。何とこれがいい、と即決で決まったのでした。この写真は元の板を欅角棒に乗せた状態の製作前の状態です。

全面に入っている沢山のヒビの処理をどうしようか随分悩みましたが、レジン樹脂をヒビに何度も流し込んでは固まるのを待って再度流し込むというのを繰り返して隙間を埋めてみました。入手前に(多分)雨水などが染込んで出来たシミもあちこちあるのですがこれは個性という事でご了承済み。

完成したのが、これ。なかなか強烈でしょう?

でもすっかり気に入っていただいたようで納品後にこの写真を頂きました。「お部屋に馴染んで、とても気に入っております」との嬉しいお言葉。こちらも超嬉し~、です。

  • 桶胴太鼓台

何度も色々な太鼓台をご依頼いただいている市内在住のプロ和太鼓奏者の方からの今回のお題は「6尺2寸桶胴太鼓台」。本番前に棒状の脚台ふたつをX型に組んでボルトを締めて垂直脚の上に桶胴太鼓を乗せれば、ご希望の傾斜と高さに鼓面が来ます。

念のため、塗装前に太鼓を工房で台に乗せて寸法チェック。少し窮屈だったので4mmほど広げて調整しました。

てから黒塗装してキャスターを取り付けて2セット完成。栗材です(最近は殆ど栗を選ばれてます)。

同じ太鼓を地上160cmぐらいの位置にのせる櫓(やぐら)太鼓台も次回製作予定です(まだ設計調整中)。

  • 日本画用超巨大額

昨年末に納品した日本画用の額と同時に依頼を受けていた超巨大額。およそ1.3m x 2mほどの巨大な日本画を展示するための額です。個展の日程が決まっていたのでその日に合わせて納品する約束で製作しました。大きすぎて車では絵も額も乗せられないので絵はこのサイズの1/3の大きさのものを3枚並べて額に入れます。額も畳よりはるかに大きいので分解式にせねばなりません。山桜を選ばれたのでとっておきの巨大厚板材を使いました。

どういう構造にするかいろいろ悩みましたが丸ナットと呼ぶ特殊なナットを額の裏から差し入れて長いボルトで四隅を組むというデザインにしました。

京都御所のすぐ近くで開かれた個展にも伺いました。大きな日本画が収まり大迫力です。実は、11月に次の個展があるのでそれまでに同じものをもう一組作る予定です。

暮れに納品した小さい方の額(といっても45cm x 72cmほどあるので十分大きいのですが)にも何枚も日本画が入って飾られてました。一番好きだったのがこの絵、売約済みでした。どこへ嫁いで行くのだろう?

  • 左官おかもち

これも初もの。県内の左官屋さんからのご依頼でおかもち。最初、おかもちと言われて麺や丼などの出前用のおかもち???と思ったのですが、左官コテを収納して持ち運ぶ左官屋さん用の工具箱をこう呼ぶようです。

細かいところまでご希望がはっきりしていたので材を決めてもらって(やはり山桜に決定)、図面を書いてやり取りして修正の上製作しました。ご自分でベニヤ板を切って作ろうとされたらしいのですが、多忙で1年経っても完成しないので頼む事にした、とか。

取っ手を通しほぞにしてクサビを入れたり側面に丸い切り抜きを入れるとか、結構こだわりのデザインをご希望になったのでした。内側の側面にコテ掛けが3つ取り付けてあるので、ここに各種サイズのコテが沢山掛けられることになってます。お聞きしたら2百数十のコテを使い分けられるのだそうです、ビックリ! 工房にもたくさんの鉋・ノミありますが100種類もないと思うなぁ。手前の開いてる側に溝があるのですが、ここには自作されるコテ板が収まるようです。今度、使われている様子の写真をお願いしてみよう。

 塗装前

 塗装後

他に何脚もの椅子の修理とか、隣町の土鍋屋さんからの釜台や敷板とか作りましたが、ご紹介済みなので省略させて下さい。

現在取組中のものは、また次回に。

最近の製作(24年1月)

新年おめでとうございます。

今年の4月で工房開設から丸9年となります。これまで工房を応援してくださった皆様のお陰です。本当に有難うございます。木工教室をスタートしてからも丸6年が経過しました。大勢の木工仲間と知り合い、数多くの木工作品を作るプロセスで一緒に知恵を絞り互いに刺激しあう事で楽しく続けることが出来ています。改めてお礼申し上げます。

大晦日にこの半年間に教室で製作された皆さんの作品を紹介しましたが、年明けの今日は私が作ったものを幾つか報告させて下さい。

  • 舞台パネル

工房開設以来、色々な太鼓台の製作機会を頂いている和太鼓奏者の大橋さんからの新命題で舞台用音響反射パネルなるものを依頼されました。市販のものは金属製パネルで立派なのですが、なかなか値の張るものでこれを木製でずっと経済的にというご依頼です。取りあえず最初に6セットを完成して初舞台がこれ。

90x180cmもあるベニヤ板を1枚半使って、上部は折り曲げた構造です。運搬時はかさばらないように脚が折りたためたり、上部は分解できるようにした上で前面は真っ黒に塗装する必要がありました。太鼓台もこのパネルも縁の下の力持ちですが、太鼓のすぐ側で演奏を支える大切な責任を担ってます。

ベニヤの厚さ24mmは欲しいというご希望で、何しろデカくて重くて組むに従って一人で動かすのも大変になり難儀しました(笑)

  • 孫のベッド

数年前、長男のところの上の孫には作り終えたのですが、次は弟も自分の部屋で寝るようになったので作れという指令が。。。前回はコロナで時間が余っている時だったのだが、なかなかベッドひとつ作る時間を作れなくて、随分遅くなったのが、遂にようやく完成。

前回同様にマットレスを乗せるスノコ作りを最後に工房で手伝ってもらって無事完成。お兄ちゃんと同じデザインでトミカを並べる棚もリクエストされたので材以外は全く同デザイン。無事に毎晩役立ってます。

  • お釜台

陶器製の鍋や釜などをお作りの隣町の陶器会社様からのご依頼で時々まとめて作っています。この穴の中につばの有る炊き立てのご飯釜をはめ込んで食卓にお出しするようです。

側面が斜めに転んでいるので接着時はクランプするのが難しいのですが、試行錯誤の結果最近は専用のクランプ治具を数サイズ用意することで失敗なくスムーズに組めるようになりました。

  • ハンティング・チェア

こちらは、同じあきんどの里・観光駐車場内の革工房cogocoroさんとコラボのハンティングチェア試作品。木製脚部分の製作は私が担当してます。実は、cogocoroさんのお陰で近々市のふるさと納税品にデビューの予定なのです。

初期需要分を見込んで10脚分ほどまとめて製作しました。中央部に三又ボルトという金具が必要なのですが、これはまた別のところで調達せねばなりません。ふるさと納税という事で一体いつどれぐらいの製作数になるのか全く予測不能、どうなりますやら2024年の楽しみです。

  • 着物用衣紋掛け

着物用の衣紋(えもん)掛けを依頼されました。ゼロから作ってもいいのですが依頼者は私の幼稚園から高校までずっと同じところに通った近所の幼馴染。ネット時代のお陰で半世紀ぶりに再会しました。お子さんが昔使った洋服掛けを取りあえず使っているけど高さも足りず使いづらいと聞いたので、敢えてそれを改造しませんかと提案したのです。

これが改造後の衣紋掛け。背丈を伸ばして、水平の横棒を追加したり、削れ落ちた塗装を直したりして蘇ったのでした。

高さを持ち上げるために追加の柱を旋盤で削り出しました。デザインも他の部分と合わせつつ。

  • 子供椅子修理

飛騨産業の子供用ダイニングチェア。座面の板の貼り合わせ部が割れています。全部の接着箇所が劣化している場合は、一旦全部分解して、座面の接続部にも簡易ホゾのような部材を挟み込んで元以上に丈夫に復元できますが、この子供椅子は座面以外はしっかりした状態なので割れ目のごく狭いすき間を少しだけ広げて紙やすりを張った金属板を使って古い接着剤を削り落としてから再接着します。

板のつなぎ目がずれないように注意しつつクランプで圧着して接着剤の乾燥を待ちます。

こういう修理の場合は、全分解して接着面をきれいに鉋掛けする時と比べて接着強度に不安が残るので念のため座面裏に当て板で補強します。

最後に長年の使用で塗装がはげ落ちた部分を一旦落として再塗装。すっかり綺麗になりました。

  • ウィンザーチェア修理

名古屋の方からの依頼で大人用ダイニングチェアの修理。高山にあったWinds 太平という会社のウィンザーチェアです。既に廃業された会社で今では修理してくれるところが見つからないようでネット検索で私のところに依頼が飛んで来ます。修理を依頼されるウィンザーチェアの半分以上は実はこの会社のもの。繰り返して修理したので今ではすっかり慣れたものです(笑)。3脚の修理を依頼されたのですが、全て座面が割れていて、脚や背中部分の接着箇所も経年劣化でほぼぐらぐらになってました。

痛みの激しい椅子では、脚が完全に折れていたりほぞ部分が破損していたりで新しく部材を削る出す必要があるので少し費用が嵩みそうです。

依頼者と相談の結果、傷みの少ない部材を集めて2脚のみ修理を進めることになりました。上の子供椅子と違って簡単に全分解出来ました。こういう場合は座板もしっかり補強材を入れて再接着しますから元以上に頑丈に修理出来ます。

座面板の変形が大きくて貼り合わせ後に座面の目違い(貼り合わせ部の段差)が残ってしまった椅子は座面の段差を落とす際に塗装も全部落として再塗装します。

こうやって修理を進め、完成した2脚です。片方は座面全塗装し直してます。合わせて塗装禿げ部分もタッチアップ。これでまた数十年活用できます(見届けられそうにないですが)。しっかり作られた100%木製椅子の強みですね。

  • 宅配ボックス

これは自宅用。教室で凄く凝った宅配ボックスを作られている方がいて(完成までもう少しです)、前から我が家用に作りたいと思っていたのですが、こちらはずっと簡単な構造なので先に出来上がりました。

何の特徴もないのですが、安いベニヤ板を1枚ほぼ残らず使い切るという狙いで作ってみました。

鍵を掛ける方法で悩みましたが、写真のようなロック金具を発見したのでこれを採用。昨年9月に設置以来、不在で再配達という迷惑を掛けることがなくなり、宅配会社の人材不足にもホンの少し貢献かも?設置後2回だけ何も中身が入っていない状態で鍵だけが掛かっていることがありました。きっと試しに金具を回してロックされてしまい開けなくなったんですね。なので荷物を入れる前にロック部を回すと開かなくなりますよ、と書いたメモを鍵の横に貼り付け、それ以来大丈夫です(笑)。

  • 天板

ひとつは、山桜を4枚貼り合わせた天板。天板だけの依頼なので単に大きな板です。

こちらは別の方の食卓の天板に傷やシミが増えたので削り直しと再塗装の依頼。これは完成後の写真、見違えるようになりました。

  • 日本画用額縁

市内在住の日本画家の依頼で大きめの額(山桜製)6個を作らせてもらいました。これが2023年最後の製作となりました。

角部分の補強とアクセントを兼ねて三角形のチキリを入れてます。

  • たまには漆塗り

時間が出来た折に漆塗りもやってみました。生漆(きうるし)を塗って直後に拭き落としてしまう拭き漆。何回も塗り重ねるうちに深みのある光沢が徐々に出てきます。黒漆や友人の漆工芸家に教えてもらった根来塗りの真似事にも初挑戦(写真撮り忘れ)。自宅や息子宅で使ってるだけですが。

2024年は、既に太鼓台などの製作が決まってますが、着手はこれから。これからどんな難問のご依頼が来るのか楽しみです。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

木工教室から(23年12月)

気が付けば、今年も残すところ数時間となってしまいました。自宅の大掃除も既に完了、工房の小掃除も終り、大晦日恒例となったふるさと納税も終わりました(北海道のホタテ、下関のフグセット、静岡の中トロなど)。そうそう、家にある全部の包丁や果物ナイフの研ぎも一昨日完遂(出刃の刃こぼれは工房のグラインダーを使いましたが)。

このホームページのは、かつて同僚Mさんの個人事業用サーバーに永らく居候させていただいているのですが、年末恒例の感謝のしるしも今頃は届いているはず。

ようやく時間が出来たところでこのブログに思いが至りました。前回投稿から既に半年以上経過。年を重ねるごとに間隔が伸びて来ました。何とか、今日中に今年最後の投稿をしようと思っています。

とここまで書いてから半年分の写真を集めていたらもう9時。年内に間に合うかな? まずは、教室の皆さんの半年分の作品集です。

  • 最初は教室参加後に手道具や機械に慣れてもらう目的の課題作の最後に作ってもらう小引出しの競作、3名の方々のものです。図面はあるのですが、それぞれ好きにアレンジしていただきます。最初は、節大好き木工女子の方。一番目立つ場所に巨大な節を持って来るという教室始まって以来初となる個性豊かな作品。栗材です。

こちらは、何と現役大工さんの作品。さすが、あっという間に隙間ゼロの端正な作品が完成しました。山桜ですね。

こちらは、プロの女性住宅設計士の作品。板状の引手がスマートでカッコいいです。こちらも栗材です。住宅設計はお手のもの、これから先どんなものを作られるか楽しみです。

 開くとこんなこんな感じ

  • 自宅用の作業台を折りたたみ式で作られました。

  天板外すと。。。

  • 板を直行して継ぐのにアリ接ぎと言う大変手の掛かる手法で食器棚を作られました。使われた山桜が製作中に動いて反って来たのですがこの製作法のお陰でがっちり組みあがりました。上下に溝を掘ってガラス戸がスライドします。既に毎日活躍中です。

同じ方のスピーカー。マホガニーの厚材でガッチリ作られているので全くビビらずいい音で音楽を再生します。

  • 製作期間ほぼ半年掛かりの大作で新婚の息子さん宅用にテレビ台を作られました。側板と横板の間をクサビでつないだ凝ったデザインなのでクサビを外すと分解可能です。

これまたとてつもなく大変な欅板の象嵌の葉が2枚埋め込まれています。本体の板材がイタヤカエデなので葉も長野の山で取って来られたカエデの葉を使い、その形をそのまま欅の薄板に移して切り抜かれています。この形をそのまま板側にも掘りこむのは更に大変なのですが見事に完成です。大いに喜ばれたのは言うまでもありません。

作者は毎度カラクリをこらす方なのですが、この引き出しは左右に平行にスライドする仕掛けがあります。引き出し上部に磁石で半固定されたレールが仕込まれていてこれが天板下の溝を滑るのです。バッチリうまく行きました。

  • お洒落な3段引出です。引き出しが滑るのが仕切り板や四角い溝ではなくて45度傾いた角のある出っ張りの上を滑ります。側面からは引き出し内箱が見えています。普通の構造の引き出しよりずっと手が掛かる作り方になりますが綺麗に仕上がりました。

  • こちらも毎回手の掛かる構造大好きな元校長先生の窓際棚。脚を天板から45度の斜め向きに取り付けたいという事で、手間が倍掛かっています。斜めホゾを全て手カットで作られました。

同じく2枚の平行天板を脚が貫くデザインで作りたいという希望からスタートされた小机がこれ。やはり大変な手間です。

そして次なる作品は、はたまた手加工アリ継ぎによる壁掛け棚。左右側板には琵琶湖をくり抜きたいということでこれまた時間を掛けて糸鋸でふたつの琵琶湖が付いてます、凄い! 息子さん宅の壁に無事ピッタリ取り付けも終り、その出来栄えを激賞されたそうです。

  • 教室に通い始めてもう少しで4年になる木工女子さんの力作です。大物から小作品まで何でも来い。円形の皿は旋盤を使って比較的短時間で削り出せるのですが、楕円皿ではそうは行きません。丸のみを使って掘り出されています。ぐい呑みも合わせて完成。

この8角皿は中心を通る8枚の三角形の板を貼り合わせた手の掛かる作りです。綺麗に出来上がりました。

こちらは、小ぶりのアクセサリーボックス。壁掛けの部分と下の丸い棚に色々なアクセサリー類が収まります。とても端正な出来栄えです。

最新作は、教室始まって以来初となる組子細工を仕込んだ衝立。角の部分の角度が何通りかあるので専用の鉋台も作った上で手鉋でひとつひとつの部材を削り出されています。かっちり・ぴったり仕上げられています。素晴らしい出来です。

  • こちらもベテラン木工女子の手による色々な棚。色々な材を活用して置き場所に応じたサイズとなっています。どんなものがこの棚に飾られるのでしょうか?

そしてクリスマスの当日に製作された小さな木製クリスマスツリー。9割方完成したのですが、てっぺんに取り付ける星が未完成でした。来年のクリスマスには間に合います(笑)

  • 愛犬の専用撮影台を作られたのですが、何と折り畳み式。ネットで検索して見つけた写真2枚だけを何度も何度も見て考えて(図面なしで)、見事に再現されました。

 見事!!

そして教室通いに使われる大きな道具箱も。毎週の教室通いに大活躍中。

  • ユニークなほぞ継ぎでスツールを作られています。欅の木目が美しいですね。

  • 木工専用の工房を自宅庭に自力で建設されるほど気合の入った方の作品です。ハイチェアといえる背の高い丸椅子を作られました。太い丈夫な脚を旋盤で削り出し、T字型の貫も綺麗に決まりました。

凄いのは、この後の塗装。自宅工房で塗装を重ねてはサンドペーパーで平面出しをすることを数多く繰り返した末にこのような鏡面仕上げが完成しています。ここまで仕上げるのは本当に大変だったと思います。

こちらは友人からの依頼で製作されたテレビボード。栗の厚板を組み、スライド式の板扉を2枚前面に取り付けられています。縦使いの取っ手は黒檀製です。さぞや、喜ばれたことでしょう。

そしてこちらも教室始まって以来の快挙。教室で作られた栗の小引出しが滋賀県展で入賞作品に選ばれました! 上に乗っているのはヒノキの刳りだし小箱。最近は漆塗りにも挑戦されています。

 栃皿拭き漆

ここまで書いたところで今年も残り数十分のこすのみ。完成した写真を撮り損なっていることもあるかと思いますが作者の皆さん、ご容赦ください。言っていただければ来年追加掲載しますね。

何とか除夜の鐘の前に投稿完了できそうです! 皆様よい年をお迎え下さい。

病院チャペルの花台

先月下旬、工房から車で5分ぐらいのところにあるヴォーリズ記念病院に花台を納品しました。近江八幡市の最初の名誉市民でもあるW. M. ヴォーリズによって1918年に建設・設立された歴史ある病院ですが、昨年11月に新たな場所に新病院として少し離れた幹線道路沿いに移転したばかりです。

工房のすぐ近くにはやはり彼の手で開設されたヴォーリズ学園(旧近江兄弟社学園)があるのですが、その敷地内にある元幼稚園舎として建設されたハイド記念館の館長さんからのご依頼で病院内チャペル(礼拝堂)に花台を寄贈したいとのご意向でした。ハイド記念館でお会いした際に建物の中を案内していただき、ヴォーリズさんの思いや気配りの数々を感じることが出来る素晴らしい建物や調度品・当時の園児向けの家具類なども見せていただきながら直接にヴォーリズさんの身近で過ごされた彼女の思い出などもお聞きすることも出来、とても貴重な機会でした。

下の写真は、その際にハイド記念館の階段中段にある窓枠を写したものですが、ここに十字架があるのですよ、と館長さんから説明を受けた事が強く印象に残りました。

実は、2014年のヴォーリズ没後50周年を記念して「ヴォーリズ・メモリアル」と呼ぶイベントが近江八幡市内で開催されたのですが、その際に市のおやじ連メンバーとしてボランティアを務めたました。近江兄弟社学園の教室で丸1日の講習を受けて修了証を頂戴し、市内に残るヴォーリズ建築のひとつであるウォーターハウス建築の説明員として数日間、市内外から訪れた多くの見学者に説明させていただきました。

そんな訳でヴォーリズさんはとても身近に感じる存在であり、こんな有難い機会はまたとありません。たたき台となるデザインを幾つか書くところからスタートしました。実際のデザインは礼拝堂のチャプレン様(牧師様)と相談しながら進めて欲しいという事で、実際にお会いして色々なご要望や思いをお聞きしてデザインを進めました。最終的には、設置される礼拝堂で図面の最終確認もさせていただいて製作に入りました。

材は、色々な候補から実際の板見本をご覧の上で山桜を選ばれました。最終的に確定した図面がこれ。

このデザインには、牧師様の思いがこめられた部分が幾つもあるのですが、ひとつご紹介すると3枚の板脚はそれぞれ祈りの手がイメージされています。家具を作っているだけの私にはとても着想の及ばないところです。またハイド記念館窓枠のオマージュとして見る角度によって密かに十字架が見えるようにしています。

寄贈された先生の手によって納品日に早速花を生けられました。実は、この翌日が記念病院の創立105周年記念日という大変意味のある日なのでした。その日がこの花台のお披露目にもなるという、これまた製作者としてはこれ以上嬉しいことはないという出来事となりました。この写真手前の鎌倉彫の額に収められているのは、1956年ヴォーリズさん直筆の文字なのです。

後日談です。通常は家具類をお作りすると注文主の身近で使っていただけるのですが、今回はご寄贈という事で依頼者の手元には残りません。そのことに後で思いが至り、記念に1/4に縮小した模型をお作りして手元に置いてもらう事にしました。

この模型を作っているさ中には、牧師様から納品時に関係者全員で撮影していただいた記念写真を福音書の一部と共に額に入れて頂戴するという有難い出来事もありました。

最後に。実は2002年に亡くなった私の父が最後にお世話になったのは、移転前のこの病院でした。その時の牧師様には当時の旧礼拝堂で祈りの言葉を頂戴したのです。20年余の年月を経てこのような機会を頂戴したのは、まさに神の思し召しという気がするのです。

最近作ったもの

  • ウォルナット座卓

小さめの座卓というリクエストで作らせてもらったウォルナットの座卓。通常は、何枚かの板を貼り合わせて天板を作ることが多いが、今回は手元の幅広の一枚板を使う事にした。元の板は、こんなぱっと見、冴えなく見える板なのだが。。。

耳の部分を切り落とし、中央部に虫食いがあったのでそこを切り落として左右2枚の板に切り分けることにした。左右2枚に切ってしまえば鉋盤に通せる幅になり、経年のシミも汚れも綺麗に落ちます。水で濡らすと塗装した時のイメージが浮かびます。いい感じ。

脚を4本同じ木から切り出せば材料の勢揃い、この後先端を旋盤で丸ホゾ加工します。

脚先は、少し細くカットして天板に少し斜めに掘った丸穴に脚を差し込んで接着、塗装して完成です。元板の野性味から見違えるように上品な姿になったのでした。

直後に同じくウォルナットで作った額も納めたのですが、これらがご自宅に収まった写真を頂戴しました「すっかり我が家に馴染んでいます」との添え書き。奥にある小さなサイドテーブルも実は数年前に作らせていただいたものなのです。有難うございました。

  • 沖縄古武道の武具

以前ご依頼を受けて作らせてもらったエークと呼ばれる舟の櫂。これまで朴の木、山桜で5本ほど作ったのだが、今回は日本の木で最も堅いと言われる樫をご希望された。何軒もの材木屋さんに問い合わせたものの2mほどの長尺厚板で割れのないものが結局手に入らず、タモで了承してもらいました。

同時に注文いただいたのは、このエークと同じく沖縄古武道で使われる平棒と呼ばれる楕円断面の2m近い棒。やはり長尺の樫板が手に入らず、こちらはメープル材(カエデですね)に決定しました。良質の輸入材なので真っすぐな木目で樫の代わりになる堅さも備えているようです。

上のエークの柄も実は同じく楕円。エークは演武で使われるのみで実際にエーク同士で打ち合うことはないらしいのですが、この平棒は実際に打ち合う事もあるとのこと。1.9mほどの長さがあるので通常の木刀などよりはるかに長いのです。

楕円棒を作るには、長方形の棒に加工して後、大きな面取りを機械で行った後ひたすら手鉋を掛け続けて楕円に近づけていきます。エークのブレード部分の片面は凹面になっていて(もう片面は凸面)丸鉋で仕上げるのですが、平鉋で凸面に削る方が幾分楽と言えば言えなくもないのですが。削りくずが、こんな感じ。昔、木毛(もくめん)というこんな削りくずで梱包の詰め物がありましたね。捨てるには惜しいけど捨てた(笑)

私も学生時代に合気道をやっていて似たような棒(杖と呼ばれるそちらは丸棒でしたが)を使った経験があるので武道談義も少しばかりさせていただいたりもしました。

沖縄にお届けした後ご連絡を頂きました。「楕円の形が絶妙です。以前使っていた棒より握り心地が良く、振り込む太刀筋が良く実感できて稽古の時にテンションが上がります」。嬉し!!

  • 子供用食卓椅子

兵庫の実家のすぐ近所に住んでいた幼稚園から小中高までずっと同じだった幼馴染の女性から半世紀ぶりの突然のメールをもらいました。私が工房で家具を作っていることを友達から聞いて、ネットで検索して連絡をくれたのです。LINEを通じていろいろと昔話から近況まで報告し合った後に4人目のお孫さん用に食卓椅子の依頼をもらったのでした。私自身の孫達や別の方からの依頼で作った事のあるデザインですが、事前に食卓椅子の高さを聞いて、肘掛けがその食卓下に収まるように高さを数cm変更しました。今回の椅子は初めての山桜に決まり、製作に時間が掛かってしまいましたが、無事納品出来ました。

完成して塗装した後の写真を撮り忘れてる! という訳で塗装前です。今回の改良で足置き板を3段階の高さに取り付け可能にしてみました。

彼女の息子さんの家に直送したのですが、直後に丁寧な礼状を頂戴しました「素敵な椅子を作成頂きありがとうございます。さっそく娘は気に入って使わせて頂いております」。製作者にとって一番嬉しい瞬間ですね。

木工教室から(23年5月)

昨年暮れに前回の木工教室の作品を紹介してから半年近く経ってしまい、紹介する作品が随分たまってしまいました。5か月分を一気にご紹介。抜けてる作品もあるような気がしますが。。。

工房近くに在住の方のヒノキの作品。課題作が終わってから最初の自由製作です。彼の住む家近くの裏山に生えていたヒノキの大木が台風で倒れ、それを数年前に彼自身がチェーンソーで板にしたものです。薬箱として生まれ変わりました。取っ手の竹も近所の竹です。火であぶって綺麗に曲木(曲竹か)。

 

白木のキャビネットを作った木工女子さん。次々大作が生まれています。以下の4作品。

同じ方の巨大な墨絵額(約1m角)。ご自宅ログハウスの窓に掛けられてます。次の大きな鏡も。

最新作のパソコンデスクも完成。

こちらは、瘤付きの大きな一枚板のカバ材から作られたテーブル。厚さが5~6cmあったものを2枚に薄く切り分けて上下に配置されてます。バンドソーで切るには幅35cmぐらいにすれば厚さを半分に出来るのですが、瘤部分を残すとこの機械に掛からない幅があるのでど根性の手鋸カット。切り分けるだけでも何時間も掛かり、更に幅広で鉋盤にも掛からないので再び根性の手鉋掛け。手鋸カットした後の表面の凹凸を平らにするために先日研いだばかりの西洋鉋でとんでもない手間暇をかけて平らな板にされたのです。瘤の木目も形も美しい超オリジナルな作品です。

同じ方のヒノキの角材から根性の手ノミで彫りこんで作った小箱。合成漆と呼んだりもするカシューで黒く仕上げられました。

  

教室開設以来初となるご仏壇。コンパクトなサイズでいずれご自分が入ると言われているのですが。。。

タモ材を使われたのですが、漢字では「梻」と書くことを知りました。まさに仏壇にふさわしい木なのでした(偶然の一致でした)。

以前スピーカー台を作られたオーディオ趣味の方は、飾り音符をケヤキで作られました。固いケヤキは、糸鋸では歯(刃だけど)が立たないと思ったのですが、完璧な造形となりました。

彼は、息子さんの結婚式のために寄せ書きの丸板の陳列台も作られました。キャンプ好きなので寝袋のイメージで。

課題作後の初自由作にディスプレー額を作られました。スピーカーの穴とか電源ワイヤーの穴とディスプレーを引っ掛ける機構とかなかなかの苦心作です。濃色塗装の栗の木がおしゃれです。

賞状(だったかな?)を入れる額と穴あきチーズを模したカッティングボード。

この掘り込み、きれいに仕上げるにはメチャクチャ手間が掛かるのです。今、次作のとてつもないお洒落な宅配ボックスを作られてます。昨年から製作中断中のキャビネットも。。。

品のある4本脚の丸テーブル。こういうのはやはり女性らしさが感じられますね。

 

同じ方の楽譜棚。おっしゃれ~。

彼女のピアノ調律の仕事に使われるらしい部品箱。ピッタリと蓋が収まるのです。

 

最後は、ポプラの瘤材で作られた一輪挿し。木の皮をきれいに掃除する段階で生きた虫(鉄砲虫かな)が何匹も次々と出てきました。ポプラ瘤の一輪挿しは手づくり市でも一番の人気ですね。

5/27の教室でブログ報告のことを話していたらこれまでの作品で最も活躍している照明器具が出ずじまいだと指摘されました。すみませんm(_ _)m

と言う訳で2021年春に完成した曲木の照明器具の紹介です。直前に参加したアイロン曲木講習会で教えてもらった技でヒノキの薄板を丸く円柱状にアイロンで曲げた板を違った径で何枚も作り、すこしずつずらしながら重ねた力作です。

こんなのも作りました

だんだんものぐさになって来たのか、Blog掲載間隔も伸びてきたのですが、年が明けるまでに何とか最後のを書いておこう。ということで。。。

  • 2022年最後の家具

年の最後に納品したのは、勝手にワルツと名付けた本立て。キャスター付きの台に少し傾斜した本棚を向かい合わせに2組乗せたもの。少し傾斜しているので本を立ててもブックエンドなしで倒れません。上にはリモコンや眼鏡置き場になる天板も。

力が掛かる背板と本が乗る板の直角な角は頑丈なアリ継ぎ。

  • 座卓の大改造

滅多にない依頼ですが、既存座卓の大改造をやりました。大きすぎでまた重すぎるので6畳間で使えるように小さく薄くしてほしいとの依頼でした。元の板は90cmx150cmで天板厚も5cmというサイズの立派な一枚板の座卓です。年輪から推定すると元の木は優に直径150cm以上はありそうな巨大な木です。

 元の座卓

これをサイズを80cm x 120cm、板厚も4cm弱程度にというご要望。最初写真を見て色を付けた栃かと思ったのですが、はるかに重い木で国内の木ではなさそうです(こんなサイズの国産材は今や欅か栃ぐらい)。

苦労して工房に持参いただいた座卓を3人がかりで作業台に乗せました。自然木風に彫刻がほどこされた脚も取り替えついでに少し長くして天板高さをアップしてほしいとのこと。

天板にガッチリ接着された脚は、手鋸で切り落とします。

長さを短くカットし耳も切り落とし、新たに使用する部分は(40cmx122cm程度)手押し鉋盤と自動鉋盤で薄くして行きます。

脚は新たに手元の木で幾分似た印象のものをということでナラの木から丸脚に削り出します。特殊な脚取付け金具を埋め込みます。ネジを使って着脱可能かつとても強固に天板に吸い付いた脚に出来るのでよく使います。

オイル塗装すると入り組んだ杢が派手に浮かび上がり、気に入って頂けたようです。という事で無事完成してお渡ししました。

  • 根来塗りの十角盆

工房の近くに住む漆工芸家の藤井さんに根来塗り作品の本を夏ごろに借りました。その中の角盆の形が凄く気に入ったので合間を見て大きな八角盆と十角盆を適当な木で作ってみたのでした。八角盆はタモとベニヤの底板、十角盆は桑と欅の底板。

オイルを塗るか気が向いたら拭き漆してみようかと思っていたのですが、藤井さんが興味を示されたので両方とも持って帰ってもらいました。

しばらくしたら布着せをして漆の下地が施されつつある姿に変身。お盆全体の強度を上げるためにこういう下処理をするそうです。とても手の掛かる作業のようです。

やがて根来塗りで仕上げられたお盆に華麗に変身したのでした。出来上がったお盆を借りて10月の匠の祭では並べてみました。

そして11月の滋賀県展。滋賀県でこれまで3人しか認定されていないアートマスターの一人である藤井さんは棗ふたつ出品されたのですが(無審査)、なんとその棗が乗っていたのはこのお盆のひとつでした。木地はまあ言ってみれば縁の下の役割ですが、ウレシーの一言。

完成した十角盆、しばらく我が家に滞在中でこの正月のおせち盛り付けに活躍の予感!

それでは皆様いい年をお迎えください。本年も有難うございました。あと1時間ほどは今年です!?!

木工教室から(22年12月)

12月も残りわずか、今回が今年最後の木工教室作品紹介です。相変わらず凄い勢いで次々と新作が生まれてきています。

今回は作品タイプごとに掲載してみたいと思います。まずはスツール・椅子タイプ。最初は、8角椅子。チークとどんぐり系列の木です。脚が少し転びと言って傾いているのでほぞ部の加工は直角に切れないので手加工が必要になって来ます。。

こちらは別の方のブナの丸椅子。やはり傾いた脚なので加工には大分苦労されました。

ペーパーコードの欅スツール。親戚がお寺さんで数百年前の鐘撞堂の解体材を譲ってもらわれたそうです。一部に当時の彫りこみの一部を残してアクセントとしつつ歴史の継承をされました。。

こちらは樟の丸脚スツール。鉋を掛けるたび、工房中に樟脳の香りが漂ってました。

お孫さん用にハイチェアを檜で作られました。座板や脚乗せ板は高さを調整できるので、3歳から小学生の最後ぐらいまで使えるのではないかな。

こちらは、娘さんへのお父さんからのプレゼント。シェーカー家具と呼ばれるスタイルの机とスツールのセットです。栗の木を使い濃色塗装されましたが、とても洗練されたデザインです。

 塗装前

こちらは一見すると椅子に見えますが、実はお孫さんの洗面用の踏み台。キリンさんが見守ってくれます。

 顔のアップ

では次は、引き出しや収納箱関連です。

教室でも最近グリーンウッドワーキングをされる方が増えています。生木を手に入れて乾燥しない柔らかい間に加工できるのと、意図しない木の動きが作品に自然感を漂わせてくれます。最初は杉の木のメガネケース2種。野性的!

 オープン

工房すぐ近くのお住いの方の蓋つき小箱。本来は図面をお渡しして作ってもらう教室課題作なんですが、本人曰く「たねや風」格子模様のふたに変更されました。取っ手もオリジナルデザインに。

こちらは猫脚の引き出し。夜中に部屋の中で歩き回っているのかも!?!

猫好きの方向けのティッシュボックスふたつ。上からティッシュ箱を入れるのと下から入れるもの。お好きな方を選べます。

こちらは、キハダを使ったテレビボードです。小ぶりでもこの頑丈な脚でデカいテレビでも問題なし!

一気に6枚のカッティングボードを作られた方もいます。欅とタモ。自宅では使いきれませんね。

ご自宅にログハウスの別棟を建てた方は、窓や網戸、流しなどをご自分でお作りになってます。このシリーズはまだ続きそう。

最後は奥様のリクエストで作られた野菜かごと野菜棚。作者お気に入りの青森ヒバ製です。この写真には野菜かご1段しか乗ってませんが、実際には全部で3段あります。

写真を撮り損ねて掲載できていない作品もあるかも知れませんがご容赦ください。

太鼓台2022の②

ふたつ目に紹介する太鼓台は、ケヤキの丸太をくり抜いて作られた大きく重い長胴太鼓を乗せる台。

西洋楽器の多くは、長い歴史の中で標準化された大きさやデザインのものが主流だと思うが、和太鼓は実にいろいろなタイプのものがあり、たとえ同じ構造・デザインの太鼓台でも鼓面径が寸刻みで存在する(ようである)。太鼓の置き方も縦置き、横置き、斜め置き、時には肩から下げたりと同様にバラエティーに富んでいる(ようである)。

更に演奏者の背丈や演奏方法によって鼓面の傾きや高さの要望も変わってくる(ようである)。まあ、だからこそ滋賀の片隅で工房を営んでいる私のところに特注の太鼓台製作依頼が時々やって来る訳である。

今回の依頼主も遠く関東からでした。バリバリのプロ和太鼓奏者で経歴を拝見するといろいろな大会で優勝とか上位入賞されている。どういう訳かそんな方からの依頼を受け、誠に光栄なことです。メールを見返していたら昨年末に工房ホームページ経由で最初の問い合わせをもらってましたね。

しかしながら、さすがプロ。いろいろと注文が厳しい。縦置きと横置き(いずれも少し傾いてますが)兼用台でそれぞれの置き方をした際の鼓面位置の高さや傾斜角度の指定を満たさねばなりません。

更に最大の難関は、太鼓現物を一度も見ることなく台を作らねばならないこと。今回の太鼓は欅をくり抜いた太鼓で太鼓の皮を張る際に締めあげた状態のまま鋲で胴体に固定し、めくれ上がった皮がそのままの形で残されているのだが、その辺りの微妙な構造は、寸法なしで写真から推定せねばならない。

最終的に5台の注文を頂いたのだが、木は生きていて湿気を吸って大きく動くので規格は同じでも個体差や収縮で太鼓胴体の径など数mmの違いがあるはず。それも現物で確認できない。トホホである。

設計が固まった段階で台に使う材は、最終的に欅に決定。欅は取引している家具用材木屋さんの品揃えにはないので無理ですと伝えたのだが、「欅」一択なのでした。一枚板テーブルなどにいつか使おうと置いてあった6~7cm厚の板を数枚引っ張り出して2枚に割って使うことにした。

厚い板を2枚に割ると、反りが出たりするので一旦半割りにしてからしばらく放置して板内部の応力のバランスが釣り合った頃を見計らって再度平らに鉋掛けします。

基本、箱型の台なのだが、縦置きと横置きの両方に対応するために板の一部に太鼓のカーブに合わせた掘り込みが必要。各種治具を用意して機械で削れるところは削るのだが、いわゆる太鼓型の胴を乗せるには微妙な加工が必要なので最後は手掘りで仕上げます。

塗装色の指定も色見本を幾つも作り、何度もやり取りする中で最終的にマホガニー色(4度塗り重ねた濃色)のご指定。で、ようやく1台目が完成。太鼓現物を試作時に台に乗せて確認できない中、5台同時に製作する訳にはいかないのでまずは確認用である。

という事で配送された台に太鼓を乗せて確認してもらったのだが、残念ながら縦置き・横置き共に台の乗っている時の安定性が不十分とのご連絡をいただいたのでした。太鼓サイズの差があると怖いので若干幅に余裕を持たせたのだが、もっと余裕は小さくて大丈夫とのこと。

この結果を踏まえて、設計変更を入れて2台目を製作。今度は横置き時の太鼓を受けるカーブを10mm深くして、その分台を10mm高く、更に縦置き時の安定性が増すように側板にも太鼓受けの板を増設した。太鼓が乗る部分にはフェルトを貼っています。

実は、ちょうどこのころ市内に住まれている旧知の大橋プロが工房に来られて、ちょうど今回依頼の太鼓と同寸のものをお持ちで(以前その台を作らせて貰いました)、試し乗せするなら持ってきますよ、と有難いお申し出を頂く事が出来ました。

 横置き時

 縦置き時

出来上がった台にお借りした太鼓を乗せてみて両置き方ともOK、よさげ! という事で自信をもって2台目発送。無事合格! 縦横両方とも安定して台に乗るとの連絡をいただいた。同時に1台目も返送してもらい2台目同等サイズに改造したのでした。

という事で、残り3台も同デザインで製作開始。完成都度順次発送して随分長く掛かりましたが、無事納品完了したのでした。

いずれ依頼主のfacebookに掲載されるに違いない。5台揃って使われているシーンを是非とも見てみたいものである。

でも現物無しでの微妙な台の製作は難しいなあ、と再認識したのでした。