リビングテーブル製作開始

現役時代、職場の上司だった方からリビングに置く奥行きの浅い洒落たテーブルが欲しいということでいくつかデザインを書いてやり取りした中から注文を頂戴する運びとなった。微調整を繰り返し、最終的には、次のデザインに決定した。

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fb用B  (こういう案も登場)

材料は、ウォルナットに決定。家具用材の中でも非常に人気の高い北米産の高級材である。更に天板には、30数ミリの厚材を使うことに決定。ウォルナットは、家具になるために生まれてきたような材で、他材にはない色調や優美な木目が人気の最大の要因かと思うが、作る側にとっても実に加工性に優れた材である。硬過ぎずかといって柔らかくもない、木に粘り気があるので刃物での切り心地がいいのである。切断面の端が欠けたりすることも少なく、気持ちよく加工を進めることが出来る。更に、仕上げた木の表面はしっとりとした肌触りの上に塗装した瞬間に一気にシックでエレガントな表情に一変するのである。 日本中の森を杉とヒノキだらけに変えたのが誰の判断だったのか知らないが、当時ウォルナットにでもしていれば(日本で育つかどうか知らないが)、今頃林業の様子も全く違っていたのではなかろうか。北米では、計画的に植林をして高級材として世界に供給されているようである。

で、その北米からはるばる丸太のままで日本にやって来て日本で製材された中から(これを国内挽きと呼び、現地で製材された現地挽きより高級材となる、らしい)何枚かが縁あって滋賀県までやって来て、いまテーブルに生まれ変わろうとしている。帯鋸で製材され人工乾燥された板材は、3m近い長さでほぼ確実にどこかに節(枝のあったところですね)があり、反っていたり曲がっていたり、板の端の方にはまずヒビが入っていて、また元の木の外周部に近いところは白太(ウォルナット色でなく白っぽい部分)となるので、出来上がりの家具の場所ごとにどの部分を使うかをかなり慎重に検討することが必要となる。これを「木取り」と呼ぶのだが、何枚もある板材のどこを使って無駄少なく、適材を適所に割り振るかという、木工の中でもかなり想像力や決断を要する面白い作業である。その面白くも難しい木取りを終えて(ほぼ上手く行ったかな)若干大きめに切って鉋掛けをした材を並べたのがこの写真である。奥の方の白い板は引出しに使うシナの木。

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充分乾燥した板材でも切ったり鉋を掛けたりすると、木の内部応力バランスが変わるため若干木が動くのでこの状態で数日シーズニングしてから最終厚さに再度鉋掛けする必要がある。因みに原木丸々一本(枝まで含めてだと思う)のうち家具に使われるのは1~2割というのをどこかで読んだ覚えがある。製材された板からですら半分近くは鉋屑・おが屑や使えない端材となってしまうのである。

(しばらくこのトピックス続く)

玄関椅子

工房の近所の方からの依頼で玄関椅子を作らせてもらった。 車いすを使われていたご主人が歩行出来るまで回復され、玄関で靴を履く際に使われる椅子である。玄関スペースやドア位置などの関係から椅子の奥行きを左右で変え、杖を使いながら立ち上がる際に利用する肘掛けがほしいということでややユニークな形となった。実用的でありさえすればいいということで建築用の材を用いて些か無骨ともいえる椅子になったが、昨日お渡しできた。塗装前と塗装中はこんな感じ。こういう家具を作らせてもらえるのもしみじみ嬉しいことである。

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グラインダーとベアリング

工具やたまに使う金属材の研磨や加工にグラインダーが欲しくなり、例によってヤフオクを検索してみた。工房には幸い三相200Vの低圧電源があるので三相の日立製グラインダーを見つけて入札したところ他に誰も入札せず1980円で落札できてしまった。オークション添付写真のグラインダー銘板は、写真のように判読不能で型番はおろかサイズもワット数も読めないが、雰囲気で200mm径と判断した次第。 稼働確認済みとは書いてあるものの正常稼働とは書かれていない。

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送られて来たグラインダー、やはり200mm程度の砥石径ではあった。 サンドペーパーで銘板表面をを軽くサンディングしたら文字も何とか読めるようになった。型番、ワット数など全て判明。ちょうど欲しかった程度のもので安堵。早速、電源コードを接続しスイッチを入れると強烈な振動と作動音で慌ててしまった。ベアリングが駄目で、さらにウエイト・バランスも崩れているようである。

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きょうび、Google博士の助けを借りれば、いくらでも先人の知恵を学ぶことが可能である。というわけで、初ベアリング交換へといざなわれたのである。押さえ板が錆びて固着した砥石を苦労の末ようやく外して、次がモーター本体の開腹手術である。やはり錆び付いてドライバーも効かないボルトを外すのに更なる苦労をしつつ何とかローターを取り出すことに成功。ベアリングを外すのもこれが初体験。以前バンドソーのモータ修理用に購入したプーリープーラー(プーリー引き抜き器)は、脚が短くてベアリングまで届かない。脚の長いのを買えばいいが節約して得意の(?)木工で延長治具を自作し、無事取り外し完了。外したベアリングの型番を見て、早速ネットで注文。直径47mmの比較的大きなベアリングだったが、モーター用の高速回転に耐えるという品番を選んでも、何とひとつあたり僅か360円であった。1ミクロン以下の精度で作った鋼球8個と内輪、外輪、スペーサー、シールざっと数えても20個近い超高精度部品から出来ているのに360円!!!  ラーメン一人前で2個も買えてしまうのである。と、ベアリングにいたく感激しながら次に進む。

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新しいベアリングをシャフトに挿入するのは、パイプを使って力ずくで押し込むかヒートガンでベアリングを熱して膨張させてスムーズに入れるか、どちらかの選択らしい。当然スムーズなのがいいが、工房にはヘアドライヤーもないし・・・と思ったところで天啓を得て、ベアリングを新品のビニール袋に入れて湯沸かしポットの熱湯に5分ほど浸したのであった。何と、ホントにスムーズに入ってしまった。冷えるとびくともしない。というわけで無事難所を超えることが出来た。後はワイヤブラシをボール盤に取り付けて掃除機のノズルで受けながらひたすら錆取り。錆がとれたらスプレー塗料で全身をお化粧して、新調したネジ・ボルト類で組み立ててるだけである。最後に押さえ板に付いているバランサーを調整して(さすが産業用)めでたく修理完了となった。

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かくして、生まれ変わったグラインダー。電源を入れると、ヒューンという快い回転音とともに勢いよく振動もなく回ったのでありました。明日、amazon から届く予定のダイヤモンドドレッサーでややいびつな円形の砥石を真円に整形すれば新品同様となる見込みである。

 

最後に何というか、ポンコツ機械を再生できた達成感はあるのだが、一番に感激したのは実はベアリング。 恐らく世界中の機械に日本のベアリングが搭載されていると思うのだが、最高品質の超高精度の部品を素うどん(最近聞かなくなったが死語なのかも)の値段で供給する日本のメーカーの良心と矜持に密かに感激したのでありました。

ところで近江八幡に天辻鋼球製作所という会社があるのは知っていたのだが、その前を通るたびにパチンコの玉でも作っているのかなあ、と思っていたら何と世界一のベアリング用鋼球メーカーであることを今回の検索のどさくさで知ることとなった。誠に失礼しました。これからは、近江八幡名物としてたねやとともに語り継がねばならない。

「飛騨の家具フェスティバル」

今年も9月2日から高山市で開催された「飛騨の家具フェスティバル」の見学に行ってきた。 高山には飛騨産業や柏木工、日進木工、シラカワなど全国展開している大手家具メーカだけでなく、中小家具メーカーも数多く存在し、さらに木工学校を卒業しメーカーや工房で修行した後個人で開業している個人工房も数多く集まる稀有な街である。このフェスティバルにはその個人工房から大メーカーまでが、ひとつの会場に揃って家具の展示をしているので大変おもしろくかつ勉強になるのである。競争しているのは、事実かと思うが、同時にうまく助け合って共存しているところを目の当たりに感じる。飛騨の家具という共通ブランドを立ち上げて認定にパスした家具にそのタグをつけるなど大した仕組みである。新作家具も多く出るし、社によってはショールームを新築したりと概して各社も個人も大変元気である。見習わねばならぬ、と思うだけでも行く値打ちがあろうというものである。

家具フェス2015

玄関スツール

工房に陳列している家具を増やさねばと常々思いながらもなかなか果たせないでいたが、暑さが遠のいた今週になってようやくひとつ追加できました。 玄関スツールです。玄関に置いて靴を履いたりするときにちょっと腰かける、というのが想定シーンですが、もちろん他の用途でもOK。同じデザインでつくる久しぶりのふたつめ。関心ある方、写真を拡大すると価格も見えます。

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