工房来客の手作り額縁

先週末、工房で作業をしていたら突然の来客。名古屋から工房の近所に越して来たばかりという同年輩の男性F氏。たまたま工房の看板を見つけて来られたのであるが、ご自分で製作した木工品を漆で仕上げ場合によっては1メートル近い漆の作品を名だたる展覧会などに出展されたりしているという経歴の持ち主。巨大な木の塊からノミで一気に作品を削り出し、時に野性的に時に滑らかなカーブで仕上げた表面にご自分で漆を塗って仕上げるとのこと。 幾つか作品を見せてもらったのだが、全くの芸術品である。 私の木工は、基本直線と平面の構成が主でせいぜいここにR(=円や円弧)が加わった要素からなる木工品や家具ばかりだが、彼の作品は感性に従って刃物を自在に操った造形で事前の図面など書いたこともない、とのこと。今月17日から始まるBiwako ビエンナーレ展(近江八幡にて)にも漆の器を出展されるとのこと。全くの芸術家である。

最近製作した額縁を見てもらったところ、もっと自由に傷を付けたり元の木の個性を生かしたりしたらどう? との感想。という事で手元にあったひびの入った欅の板を渡したところ、手作りの巨大ノミ(7cm幅ほどの鉋の刃に鉄棒を溶接した手作り工具)でガンガンと表面に削りを入れて小一時間で野性的な額が出来上がった。定規すら使わず手書きの線を書き入れる程度で一気呵成に完成。裏面にガラスや絵を入れる溝だけは工房の機械で私が加工(見えない側)。 自由造形物を作るには絵心も必須とのことで、描かれたばかりという長命寺のスケッチを見せてもらったが、これも数十分で書き上げたとのことである。そんな訳で出来上がった額にたちまち(見ていなかったのだが数十秒で完成)野良猫の絵が出来上がった。この欅の額にオイルを塗装して出来上がったものを製作中の写真とともに以下に並べる。私の四角四面の額縁と全く違う、味わいに満ちた額である。因みに絵の大きさは、25cmx8cm ぐらい。

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img_6224 巨大ノミで掘り込み中、隣はたまたまやって来た四谷氏

2年前には、食事処中心だったあきんどの里のテナント、今ではすっかり様変わりして、革工房・木工房(私のところ)・今月中旬には新たにシルバーアクセサリー工房がオープン予定。いつの間にか工房の里に変身しているのである(食べ物屋さんは今では1軒のみ)。ひょっとして、あきんどの里の空き部屋に漆工房を構えられることにでもなれば誠に面白いのだが。こちらは工房に寄られる前に長命寺やその下の港で描かれたという大きなスケッチ。

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いやぁ、実に刺激的というか度肝を抜かれた1日でした。