隈研吾 講演会

神戸の竹中大工道具館に隈研吾の「木の心」講演会を聞きに行って来た。2020年の東京オリンピックのメイン会場のザハ・ハディド案に代わって採用された設計者である。今回の競技場も木材を多用した巨大建築と聞いているが、従来から一貫した姿勢であることを初めて知った。家具と木材建築は、材料や加工方法を含めてかなり共通した部分が多いのだが、最近は木材を生かした建築が一段と見直されて来た感がある。彼の一連の建築を見て、次々と木の使い方のチャレンジが続いていることを知り、オリジナリティ追求の姿勢の大切さが非常に印象に残った。家具作りにもそういうチャレンジを入れ込まねばと感じさせられたのであった。

講演後に道具館の見学も閉館まで小一時間したのだが、まだまだ見足りない。

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食卓テーブル製作中 その2

引き続き、食卓テーブルの脚部材を製作中。 出来上がった吸い付き蟻桟のある天板受けにほぞ穴を掘り、同じような寸法の脚材(床に乗る部分)にもほぼ同様の加工をした後、左右の脚板にはこのほぞ穴にぴったり合うほぞを切る。クランプで三つの部材を仮組してみるが、このあたりは毎回やっている作業なのでスムーズに進行、ドンピシャで隙間なく組みあがることを確認。

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次に見た目を若干よくするために天板受けや端の部分を斜めに切り落としたり、床に当たる部材の中央部分を3mmほどすき取り床から浮くように加工。さらに角部分は使用中に足などが当たっても痛くないよう丸面取り。

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さらに左右の脚板間に長い棒材を渡して両方を接続する貫とするのだが、まずはその通しほぞを受けるほぞ穴を脚板中間あたりにあけた。部材が大きすぎて角のみ盤では加工できないので手のみで地道に作業。出来あがった左右の脚材をテーブル裏面に軽く差し込んでみたのがこれ。奥まで入れるの最終組み立てまでおあずけである。

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脚板の横に置いている前後に長い棒の両端に通しほぞを次回加工して左右の脚板に通せば(楔で脚に固定する予定)、ほぼ下半身が完成の見込み。天板と脚や脚間の貫はどれも接着せず木の動きを吸収するとともに、将来の輸送時には天板と脚部分が分解できるわけである。この状態にまで組みあがると長さ180cmのテーブルはもはや一人作業ではひっくり返すことも全くできない重さとなる。助っ人を呼ばねば。

 

食卓テーブル製作中

天板だけ作って半年近く放置していたダイニングテーブルの製作を再開している。まずは、最難関の吸い付き蟻桟に挑戦。吸い付き蟻桟とは天板下面に下の広がった溝を掘り、更にその溝が先にいくほど僅かに狭まっていくのであるが、この溝にピッタリはまる桟をやはり同じだけ先すぼみにして、力ずくでこの溝に差し込むことで天板と桟がピッタリと吸い付いて、天板の反りを防ぐと同時に経時変化や湿度変化で天板の幅が動いた時にその動きを吸収してしまうという昔からの高度な加工法である。こんな加工を昔の職人は、ノミやノコでやっていた筈だが、そんな腕があるはずもない今日では、ルーターと呼ぶ機械でそれなりに作れてしまうわけである。とはいっても、テーブル幅85cmの長さに対してわずか2mm程度の先すぼみ加工を溝側と桟側両方に施すのはそれなりの工夫と治具が必要にはなる。本をじっくり読み込んだり、ネットで先輩職人の技解説を集めたりした上でようやく加工開始。数日掛かりでようやく加工出来た。パイプクランプでギリギリと押し込んだ時に丁度天板の中央に桟が位置する。見事に天板に吸い付いて、幅方向に中央で1mmほど反っていた天板が真っ平らに戻った。 時間は掛かったが、満足できる出来ではある。

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向こう側の桟は所定の位置に収まった。手前は、まだここまでしか入らないのであと0.2mm ほど追加で桟を削らねばならない。

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日本語で蟻桟、この形、英語では鳩の尻尾のダブテイル(dove tail) と呼ばれる。日本語でなぜアリなのか?  アリの口先の形とか書いている本もあったが、ホンマかいな?

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桟となる手前の棒にテーパーが付いた治具を固定してルーターテーブルで滑らせるとテーブル下から飛び出ているdove tail ビットで僅かにテーパーが付いた蟻加工が出来るという次第。一昨年、高山の訓練校での実習でやって以来の蟻桟加工である。失敗したら分厚いケヤキの予備の板はないので慎重に慎重に。何とか無事に完成。

陳列用ペンケース

工房で陳列販売している手作りボールペンをカフェでも売ってあげるよ、といってもらってウンヵ月、ようやく陳列用のペンケースを新たに作った上でペンと一緒に渡すことが出来た。 ペンケースは、ホコリ除けというか多少なりとも見栄えが良くなることを期待してのこと。残り物の栗板材を矧いで少し幅広にしたうえで、高さ10cm程度の箱に組んだ後に上部(フタ部分)と下部に切り分けると、バッチリ上下でサイズの合ったケースの出来上がり。上部には塗装後ガラスを入れ、下部にはペンを並べるための窪みを並べた板を大きなエグレの入った部分を残して作ってみた。この板は、オノオレカンバという国産樹の中で最も重いもののひとつといわれる珍しい木。固い木で斧も折れるという事で斧折樺の字が当てられる。先月木材市で初入手したのだが、硬くて稠密な材で鉋を掛けた後サンディングすると磨いた金属のようにスベスベした触感。櫛に適した材というのに頷ける。今度は、ボールペンのボディーにも使ってみたい。

というわけで、近江八幡のコミュニティーカフェ・スマイルさんに今月から置いていただいたので、お近くの方はコーヒーがてらどうぞ、と一口営業。

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ケースいっぱいにペンを並べた写真を撮り忘れたもので。。。

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栗は独特の味があっていいなあ。オノオレカンバの台を置く前

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えぐれた部分は、樹皮が溝状にえぐれ込んでいた部分。凹んでいるのでペンを掴むのにちょうどいい按配。

三木金物まつりへ

大工道具生産高日本一といわれている兵庫県三木市、毎年このシーズンになると県庁駐車場一帯で金物祭りという巨大イベントが開催される。ということは前から知っていたのだが、今年初めて出掛けて来た。参加者が十数万人規模の同市最大のイベントに成長したとのことで、会場近辺は全て駐車禁止で市内各所の巨大駐車場から無料バスでピストン輸送してくれる。掘り出し物満載(?)のテント市ありやら屋内での金物メーカの出店、さらに研ぎ教室だの古式鍛錬実演と盛りだくさん。

前から妻に完成をせかされている欅のダイニングテーブルの蟻桟(アリザン)加工に必要であろう鏝(コテ)のみの入手が一応大義名分である。鑿・鉋・小刀などの優れた手道具のメーカーは小さな家内工業的な所が多くを占めていると思うのだが、大手のホームセンターでは殆ど扱われていないので(需要が限られているから仕方ないけど)ここに来るとズラッと一堂に会していてある意味欲しいものだらけ。そこを耐え忍んで、鏝のみと丸のみと小刀を手に入れてまあよしという結果ではあった。

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3千個以上の包丁などの金物で作った鷲、1.5トンだそうな。

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