テンセグリティー・テーブル製作

昨年9月の工房ブログで模型のテンセグリティー・テーブルを作ったという紹介をさせてもらった。

 その時の模型

その際にこの模型を実物大で欲しい酔狂な方からのご連絡をお待ちしています、と本気で期待する訳でもなく投稿の最後に書いていたところ、岐阜県の会社から本当に注文が来るという思いがけない出来事が起きた。

模型では、簡単に作れるように直角の加工だけで作ったのだが、もう少し浮揚感の強いデザインを所望されたので、最終的にこんなデザインに決定した。40cm足らずの正方形の天板が浮いている小ぶりのテーブルである。

通常の家具作りでは木と木を直角に組むことが多いのだが、今回は斜め配置する部材を斜めに継ぐ必要があり、滅多に出番のないデジタル角度計付の定規で墨付けした。これらをデジタル角度計を活用して設定した丸ノコ盤で斜めに部材を切ったり、斜めにほぞをカットしたり、何カ所かは手鋸で斜め切りしたりと結構大変だったものの何とか部品加工を終了。

「へ」の字に曲がっている部品がここでは最も重要な箇所で、大きな力がほぞ組を破断する方向に掛からざるを得ないので大きめのほぞを組んで接着後にさらにほぞ部を横断して貫通するダボを入れてさらに補強した。

 ほぞ補強のダボ

模型のように釣り糸で吊り上げる訳にはいかないので、今回は鉄製の細いワイヤーを何十本か撚って作られているワイヤーロープで吊ることにした。その金具も色々ある中から悩んで選定し取り付けた。

今回は、木工だけでなくワイヤーロープの両端に金具を通してから丸く折り返してアルミパーツをカシメて固定するという金属加工で四角(すみ)と中央部をつながねばならない。木を切るのと勝手が違って高い精度で作るのにも難儀した。ワイヤーをつないで宙に浮かせてから脚裏にあるナットでワイヤーの張力を調整しつつ、天板が水平になるように微調整して。。。ついに完成!

静止画では、浮揚感が伝わらないので動画も撮りました。

完成したテーブルを引き取りに来られるまで1週間ほど工房に置いていたのだが、この間やって来られた皆さんほぼ例外なく不思議な面持ちで見たり触れたりされてました。まじまじと眺めてどうなってるの? 一体何に使うの? と質問連発。

昨日、岐阜から引き取りに来ていただいたのだが、お話を伺ったところ、お酒を飲む場に置いて話題作りにしたいとのことで、テンセグリティーテーブルで検索して当工房のホームページに来ていただいたらしい。酔狂な家具を求める方だけあって、デカい豪華海外スポーツカーに積んで持ち帰られたのでありました。

今回のこのテーブル、これまで珍注文ランキングトップだった「兜の角」を抜き去り、トップにおさまりました(工房主の独断ランキングですが)。

少ないお酒で酔うことが出来るテンセグリティーテーブル、あなたも如何ですか? もっと違うデザインでももちろんOK!

工房小ネタ③:マジックテープ

工房小ネタその③は、マジックテープ。

電線などを束ねるときにクルクルと巻き付けて固定し、何度使ってもなかなかへたれないというあれである。正式名称がどれなのかよくわからないが、他にも面ファスナーだとか、結束バンドとか色々な名前があるようだ。

工房には、いろいろな電動工具があるのでそれらを片付ける際にこのマジックテープを使って電線を束ねるようにしている。

テキトーにホームセンターなどで買ったり通販で買ってみたりするのだが最近性能の差が気になって来た。何年も使っていると固着力が落ちてきたように感じるテープもあるし、新しいにも関わらずイマイチだったり、逆に最近買った中に素晴らしいと感じるものもある。

感覚的には引っ掛かる側と引っ掛ける側で(早い話、テープの裏表で)構造が違うのは分かるのだが、目を近づけて見てみても老眼には何も見えない。

という訳で小型顕微鏡の出番! 何年も前に神戸の竹中大工道具館で鉋の研ぎ方教室というのに参加したことがあってそこで初めてその威力を教えてもらったのである。私が行った職業訓練校の研ぎの時間は、ただ見本の研ぎと各自が研いでみるだけの授業でちっとも科学的でなかったので自己流脱出を夢見て参加したのである。結局は、その後も自己流が続いてる訳だが顕微鏡で見る習慣だけは身に付いたので十分に参加した値打ちがあった。

こんなに小さくて2千円ちょっとだけど威力抜群。鉋の途中が引っ掛かるなという時これで覗けば、はっきりと刃の欠けが見えるのである。で、こいつの出番。

まず最初に一番古い近所のホームセンターで買ったマジックテープを見てみた。こんな微小キノコがテープ片側の一面に生えていた。このテープは大分ヘタってしばりつける力が弱くなってるものである。

テープの反対側は、こんな感じ。写りがイマイチですみません。何しろ小さな顕微鏡の接岸レンズにiPhoneのカメラレンズを近づけてかなり拡大して写さないといけないので手持ちではこれが限界なのだ。細い繊維がもじゃもじゃとループ状にテープ表面を覆っていた。まあ、これは想像通り。

次に泣く子も黙るアメリカの名ブランド3M製のもの。ワンタッチベルトという名前が付いてた。去年ぐらいに高性能を期待して買ったもの。

ところがこれがサッパリ冴えない。新品なのにくっつき力が弱くて頼りない。はがすときのバリバリという音もしない(ように感じるぐらいナヨナヨと剥がれる。こいつも見てみた。

なんだ、このクラゲのようなきのこは? もっと気合を入れろ、と言いたくなるではないか!  キノコのカサの下側も丸みを帯びてるのでループに引っ掛かる力が弱い、と見た。反対側は、ほぼ上のと同じループ繊維の森だったので写真省略。

で、最後は最近お気に入りのやつを見てみた。このテープは(まあ新品なのでもあるが)しっかりくっついてはがすときも気持ちよくバリバリっと音を立てる(ような気がする)。この気持ちいいという点が大事。

なんとキノコ型ではない!2本足のタコが逆立ちしている(ような気がする)ではないか。2本の反り返った脚が反対側のループをしっかり捕まえて、あのバリバリ感を生むに違いない!

そんな訳で小ネタ③のまとめなんですが、じつはこの3番目のマジックテープも中国通販で買ったもの。手元のたった3種類のを見ただけで結論付けてはいけないのだが、なんだかオリジナリティーを感じるではないか。中国製造業はもはや模倣からオリジナル品に着々と進歩しつつある、というのが工房小ネタ①~③を通じての吾輩の考察となった(書き始めはそんなつもり全くなかったのに気が付いたらそうなってた)。さて、間違ってるか、正しいのか? 答えは、遠からず身の回りの品々でよりはっきりするに違いない。がんばれ、ニッポン! てか?

 

工房小ネタ②:工房のリモコン化

小ネタその②は、工房のリモコン化。

まずは、機械室照明の無線リモコン化。工房スペースは、全く同じサイズの隣り合う倉庫をふたつ借りて壁をくり抜いて(むろん家主の許可を得て)通路を設けてますが、照明スイッチはそこから少し離れたシャッター脇なのでついつい消すのが億劫で点きっぱなしの事が多かったのです。今年になって無線式リモコンのいいのを見つけました。

壁の電源スイッチから壁の中に追加で電線を這わせて床上に新たに設けた穴をあけ、近くのコンセントから延長コードを引っ張って来てACアダプターで12Vを作り、壁の中に入れたリモコン本体に供給し、スイッチからの電線を本体基板のリレーにつなげば出来上がり。

リモコンはこんなのを通路脇にテープで貼り付け。

追加のリモコンを組み立て室にも置いてるので消し忘れに気付いた時には、さっと消せます。壁があるので赤外線リモコンではまね出来ない技。お陰で機械室100Vの電気代が半減しました。

——————————————————————————-

これに味を占めて次に集塵機のリモコンも赤外線式から無線式へ切り換えました。工房の集塵機はパイプを通じて色々な機械で発生する木屑を集塵するのですが、複数の機械と繋がっていて、これらの機械を使う際に集塵機を予めスタートする必要があります。その都度、集塵機のところに行ってスイッチを入れるのがメンドーな訳です。ということで、数年前に取り付けたのは、赤外線式のリモコン。今は外しましたが、こんなのでした(日本メーカー製)。

左の本体の背面にあるプラグをコンセントにさし込めば、右のリモコンのスイッチで本体表に付いてる100Vのコンセント電源を入れたり切ったりできます。ここからの100Vの電線を集塵機の3相200Vをオンオフする電磁接触器という大型リレーの操作コイルにつなげば、小さなリモコンで数キロワットの大型モーターも入れたり切ったりできます(3/11修正:間違って電磁開閉器と書いていました、修正します。電磁接触器+サーマルリレー=電磁開閉器の関係です)。

まあ、それなりに便利で5~6年使ってきましたが、木工教室でいろんな方が操作する際にリモコンの向きが悪かったり、発光ダイオードの付いてる頭の部分を手で覆ったりすると操作出来ないという弱点が。で、こちらも照明用と同じく無線式に変更しました。

上の写真の黒いケースに入ってるのが交換した無線式リモコン本体の基板。ここに100Vをつなげばリモコン操作でリレーが働き、100Vを入れたり切ったりできます。

手に持ってるのが集塵機用のリモコン。どっちを向いていようと、手のひらですっぽり覆って操作しようとも安定してオンオフ出来るようになりました。工房のあちこちに3個のリモコンを置いたので実に便利。おすすめです。

因みにこれらの無線式リモコンは学習機能があり、更にリモコンを一個一個個別に識別出来るので複数リモコンの使い分けも可能。実によく出来てる。これも昨日のバンドソー・ブレードと同じく中国製。検索しても日本製やアメリカ製は出てこないので多分中国オリジナル製品。ワンコイン前後(本体+リモコン、更に送料込み)とこれまた驚きの価格。買い占めたいぐらいです(しないけど)。

工房小ネタ:バンドソー刃のたたみ

工房がらみの小ネタを幾つか披露したい。

最初は、バンドソー(帯鋸ですね)のブレード(刃です)について最近ビックリしたこと。工房のバンドソーのブレードは、長さが1周で125インチ(=3175mm)もあるので保管や輸送時は3つのループを作るように折りたたみます(折りたたむには少しコツが要りますが、ネットで動画がすぐに見つかります)。ブレードをネットで注文すると大体40cm角ぐらいの薄い箱に入って送られて来て箱を開けると35cmぐらいの直径の3重に折りたたんだブレードが入ってる訳です。

私のバンドソーは、Lagunaという会社のもので(製造はアジア製に間違いないけど)これまでその会社の米国通販で数年に1度ぐらいまとめて買ってました。ところが、先月在庫が無くなりかけて来たのでその会社のホームページを見たら直販ページがなくなってる! 別の米国の木工用品の会社にはありますが送料含めれば倍以上の値段になるので断念して日本で探して先日無事に調達出来ました。やはり3重に束ねた箱で届きました。

ついでにいろいろ探したところ中国の通販でも売っていることが分かったので(当然かなり安い)初めて注文したところしばらくして届いた箱が20cm角ぐらいしかありません。ありゃ、これは寸法を間違えて送って来たんだとがっくりして開梱したら何と5重に折りたたんだブレードが入ってました。ええっ~、5重に折りたためるんだとビックリして目からウロコが数枚剥がれ落ちました。

日本で調達したのと同じ幅広(19mm)のブレードも注文していたのが本日届きました。今度は箱が15cm角ぐらいです。今度こそダメだとがっくりして箱を開けたら何と7重に折りたたんだブレードが入ってました。目からウロコが今度は10枚ぐらい剥がれ落ちました。

あまりにも驚いたので記念撮影。

全体をぐるりと取り巻いているのが1周3175mmの折りたたんでいないブレード。左上がこれまで買っていたブレードの箱、デカいですがこれが刃の幅ごとに違う箱に入ってアメリカから届いてました。その下が3重に折りたたんだブレード。真ん中は同じサイズだけど(幅はちがいますが)5重に折りたたんでコンパクトになったもの。右端のが今回ウロコを剥がしてくれた7重巻きのもの。箱の大きさが半分以下です。

折りたたんだブレードは、ハガネ製で凄く弾性があるので折りたたんだ状態で結束バンドで勝手にほどけないように固定されてます。7重に折りたたんだのはいかにも窮屈そうなので3重にして保管しておこうと結束バンドを切りました。2本目の結束バンドを切ったその瞬間にバネが伸びるかのように(まあバネみたいなものですが)7重の折りたたみがとけて1重のブレードになりました。中国から来るブレードは、刃の側にブラスチックのカバーで囲ってあるので怪我せずに済みました。

因みに5重に折りたたむのは、3重に折りたたむのを2回やればいいに違いないとやってみたら出来ましたね。7重は怪我しそうなのでやりません。

で、今日の教訓。この7重に折りたたんだ工夫と刃をむき出しにせずカバーをしてある点など、中国の技術や工夫凄いな、と感心した次第。昔は安かろう悪かろうとか、コピー商品だとか言われていたけど(その要素はまだ否定出来ないけど)気が付いたら先頭走ってる感がする。肝心の切れ味は、まだ試してないので何とも言えないけど、1本のブレードに刃のピッチを2種類混在させていたりするので(ピッチが荒いと切れ味がよくて、細かいと切断面が滑らかと言われてます)、きっと切れるに違いない、という予感。値段も随分安いので競争相手は大変だなあ。

私も現役時代電子部品業界で、韓国・台湾・そして中国と競争に明け暮れて散々苦労したことを思い出しました、とさ。