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きょうの太鼓台

今日完成したばかりの太鼓台。先に書いたお題①~③とは別の和太鼓チームからのご依頼。とはいってもやはりプロ和太鼓奏者Oさんが関わられている安土町のチームである。

チームで使われている大太鼓とその太鼓台のセットがあるのだが、別の少し小さめの太鼓をその台に乗せると打面が低くなりすぎるので、ちょうどいい高さになるよう作ってほしいとの依頼である。

他の楽器類と比べると太鼓の種類は、小さなものから大きなものまで、また平たいものから深いものまで、実に多種多彩だが、それに呼応して太鼓台も実に多岐にわたる(と分かって来た)。

という事で、完成した太鼓台がこちら。栗の荒々しい木目が濃いめ色のオイルで一段と映えていると思う。ひとつの台と脱着可能なもう一枚の支え板使って、3通りの乗せ方が出来るのである。

斜め下に向かって叩くとき

下に向けて叩くとき

水平に叩くとき(時には、両側から)

この初号機台を実際に使ってもらった上で、更に複数台の製作となる予定である。

因みにこれらは、製作中の様子。

カーブ部分は、左に置かれている型板を用いて左右対称にルーターを用いて加工。

太鼓を乗せる部分は太鼓胴のRに合わせて手道具(南京鉋と四方反り鉋)で掘り込んだ。

太鼓台のお題③

太鼓台のお題①②に続いて今回は③。引き続き和太鼓プロ演奏者Oさんのご依頼である。こんな感じで大太鼓を乗せてステージ上を移動するキャスター付きの三角形の台なのだが(写真の一番下の台部分)、長年の使用で随分傷んできたので一新したいとの有り難いご注文。

例によって、曲線で構成された太鼓を乗せるには普通の図面では描き切れないのでSketchup 3Dソフトの出番となる(単純なものでも使うのですが、何しろすぐに描けて間違いが出にくい)。

こんな感じで図面を書いて作った試作品がこれ。直角ばかりの木工と違って、三角形になっただけでややこしい加工が必要になって来る。

早速太鼓の現物を乗せて見て、問題ないことは確認できたのだが、三角の先が尖り過ぎているのでもう少し平らにしてほしいとのこと。運搬時など、尖った方を下にして積み込んだり、一時的に置いたりする必要があり、早速改造が必要となった。う~ん、配慮が足りぬ。

というような経過を経て、完成したのが(塗装前)これ。このようにふた通りの乗せ方があるのである。

OKをもらってから、最後に塗装して完成したのがこれ。

トータルで1ダース作らないといけないのだが、まだ製作途上。片付ける時にピッタリ重ねられるようにするつもりなのだが、その仕掛けがまだ未確定だったりもする。そういう意味では、まだ3合目あたりかも。

 

 

ステンドグラス窓枠

いつもユニークな木工品の注文をしてくれる市内のJazz Café Yugeyaマスターの川岸さんから次の指令が飛んできた。京都の骨董屋で手に入れた英国製のステンドグラスを建物の窓として取り付けたいのでその窓枠を、とのこと。建築屋さんとの打ち合わせも行った上で何とか納期に間に合わせて納品できた。

道路から見上げるような高い場所に取り付けられるとのことで存在感のある幅広で厚みのある枠とした。最初は、額縁のように四隅を45度の留でカットして貼り合わせるデザインにしようかと思ったが、設置後は太陽光が当たり続け、時には雨も降りかかりそうなので建具風にしっかりほぞを入れて接着剤に頼らなくても(もちろん使うけど)頑丈さを維持できるように変更。

この後、四隅の内側を45度にカットしたあと大きく面取りすれば額部分はほぼ完成。建物の間柱に取り付けられるように大きな枠を後ろ側に取り付けた。

100年ほど経過しているというステンドグラスの金属接合部は結構痛んでいて、持ち上げただけでも大きくたわみ、枠で押さえつけるだけではバラバラになりかねない。というか実際にあちこちの接合部の半田が取れかけていた。マスターの昔とった杵柄というやつで(ステンドグラスとちょっと分野は違うが半田付け技能士らしい)、デカい半田ごてを手に工房にやって来て接合部の修復をしてくれた。念のため、更にガラスを前面に入れてステンドグラスを保護することに変更。

てなわけで、無事完成。ステンドグラスを置いてみると、う~んスバラシ。今回、額部分はち密な木目の松を使ったのだが、建物に取り付ける前に白ペンキを塗るらしいので、ちょっと悲し。

完成して披露されるのは、いつかな? ちょっと遅れ気味らしい。

 

 

アンプ・クレードル

去年の春ごろに野洲市でギターアンプの製作や修理をされているGamps 徳田さんの依頼でアンプ・クレードルの製作をしたのですが(Gamps のクレードルに関するブログ記事はここ)、そのブログを見た大阪の印刷屋さんから同じクレードルの注文をいただきました。これを何とか年内に完成し先日納品しました。

久しぶりに作ることになり、木工部分の図面は無論残っているのですが、細かな金具の選定など、どうしようかと考えているころにタイミングよく工房に徳田さんがやってきました。スピーカボックスを工房の一日教室で自作したい、ということでそのついでに以前納品したクレードルを持ってきてくれたのです。

前回、山桜を使いましたが、今回は白い木肌が硬くてきれいなブナ材を使います。という事で製作開始。

荒材を切って鉋掛けをして所定の長さに切ったり、溝を掘ったり。思いのほか細かなパーツがあるので、家具とは少し違った要素もあります。で、出来上がった塗装前のクレードルとお借りしたものを並べてみました。

桜材は、年数と共に木の色が濃くなって行くので製作直後と比べると大分貫禄が出てきています。まだ塗装前の新しい方はなんだか嫁入り前の白無垢の花嫁さんのように見えなくもない(私だけ?)。

塗装後、うっかり写真を撮り忘れてしまったので納品後に依頼主に写真を撮って送ってもらいました(Oさん、お手数かけて申し訳ありません)。畳の上に溶け込むように落ち着いた雰囲気の、オイル塗装後の完成姿です。これからこの台の上でどんなアンプが置かれるのか想像すると嬉しくなりますね。

この印刷屋さんでは、昔の活版印刷機の修理・復元もされているそうで、操作レバーに使う取っ手の注文もいただきました。完成後、こんな感じで重厚な鉄製のレバーに組み込まれて使われるようです。硬くて頑丈なオーク製なのでこの先何十年ももつことでしょう。

(アンプ・クレイドル)

太鼓台のお題②

この太鼓台で太鼓の位置を10cm高い位置で打てるようにして欲しい、というのがプロ和太鼓奏者・大橋さんから与えられたお題②である。ずっと高くなりっ放しはダメで、必要に応じて元の高さと10cm高くするのを両立させるべし、という条件もある。

脚を延長するとか、太鼓を乗せる板の高さを増やす、とか考えてみたが、脚が上すぼみに傾いていることや脚の延長の付け外しというのは、難しそうなので素直に10cm高く出来るようなキャスター付きの台を作ることに決定した。

最初は、四角い固定枠で出来た台を考えたのだが、この櫓太鼓台自体は、クサビを抜くと全部材がバラバラに分解出来てコンパクトに収納できる構造になっている。台だけがかさばることはいかにもマズい。という事で同様にクサビ式の分解できる台を作ることで最終決定となった。ということで、製作後の塗装前の台がこれである。こんな感じで4つの部材とクサビが4本。

これを太鼓台に近い色に塗装して完成した後、上に櫓太鼓を台ごと乗せた姿がこれである。大橋さんに写真をいただいた。

彼のfacebook に演奏中の写真があったのでコピーさせてもらったのが下の写真。カッコいいなあ。無論、台がじゃなくて演奏の雄姿ですよ。今回の台の塗装色が、櫓台とちょっと合ってないのに気付いて悲しい。

更に次の太鼓台のお題が、待っている。目下思案中。来年2月には演奏会があるとのこと、それまでに納品して、聴きに行かねば。

ボールペン量産中

前にも書いたボールペンの大量受注。毎月50本づつ分納させてもらっているのだが、11月分の納品を今週ようやく終え、梱包前に全部を並べて写真を撮ってみた。

乾燥した染井吉野の板を棒状の角材に加工した後、中心部にドリルで穴をあけて、7mm径の真鍮チューブをその穴に通して接着し、両端面を直角にトリミングしてようやく旋盤に掛けることが出来るのである。

木工で全く同じものをこのように継続してたくさん作るのは、初経験である。繰り返して作っているので目を閉じてでも作れるようになるだろうと以前書いたので試しにやってみたが、粗削りはともかく、当然ながら仕上げられるわけはなかった。

ようやく今月で半分以上の納品を終えたことになる。来春、桜の季節に落成記念の式典でこのペンもお披露目と聞いている。一気に当工房の木製品ユーザーが300人以上増えるのかと思うと気も引き締まる、というものである。

 

漆塗り初挑戦

漆塗りに初チャレンジしてみた。市内の漆工芸家・藤井氏の数々の素晴らしい漆の器などを見せてもらっているうちにやってみたくなり、生漆を少し分けてもらったのである。木工関連書籍を次々と出版されている西川栄明氏が共同執筆された「漆塗りの技法書」も初版発行の2年前から手元に置いてある。機は熟した(?)のである。

5年前、飛騨高山の職業訓練校で木工家具の授業を受けていた時に一度だけ漆塗りの授業があり、手彫りの木の器やヒノキのおはしに拭き漆をひと塗りだけやったことがあるのだが、それ以来である。漆塗りの刷毛やらヘラだの拭きに使う和紙とか菜種油に陶器の皿(漆のパレットとでもいえばいいのかな)などをテキトーに買い集めて遂に開始となった。

ということでいろいろ作って塗ってみた。これは、一輪挿し。ブラックチェリーの端材を木工旋盤に掛けて、思いつくまま何個か一輪挿しらしきものを削り出したうえで生漆を3~4回塗って拭き漆塗装をしてみた。一回塗るごとに湿度を高く保持できるようプラケースに一昼夜置いて乾燥させてから塗り重ねた。右奥のドライフラワーを挿しているのは、比較用に漆でなくウレタン系の透明塗装をしたもの。

これは、太めのヒノキ棒を刃物でテキトーに割った上で上下にカットして中を掘り箱状に加工したものに漆を掛けてみたもの。ヒノキ棒を何個か割ってみて一番面白い割れ方をしたのがこれ。

蓋を外すとこうなっている。

ボールペンでも初めて漆塗りバージョンを作ってみた。いつも作っているペンは透明なワックス塗装で木目が若干の濡れ色になる程度でほぼ元の木の質感が残るのだが、拭き漆で塗り重ねると濃い漆色に染まるので、材料の木目は残るが、元の木材の色彩としては差が小さくなってはしまう。取りあえず、クラシック感の強い桑を選んで数本ペン用に削り出し表面を滑らかに仕上げた上で拭き漆をしてみた。完成後にゴールド、クローム、ガンメタル色のペンキットで組んでみたのがこれである。

一番上は、通常の透明ワックス仕上げのもの。上から2本目のは、生地固めとして砥の粉で桑の導管を埋めてみたのだが、桑のような道管の多い木材だと色が濃くなりすぎて木目が見えづらくなる。人により好き嫌いがあるかも知れないが、生地固めなしで多少明るい目の塗装の方が好きではある。

これらの漆を塗った木工小物、今週金曜からスタートする匠の祭で披露して、やって来る方の感想を聞いてみるのも楽しみである。13日のイイネタマルシェにも持って行ったのだが、ずっと「ボールペンを作ろう」コーナーに掛かり切りでそういう会話をする時間が全く持てなかったのである。

家具に拭き漆を施すのも興味はあるが、面積・体積の大きな家具は、漆を塗ると些か重くて暗い印象になるので、明るい洋室にはいまひとつフィットしないような気もする。とはいえ、今後もいろいろチャレンジしてみたい。実は、黒漆だの銀箔だの箔押し用の漆だのついつい合わせて入手してしまったので、当分遊べそう。漆かぶれだけは御免こうむりたいのだが、さてどうなりますか。

 

 

 

神戸で「我谷盆を作ろう」

竹中大工道具館でひらかれた「我谷盆を作ろう」ワークショップ(10月4日開催)に参加して来た。我谷盆(=わがたぼん)というのは未乾燥の栗の木の一枚板を掘り込んだ素朴で味のあるお盆で、今はダムの水底となってしまった石川県の我谷(こちらはわがたに)でかつて盛んに作られていたらしい。

これを木工家の森口信一さんが長年かけて復興し、その作り方を広く普及しようと努力されている。そのご本人を講師として招いて同館でひらかれたイベントである。参加総勢12名、幸い抽選に当たってその一人として参加することが出来た。

SNSでの拡散や宣伝、大いに結構という事だったので、写真を貼っておきます。こうやってステップごとに作り方の実演があり、それを見習って受講生がそれぞれ作業台で進めていくわけです。

受講生の約半数は(私も含めてだけど)年配男性ではあるのだが、私と同じテーブルの6名のうち女性3名、若い男性2名であった。最近木工界にも木工女子勢力が着実に増えている、どこぞの内閣とは大違いではある。

このブログを読んでくれる奇特な方の中に自分でもやってみたいと興味を持たれる方は僅少だとは思うが、そういう方のためもう少し詳しく製作過程を記録されているホームページを見つけたのでそのリンクをここに貼っておきます。やはり森口さんが講師で2017年に開催されたワークショップのようなので殆ど今回と重なるかと思います。因みに岐阜の森林文化アカデミーで昨年開催されたときの記録のようです。

という訳でワークショップの内容はそちらを参照してもらうことにして、私の作ったお盆がこちら。森口さん特製の栗のアク汁で調合された塗装液を塗って仕上げている。

  製作途中

 完成後

長辺の片側に栗材をクサビで割った際の割れ面が残っていて、このカーブが面白くそのまま残したので、そこだけは平のみではうまく対応できず少し苦労。あと四隅は、掘り込んでいく際に最初に丸のみで木目を断ち切る必要があるのだが、そこを強く打ちすぎて丸い傷跡が四隅とも残ってしまった、残念。

まあ一回目のチャレンジとしては良しとしたい。栗の木は、工房に沢山転がっているので、材料としては幾らでもあるのだが、家具用の材は乾燥済みで生木と違ってすっかり硬くなっているので掘るのは困難と聞いた。でもまあ、今度再チャレンジしてみたい。

私の作る木工品や家具は、どれもこれも直線と平面がメインで多少は円弧の部分もあるのだが、基本数式で表現できるようなものばかりである。何しろ根が理系出身者なものでついそうなってしまう。数年前から付き合いのある近所に住む漆工芸家の藤井氏には、そんなまっすぐなものばかり作って何が面白いの、としょっちゅう皮肉を言われている。彼の作品には、一切直線も平面も登場しないのである。芸術品と実用品は違う、とか言って反論したりもするのだが、最近少しづつこういう自然な線のものに惹かれ始めているのを白状しておきたい。

因みに新神戸駅から徒歩数分のところにあるこの竹中大工道具館、私のお気に入りの博物館で、これまでにも講演会や鉋の研ぎ教室など何度も行っている。木工や刃物好きにおすすめの場所である。以前のブログをさがせば、その際のが幾つかあるはず。

手づくりボールペン

工房開設以来最大規模の受注となったのが 、ソメイヨシノのボールペンづくり。総数300本以上という工房にとってはとんでもない数である。いくら何でもひと月やそこらでは作り切れないので、話を聞いたとき一瞬悩んだのだが納期を半年ほど頂けると聞き、有難くお受けした次第である。

事業拡張で事業所の桜を切らねばならなくなり、それを使って何か記念品を関係者に配りたいという事から話がスタートしたと聞いている。何種類かのペンの試作品を提出して、ついに先月正式注文となったのである。

という事で切った桜の木を板状に製材した後、充分乾燥するのを1年近く待って、ようやく届いた材がこれである。表裏鉋掛けをした後、棒状にカットして木取り完了。

更に穴をあけて真鍮パイプを接着すれば、ようやく旋盤に掛けられる。角棒を丸く削って、次にペン状にカーブを付けて仕上げていく。同じ樹種で連続してこんなに沢山のペンを作るのは、もちろん初経験。いやでも刃物遣いがうまくなっていく(ような気がする)。

という訳で、この作業延々と年明けまで続くはず。最後の頃には目を閉じても出来るようになっていることだろう、なんてことはないか?