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第7回 匠の祭

「匠の祭」展示会が奥永源寺で今年も開かれます。今年で第7回ですが、木工房YZは昨年に続いて2回目の出展です。

昨年は、台風とピッタリ重なって連日の大雨や最終日は高速道路や奥永源寺の先の道路閉鎖などもあり大変な展示会になりました。今年は、秋晴れを期待したいところです。興味・関心ある皆様方のお越しをお待ちしています。

下記のパンフレット裏面に記されているように木工の外にも陶芸やガラス、革、ナイフ、能面など多種多様な手作り作品を見ることが出来ます。会場のある奥永源寺への道は、永源寺ダムを過ぎて国道をはずれるとどんどん細くなって行き、そのうち対向車とすれ違うのもやっとになり、道を間違えたのではと不安を感じる頃に到着します。

日時:平成30年10月19日(金)~10月22日(月) 10:00~16:00
会場:東近江市蛭谷町176 筒井神社周辺 (木地師資料館前)
詳細は下記パンフレットをご覧ください。

facebook にもこのイベントページが出来ています

https://www.facebook.com/events/2401214376585706/

 

小さな丸テーブル

建設中の新居の玄関に置かれる予定の小さな丸テーブル。ようやく完成にこぎ着けた(未塗装だけど)。直径40cmの小さな天板には、虎斑(トラフ、虎の縞模様のような杢)がキレイに入ったホワイトオークの柾目材を使っている。このオーク材、もうずいぶん昔に手に入れたのだが、量が限られていて大きな机が出来るほどでもなく、このような機会を大事に待っていたのである。

 残すは塗装のみ

 天板の杢

同じくオークの曲げ脚を3本、この天板に取り付けた。椅子の場合なら脚材上端に丸ほぞを作り、天板に突き刺してそこに楔を打ち込んで座板と固定するのだが、今回は小さいとはいえテーブルなので天板下に小さな受けの板を用意してそれに脚を突き刺すという構造にして天板には脚材が出ない構造にしている。また、脚の中間には脚同士をつなぐ貫を円盤状の板を介して取り付け、アクセント兼補強材としている。

この丸テーブルと並べて使う小さな木の丸椅子の注文もいただいていて、上の天板と同時に入手したもう少し厚みのあるやはり虎斑入りのホワイトオークを用いることにしている。そちらは、丸座板のみカットしただけで、脚部分の加工に入れていない。納期までまだ数カ月残っているので(新居完成までまだ数カ月)、時間は十分あるのである。(この項続く、予定)

7月の木工教室

7月から新たに女性が木工教室に加わってくれました。既に木工歴10年以上とのことでキャリア十二分、大型木工機械の経験も長く、当然ながら初回から自由製作を楽しんでいただいている。で、最初の作品がスマホスタンド。スマホ画面を見るのに便利で充電も同時に出来るという次第である。仕上げのサンディングなど実に女性らしいきめ細やかな作業ぶりで大変勉強になる。友人の分とご自分用の2台同時完成である。

一方こちらは、もう一人の方の新聞・雑誌スタンドも完成した。同じスタンドとは言え、こちらははるかにデカい。ヒントになりそうな木工雑誌の記事を参考にしながら図面を書くこともなく、テキトーに切ったり削ったりしながら寸法を決めていくという極めて男性的アプローチで、それゆえ幾多(?)の危うい目にもあいながら完成にこぎ着けることが出来た。こちらのスタンドの仕上げのサンディング時間は、上の小さなスマホスタンドのサンディング時間よりずっと短時間というこれまた野性的(?)仕上げであったことを報告したい。床置きで壁際に置いて新聞や雑誌を立て、これから生活に密着して活躍することになる。

結果良ければ、すべてよし。全て1x4材を使い、沢山のビスケットを使って幅広の板に加工してあり、なかなかいい味がある、と思う。

もうおひとりの栗材ポストは、完成までまだ数週間掛かりそうだが、なかなかの力作で次回報告としたい。

椅子張替え

先月の椅子の張替え。何十年か使って来られたというカリモクの食卓椅子の座面生地が傷んでパックリ裂けている。座板に厚いウレタンをかぶせた上を箱状に縫った合皮が被せてある。背板には、写真のようなボタンが7個取り付けてあり、座面同様に周囲を棒状に縫った飾り合皮で取り囲んでいる。本体は、まだまだしっかりしているので張り替えれば、この先も長く使える。

さて、どう修復したものかと悩んだ結果、了解を得て箱状の縫い付けは止めて(工房にミシンも無いし)通常の張り方(平らな生地の張り付け)に変更し、ボタンも無くした。で、新旧並べたのがこれ。

ちょっとクラッシック感が薄まって、いい感じではないか。とは言え、背板の周辺のチューブ状の飾りをなくしたので一脚目の椅子では、背中の木部のくり抜き部分とはめ込んだ合皮を張った背板部分に少し隙間が空いてカッコ悪かった。隙間をなくすために背中部分の芯の板を各辺2ミリづつほど大きく作り直して、この隙間をなくすことにした。スポンジ類も大分ヘタっているので新しいウレタンチップとウレタンスポンジに交換して座り心地も改善。

という訳で、全部で5脚の椅子の張替え完了。元は、ワインレッド色のみだったが、張替え後はベージュ、ライトピンク、ワインレッドの3色に変更し、すっかり明るい印象となった。

一度に全ての椅子を預かる訳に行かないので、5脚が並んだ写真はないのが少し残念ではある。

Yチェアの秘密

「Yチェア」と呼ばれるデンマーク製の著名な椅子がある。日本で最も売れている北欧家具である。その椅子にまつわる書籍「Yチェアの秘密」の著者である坂本茂氏(木工デザイナー)と西川栄明氏(木工関連書ライター)の講演会に参加して来た。この書籍が出版されてから全国各地で幾度か開催されているのだが、先週京都工繊大での学生向け講演に学外からも参加可能という事で、滋賀から琵琶湖大橋を渡り大原を通り抜けて同大学キャンパスへ行ってきたのである。

デンマークの巨匠ハンスJ.ウェグナーがデザインしたこのYチェア、発売から65年以上経つのにこの間延々と世界中で売れ続け、日本だけで今でも年間5~6千脚売れているのだとか。毎日20脚という凄まじさ。生涯何百脚もの名作椅子を残したウェグナーの作品の中の金字塔であり、その秘密が解き明かされるという訳である。

この椅子を日本で輸入販売している会社で長年この椅子に関わって来られたという坂本氏の解説、表も裏も知り尽くす人ならではの解説に聞き耳を立てた。

数多くの家具の中で椅子ほど難しくて面白いものはない、と思う。デザインが優れていて美しいこと、座り心地のいいこと、そこそこ軽量で移動や持ち運び可能であることに加えて、何といっても毎日その上で何時間も腰かけて体重を掛けられ続けることに耐える頑丈さ、毎日使って飽きの来ないこと、食卓椅子など同時に複数脚を揃えることから価格的な制約も大きい、などなど。機能と美と耐久性などすべてを高次元で実現しない限り、椅子としての期待に応えられない、のである。

ということを自覚するあまり、未だに自分の椅子へのチャレンジが出来ないでいる(子供椅子とスツールぐらいに留まってる)。世の中にあまた存在する市販椅子にとって代わるようなオリジナル椅子のアイディアも未だ湧いてこない。

そんな言い訳を頭の片隅に浮かべている間に講演は先へと進み、やがて第二部の座編み実演が始まった。この椅子の座面は板張りでも革や布地張りでもない特殊な紙ヒモで編みこまれているのである。茶色い紙を直径4mmほどのロープ上に巻いたペーパーコードと呼ばれるヒモを縦横に巡らせて座面となすのである。一脚分におよそ120メートルものコードが使われる。

実演される坂本氏、このペーパーコード張りの達人で一脚編み上げるのに驚きの45分、日本一は無論もしや世界一では、とのこと。Yチェアの座面は、10年~20年と使い続けるとさすがにペーパーコードが伸び編み目も崩れ、座り心地が悪くなるので張替える必要が出てくるのだが、この張替えを請け負うために必要なペーパーコードをデンマークからコンテナ買いをする、などとサラリといって聴衆をどよめかせるのである。

というようなわけで、完成したYチェアがこちら。右側は前回張替えから20年経過したYチェア、左側が張替え直後の美しい座面。試しに腰掛けると座り心地も全く違う。ただ、背中のYの字の根元が深く腰掛けた際には尾てい骨あたりに触れるのが、個人的には正直なところ少し?と思ったりもした。

一方こちらは、工房の片隅に転がっているワタクシが以前ペーパーコードを張ったスツールの写真。だらしなくコードの間に隙間が空いていてヒモが交差するXの形もビミョーにカッコ悪い。編み上げた直後から、カッコ悪さを自覚していたのだが、今回講習でのヒントを参考にいよいよ張替えねば、である。

ということでクダクダ長文失礼しました。この機会を頂戴した西川様(この書籍にサインいただいた)、坂本様、有難うございました。大変勉強になりました。もっとも、このおふたりがこのブログを読まれる機会は、永久に来ないと思いますけどね。

ミシン台テーブル納品

しばらく前に、昔の脚こぎ式ミシンからミシン部分を取り外した台を使ってテーブルにして欲しいという依頼を受けた。市内のJazz Café Yugeya で同様のテーブルが置いてあるのを見ていいなと依頼主のご夫婦で話していた折に、知人が昔のミシンを処分しようとしているところに遭遇したのだとか。そんなわけでそのミシン台が工房にやって来た。

天板の樹種としては、幾つかサンプルを見てもらい栗の木に決定。希望としては、90cm x 60cm 程度の耳付き板という事になったが、そんなデカい一枚板は入手困難で値も張るので板を接いで作ることで了解を得た。

幅45cm、長さ2.3m程の手持ちの栗の板(厚さ45mm)から節を避けて木取りをしてつなぎ合わせて90cm x 60cm の板に仕上げることにして製作開始。

木取りした板を鉋掛けしてきれいにした上で、反りを除いて厚さを確保するために幅方向に3枚の板を接着することにした。これで完成厚さ37mm 程度を確保でき、そこそこ厚板の天板となった。耳の部分は、皮を落として南京鉋や小さな反り鉋を使って自然な感じに仕上げる。

合わせてミシン台の経年の汚れを掃除して、サビた箇所もあったので全体をつや消し黒ペンキで再塗装。一度目を工房内でやったら溶剤のにおいでひどい目にあったので、仕上げは屋外でブルーシートの上で青空塗装。倒したり裏返したりしながら全面塗装して綺麗にお化粧完了。

という事で、オイル塗装で仕上げた天板をミシン台に固定して無事完成。SINGERミシン第二の人生の始まりである。

下の写真は、昨日納品した際リビングルームに置かれたテーブルの様子。栗の色調・木目、耳の具合も気に入ってもらえて、製作し甲斐を感じる瞬間である。

物置に昔のミシンが転がっているそこのアナタも如何ですか? と、最後に営業。

 

木工教室から

ここ最近の木工教室の様子から。

①昨年末からスタートしてほぼ半年経過したおふたりは、徐々に大作にチャレンジされています。こちらは、物入れを兼ねた二段式の踏み台。普段、1段目は引き出しのように収納されていますが引っ張り出せば、2段になり、踏み板を外せば二段の物入れに変身するという凝ったデザインです。

次回作は、初めて製材所の無垢材からの製作に挑戦されることになり、先日注文先の製材所から乾燥した栗とブナ材が工房に届きました。荒材からの木取り検討からスタートとなります。

もうおひとりは、現在1x4材を使ったマガジンラックに取り掛かっています。下の写真は以前作られた書類収納箱3個が勤務先の学校で活用されている様子です。毎日、大活躍中とのこと。

②また、6月からは初めての親子木工教室が始まりました。工作好きの男の子とそのお母さんのペアでそれぞれ違った木工をやってもらっています。小学生の男の子の最初の作品は船(写真撮り忘れ)、次は電車を作りたいと挑戦中。お母さんは、学生の頃デザイン関係の勉強をされていたとかで、アヒルもウサギもあっという間に可愛く書かれるのでビックリです。糸鋸でそれらを切ってもらいます。羨ましいスキルの持ち主です。

③もうひとつは、旋盤の一日教室。以前ボールペンを作りに来られた方が、今回はサラダボールに挑戦。20cmぐらいの大きさの木を用意していたのですが、材木屋さんで調達した30cmもある大きな栗材を持ってこられたのでそれを使っての巨大なサラダボールです。削る量が半端ないので午前中からスタートして完成するのに夕方近くまで掛かりましたが、超立派なサラダボールが出来上がりました。湖西の慧夢工房に何年も通っておられますので木工の腕前はプロはだしです。この後、ご自宅でガラス塗料を塗られる予定です。

それぞれのご希望やスキルに応じて、いろいろな作品づくりを楽しまれています。

木工に興味や関心のある方、あなたも如何ですか?

 

 

かんじる比良

今日から湖西は北比良の別荘地にある私の師匠の慧夢工房・松井さんのところで「かんじる比良」イベントに出展中。昨日の搬入時は、蒸し暑い梅雨時のような天気だったのが、1日過ぎただけで今日は一転して肌寒くなり、強風も吹き重ね着しても寒いほどだった。

別荘地の林の中の広い敷地にセルフビルドの工房を備えたログハウス、という羨ましい環境。ここに慧夢工房ご夫妻の作品に加え、もうひとりの木工作者と私が参加させてもらっています。

 工房主の作品

 奥様の洒落た作品群

 田谷さん

 ここは私

 休憩所

巨大なクスノキの丸太テーブルの脇のバケツには、工房内で生まれたモリアオガエルのおたまじゃくしと孵化したばかりのメダカが泳いでます。

青空(曇り空でしたが)旋盤教室で生まれて初めての木工旋盤でペンづくりをしてくれた近所の小学生。上手にできました。

明日は、青空が見られそうだが、今日より寒くなるとか。風はおさまって欲しいなあ、出来ることなら。

日曜日に時間のある方、湖西の広い範囲でさまざまな手づくり品や美味しい食べ物屋さんも数多く参加しているこのイベント、宜しければどうぞ来てみて下さい。

家具展に向けて

この週末と来月1日からのダブルイベントに向けて小さな木工品を製作してきたが、取りあえず一段落。ひとつは箱類。ティッシュペーパーボックスは、専用箱だがそれ以外は、ペン類やカトラリー、あるいは身の回りの小物やアクセサリー収納など目的は使う方に考えてもらうことにして、とにかく色々作ってみた。

四角四面な箱以外にも材木を割って作ったへぎ板の箱も。そのうちのひとつは、市内在住の漆器作家の藤井氏に生漆を塗ってもらった。実は、その漆を少し分けてもらったので一段落したら訓練校の実習以後初めての漆塗装にチャレンジの予定。どうなるか今から楽しみ。

あとは、薄皿も製作。何年も手元で転がっていたケヤキの面白い杢の薄板を平らに鉋掛けをして小皿にしてみた。また神代欅と呼ばれる長年土に埋もれていたケヤキの短い板がありボールペンなどに使っていたが、割れが多く入ってペンに使えない部分を切って同様に小さな厚皿にしてみた。ヒビだらけだが、意外と面白い。ついでに最近依頼を受けて鍋敷きを沢山作ったのだが、その治具があるので少し追加で作ってみた。

まずは、19~20日の「かんじる比良」@慧夢工房で見てもらう予定。

薬師寺東塔解体修理見学

「凍れる音楽」と呼ばれる薬師寺東塔。その解体修理現場の見学に行かれた現役時代の先輩である浅井さんのFacebook 書き込みを数日前に読んだのがきっかけで、ゴールデンウィークのさ中に奈良へ行ってきた。浅井さんから、瓦の寄進をすれば解体修理現場の足場へ上って見学できると電話で教えていただいたその日の午前中に速攻行ってきたのである。ゴールデンウィーク中なので高速道路の渋滞やお寺の行列も覚悟したが、どういう訳かどちらも皆無。2009年から始まった解体修理は、下から2/3ほどが再び組み上げられていて、2020年の完成を目指しているとのこと。

昼過ぎには薬師寺に到着し、東塔の痛んだ瓦の差し替え用の瓦(6万枚中1割ほどを入れ替えると言われたかと思う、多分)を夫婦で2枚申し込んだ。その瓦に般若心経の一文字を名前と共に書き込んだ。その会場には屋根から降ろされた東塔の相輪が分解して置かれていて間近に見る事もできた。触るなと書かれていたが、無断で軽く触れてみた。修理完了時再び屋根の上に取り付けられれば、もう二度と触れる機会は来ないのである。

 巨大な銅製

 飛天像の水煙(4つ)

東塔が完成してから1300年とのこと。心柱の最下部こそ白アリ被害などで痛んでいたらしいが、心柱も含めて痛んだ部分だけを補修して材料は極力再利用する方針だとか。1300年前の建築が今なお優れたものとして存続しているという事実に驚くほかない。

 

ところでこれは現場に幾つも置かれていた作業台(馬、正式にはなんて言うのかな?)。四方転びのウマを始めてみたが、かっこいい。工房でも作ろうと写真を四方から撮って来た。

見学の後は、生まれて初めての般若心経の写経をして納めてきました。肉体が朽ち果てた後何百年の先まで東塔の瓦に名前が残り、写経も保存されると聞いて、えも言えぬ満足感とともに家路についたのであった。いやぁ、行ってよかった。感謝感謝>浅井さん。