自動鉋整備と曲木用帯鉄

年末に出来なかった自動鉋盤の整備が3月に入ってようやく完了した。刃の切れ味が落ちたので予備の刃と交換し、合わせてベアリングのオイルバスに入っている機械油の交換である。

 4枚の刃の入れ替え

 オイルもそっくり入れ替え

材の送りは、未だ快調なので調整不要。刃を変えると材の逆目も起きずツヤツヤの仕上がりに復帰した。

で、刃の研ぎを依頼するための工房近くの一円機械さんに持って行ったのだが、図らずもスクラップ置き場に破断した帯鋸の刃が捨てられていた。以前参加した曲木講習会で曲木に必須の帯鉄は、帯鋸の刃から刃の部分を切り落としたハガネのベルトがベストというのを聞いていた。ということでその帯鋸のスクラップを喜んでもらって帰ったのは言うまでもない。

 これが帯鋸刃

幅10cmほどの、何か所かでひん曲がった恐ろし気な鋸刃である。早速、工房のディスクグラインダーに金属切断用の刃を取り付けてこの鋸刃から3cm幅程度の鋼板を切り取ろうと悪戦苦闘の開始。

 

取りあえず、刃の折れ曲がった箇所で切断して、一番短い部分を使って3cm幅に切断してみた。ディスクサンダーをスタンドに取り付けた工具で何とか短い帯鉄を切り取ることは出来た。だが、欲しいのは大人用椅子に使う2m超と子供用椅子に使う1.2m程度の長さである。その長さを切り取る根性なく(余程うまくやらないと切断ディスクが折れて飛び散りそうで怖い)、この作戦はあえなく中止。

ここで止めるとまた何年かがあっという間に経過しそうなので、引き続きネット検索して帯鋸の製作会社を検索してみた。関西圏の会社にひとつ目星をつけて、電話して事情を話すと帯鋸刃を作る際の材料から刃のない帯鉄を譲ってもらえるとのこと。早速、幅と長さの連絡をしたところ、数日後にはついに待望のハガネの帯鉄がついに手に入ったのである。

 光り輝く新品帯鉄

これでやっと曲木に再チャレンジの道具立てが揃った。遠からず再挑戦である。因みに前回の失敗の原因のひとつは、梱包用の幅の狭い鉄ベルトを使ったので棒のサイズがベルトより広くてそこから割れが生じた、というのが勝手な仮説である。結局、まともな帯鉄入手まで3~4年も掛かったことになるのだが、今回のスクラップ帯鋸の発見を機に思いがけず解決したのであった。

今度、機械屋さんに行く際に不要となった帯鋸刃を再度スクラップ置き場に戻させてもらわねばならない。市のごみ回収にこんなのを出すと叱られそうだしね。

椅子解体修理

壊れた椅子の修理を依頼された。今回もウィンザーチェアに分類されるタイプの木製椅子。飛騨高山のメーカーのもので購入後40年以上経っているとのこと。さすがに40年以上も経つと接着剤の効きが衰え、座板も接着が駄目になり二ヶ所でパックリ割れているほか、背中を支える丸棒が座板にささっている部分ややはり脚のほぞ部分で何カ所もの接着が外れてかなりお疲れの状態である。肘掛けの塗装も40年間の使用で半ば剥がれ落ちている。

ブナ材が使われているようだが、木自体は非常にしっかりしたいい材で接着さえやり直せば、まだまだ使えそうである。最初のハードルは、椅子の分解である。10年や20年しか経っていない椅子だと接着剤がまだまだ強固に効いていて、全部を分解できないこともあるが、今回はゴムハンマーで叩いて写真のようにバラバラにすることが出来た。

文字通り、バラバラになった。接着剤がすっかり劣化してしまったようで、接着部で木が割れたりすることもなく接着箇所だけがきれいに外れている。ここまできれいにバラバラに出来ると有り難いというものではある。

最初に座板を再接着。元はいわゆるイモ接ぎという接着剤だけで貼り合わせてあるたのだが、接着強度の向上も狙ってビスケットを使って接着し直した。薄皮一枚分の鉋を掛けて新しい木材面を出すとともに平面を出し直して接着するわけである。

座板はこうやって接着し直すのだが、元の木が不均一に収縮していたり、接着箇所に若干の段差が出て、塗装も一部取れてしまうので、座板のカーブにそってサンディングして塗装も全て削り落とした。裏面もついでに平らに鉋掛け。

肘掛け部分の塗装も削り落として、あとは背板部分と脚部分を順番にエポキシ接着剤で組み立て直せば、組み立て完成となる。座板と肘掛け部分が真っ白な無垢の木状態になっているので、再塗装せねばならない。

このような部分的な塗装は、非常に悩ましい。色も合わさねばならないし、丸ごとのスプレー塗装も出来ない。というわけで刷毛を使って2種類の塗料を3度重ね塗りして何とか元に近い色に近づけてみた。

工房で作る家具の塗装は全てオイル塗装で、木の内部にオイルを刷り込むイメージなので塗りむらは発生しないのだが、今回のような濃色のウレタンニスでは木の表面に塗料の層を残さないといけないのでなかなかに難しい。刷毛を一気に木の端から端まで塗れればいいのだが、座板の奥は丸棒が邪魔をするのでどうしても塗り継ぎが必要となり、刷毛むらが見えてしまう。このあたり、更なる勉強が必要と感じる。

ともあれ、これでまたこの先何十年かは使い続けてもらえるであろう。

木のお皿を旋盤加工

工房近くにお住いの奥様から、お孫さん兄弟に木の手作り皿を贈りたいので作ってほしいと注文をもらいました。いくつかの候補の中からブラックチェリー材に決定。厚さ23ミリ程度で直径23センチ(工房の旋盤で掴める最大径)ほどの薄いお皿を作らせてもらいました。

丸い板に旋盤取り付け用の金具を取り付け、皿尻側にチャックで掴む凹みを作り、次にこの凹みを旋盤のチャックで掴んでお皿の表側を掘り、再度表裏をひっくり返して今度は外周部を大きなチャックで掴み直して、先ほどの皿尻の凹み加工部を削り落として底面を平らにします。

食器にも使える安全安心な塗装を数回施し(室内ではやりたくないほど強烈に溶剤が匂うのですが、乾けば無臭です)、耐水性のある仕上げをすれば水洗いも出来るのです。

小さなお孫さんたちが、これから毎日木の食器に接して、木の温かみを知ってもらえればこんな嬉しいことはありません。

木工教室2月

2月の木工教室では、手づくりボールペンを希望されたので初めての木工旋盤を経験してもらった。おふたりが、それぞれ友達やご家族へのプレゼントということで合わせて5本が完成。いろいろな木材をボールペン用に準備しているのだが、好きな木を選んでもらって、それと組み合わせるボールペン金具部分のキットにもモデルや金・銀・ガンメタル色などがあり、そこから選んでもらう。旋盤作業で最初に角棒の中心に穴をあけ真鍮パイプを接着するところからスタートする。角材を丸く削る段階で木の角部分が割れて顔に飛ぶ可能性があるので安全のためフェースマスクを使ってもらう。一旦丸棒になってしまえば、あとはお好みでオリジナルの形に仕上げてもらう。サンドペーパーを120番から4000番まで順番に掛けて表面をスベスベにしてワックス塗装したのち金具をパイプに圧入すれば完成となる。3時間ほどで1本が完成できる。

という訳で無事に完成したボールペンがこちら。

左から神代欅、パープルハート、トチ。パープルハートは削った直後は茶色なのだが、一日も経つと紫に変色するという不思議な木である。最初は、プレゼント用に2本を作るつもりでスタートされたのだが、出来上がってみると自分用のも欲しくなったと更に1本追加されたのでありました。

こちらの方は、パオロッサと黒檀。黒檀は誠に渋い。

ご希望の方は、半日教室で一本完成できますので宜しければどうぞ作りに来てください。完成品がいい方は、工房に1ダース以上はいろいろな木とモデルで完成品を取り揃えていますのでお好きなものをお選びください。お好きな木での特注ももちろんOKですよ。

テーブル完成

ようやくウォルナット製のテーブルが完成。二本脚風で実は四本脚なのだが、脚の取り付けは、レッグジョイント金具を使ってみた。天板裏に円盤型の金具を、脚側には棒状の金具を8cmほどねじ込んで(更に側面からテーパーピンで抜け止めを施す)両者をボルトで締め付けて天板にガッチリと脚を固定するわけである。伝統技法の吸い付きアリ桟にホゾ穴を掘って脚を固定してアリ桟を天板に固定するやり方も頑丈な仕上がりでいいのだが、運搬時などに脚部分をそう簡単には取り外し出来ないのが玉にキズ、なのである。

金具を使うと手のひらに乗るような小さな六角レンチひとつで脚の付け外しや締め増し(将来的に木が収縮してもボルトを締め増しすればOK)が可能という大きなメリットがある。脚さえ外せば天井の低いワンボックスカーでもテーブル運搬は容易になる。

ということで、近江八幡市文化会館で今週からスタートしたおやじ連の作品展に以前作ったスツールと一緒に搬入して来た。毎年の恒例行事である。巨大な節が目だつ、「大節テーブル」である。

おやじ連の作品展には色々な作品が展示されるのだが、一番人気は、この爪楊枝でできた建物であろう。

彦根城や法隆寺金堂、市内歴史建造物の白雲館などこれまでの大作をまとめて見ることが出来る。大型家具製作など比較にならないほどの周到な準備と根気と長時間にわたる製作時間を掛けて完成に至ると製作者のSさんから聞いている。

テーブル製作中

昨年11月ごろから小さめのウォルナットの一枚板テーブルに手を付けている。なかなか前進しなかったが、ようやく完成に近づきつつある。この板には10cm近い巨大な節が中央にあり、最初は節を除いてテーブルの脚にでも使おうと思っていたのだが、自分用の机になら(勉強なんてしないので多分電子工作机になるはず)この節を残した一癖あるテーブルも面白いそうと思い天板に昇格したのである。

大き過ぎて鉋盤には掛けられらないので、反り返ったこの一枚板を暇を見ては手鉋で徐々に削って平面に近づけるのだが、手鉋だけで何ミリも削り落とすのはなかなかの力仕事。大面積の鉋掛けなど滅多にやらないので鉋掛けと研ぎの修行でもある。で、数日掛かりで何とかほぼ平らになったのがこれ。

合わせて、テーブル脚のウォルナット材の選択。天板に大節があるので脚もそれに負けない癖のある材にしようと巨大な割れ目の入ったこんな厚板を探し出してきた。これを脚材にしようと準備をしていたら近くに住む漆工芸家のF氏が工房にやって来た。

こんな面白い木を脚に使うのはもったいない、これには花器がいい、と工房前の木の枝とシャコバサボテンの花をちぎって来てこんな花器が即興で出来た。

そんな訳でこの材はお蔵入りして、脚材変更。もう少しまともな材を(でも癖のある部分で)引っ張り出してきて、ホゾ加工して組み立てたのがこの脚材。ヒビの代わりという訳でもないが、真ん中でふたつに切り分けて脚の間に隙間を入れてみた。まだここから面取りやら丸みを付けたりする予定だが、概ねこんな感じ。

ということで、天板(その後更に鉋掛けを続けて遂に表も裏も平らになりました)と脚が姿を現してきたので、脚の上に天板を乗せてついでに天板を濡らして塗装後のイメージを見てみたのがこれ。

ウーン、いいじゃないかと勝手に喜ぶ、の図である。

で、ようやく脚材の取り付け加工に取り掛かったのが今日である。実は、来週12日から近江八幡市の文化会館で開催される「生きがい発見フェスティバル」の展覧会におやじ連のメンバーとしてこのテーブルを出展予定である。急がねば間に合わないぞ >自分。

今年はこんなに雪が降るし、ストーブを付けても工房は冷え冷えとして、なかなか作業が進まないのです。

木工教室から

木工教室、1月はアラレ組みによる書類箱の製作課題に挑戦してもらいました。シラガキというナイフのような刃物で板に墨付けをしてもらった後(墨は使いませんが言葉は生き残ってます)ノコで細かくカットしてノミで凸凹部を墨線に従ってきれいに仕上げてもらい、底板をはめ込む溝を機械で掘ってから底板をはめ込んでいよいよ最終組み立て工程へ。

接着できたら次は初めての鉋掛けに挑戦してもらいます。継ぎ部分の寸法は少し余裕を取った分、木口を0.5ミリほど鉋で削って側面をまっ平らに仕上げる訳です。

で、晴れて無事完成。A4書類がホルダーごと収まります。

おひとりは塗装なしで無垢仕上げのまま、もう一人は濃色のオイル塗装を選ばれました。初めての木工と思えないきれいな仕上がりの書類箱が完成しました。

次回は、旋盤を使ったボールペン製作に挑戦してもらう予定。

 

ドン!と一発 和太鼓響演

2月4日に近江八幡市文化会館で開催された「ドン!と一発 和太鼓響演」を聴きに行ってきました。毎年恒例となった太鼓演奏会で、市内在住のプロ太鼓奏者の大橋さん主催の発表会コンサート。工房でもいろいろな太鼓台を作らせていただいたり、台の修理や改造をやらせてもらっているのです。

出演者は、保育園の幼い子供のチームから小学生、障がい児チーム、中学生、成人チーム、シニアチーム、最後はプロチームと年齢層も構成も幅広い素晴らしいコンサートでした。今回初めて一緒に行った孫たちは、聴き入ったり眠ったり騒いだりといつものように活発に(?)太鼓初体験を楽しみました。

この3年間に作らせてもらったいろいろな太鼓台に再会できるのも大きな楽しみのひとつ。最後のプロチームの演奏ステージでも工房のオリジナル太鼓台が複数登場してダイナミックな音響とともに密かに酔いしれたのでありました。

 

工房仕事納め

瞬く間に時が過ぎ、今年も残りわずかとなりました。29日が工房の仕事納め。12月は、珍しくなんやかやと仕事があって納品を済ませたのが29日となりました。どういう訳か、最後に手掛けたのは、どちらも自宅のすぐ近所の方からのご依頼。

ひとつ目は、色紙用の額を6セット。山桜とブラックウォルナットそれぞれで三つずつ、面取りのパターンも指定してもらいました。いつもガラスを入れるのですが、今回はアクリル板をご希望です。テーブルソーで難なく切れはするものの、断面が熱で溶けたアクリルのせいで多少凸凹になるのでスクレーパーを掛けて綺麗にするのだが、その削りかすが静電気であちこちにくっついて掃除機でもなかなかきれいに吸い取れないという、木屑とは違った難しさを実感した。無事完成と言いたいところだが、実は失敗あり。ルーターで行う表側の四辺の面取りをついうっかり、額縁の裏側でやらかしてしまった。途中で気づいて冷や汗が流れたがもう遅い。追加のひとつ分を木取りからやり直すハメに。。。

もうひとつの29日納品は、椅子の貼り替え。オリジナルのレザー生地は、長年の使用に耐えかねてみすぼらしい姿に。張替えの布地は依頼主にお好きな柄を買って支給してもらった。革張りのスツールを何脚か製作して練習したので張り作業は想定内の作業だったが、背板部分が接着剤でがっちりと固定されていたため、分解時に元の背板の木製部分がバラバラになってしまい、曲面の背板を作り直さねばならずなかなかのチャレンジ。ビフォア・アフターは以下の通り。

スポンジなども全部新しいものに交換したので座り心地もすっかりよみがえった(はず)。 実は、もう一脚依頼されているのだが(違った布地も支給済み)、張り替え済の椅子と交換で29日に受け取ったばかりで、そちらは年明けの初仕事。

年末には、自動鉋のオイルバスのオイル交換もやろうと思っていたのだが(刃の交換もそろそろやらねば)、これも越年決定。

という訳で、30日からようやく我が家の大掃除に取り掛かった。家の外回りや窓の掃除をして夜には随分前から妻に頼まれていた包丁研ぎをやっとこさ完了。明日もたくさんやることがあるぞ。

これが、今年最後のブログとなります。皆様、一年間有難うございました。どうぞ、よい年をお迎えください。

Wishing You a Happy New Year !!

 

 

 

久しぶりの積み木

先日の工房での就業体験生の学校の先生からしばらく前に積み木の注文をいただいたのだが、今日ようやく出来上がった。お孫さんへのプレゼントといういつものパターンと違い、先生のボランティア活動でお子さん相手に使われるとのこと。数学の先生でもあり、今回の積み木は全ての積み木サイズと数量の指定があり、なかなかの大作である。 出掛けた先で使うという用途にあわせてケースも持ち運び出来るように取っ手付きでとの注文となった。

ということで出来上がったのが下のオーク材の積み木。

 2段積み、総数73ピース

いつもは、このような箱入りで完成なのだが(取っ手はなくて、木の車輪や引っ張りひも付きのケースも)、今回はふた付き。

持ち運ぶときはアタッシュケース風に。

今回、自分でも気に入ったのがこの取っ手。どんな取っ手にしようか悩んでいる時にふと目の前の積み木を見てひらめいた。積み木がケースに乗っているように見えるので、きっと積み木だと思って取ろうとする子がいるに違いない、といういたずら心である。残材活用だなんて思わないでほしい(!?)

因みに持ち運び時にケースには結構な力が掛かりそうなので、いつもはアラレ組み継ぎの接着だけだが、今回は金物(木ねじ)で補強して取っ手も同じように補強しておいた。手鉋で仕上げたケースも柾目がなかなかに美しいと思うのだが、気に入ってもらえるかなあ。

こだわりの手作り家具工房