アンプ修理架台

当工房にいつもユニークな木工品を注文してくれる隣り町野洲市でギターアンプの製作・販売・修理をされているGampsの徳田さんからまたまたユニークな依頼を受けた。

アンプの修理をする際に金属製のシャーシーを裏返して傾斜台に乗せることで修理の際の半田付けなどの作業が随分やり易くなる(らしい)のだが、その架台を作らせてもらう機会を得た。

私が知らなかっただけのことで、Google博士に”amplifier chassis cradle” と入れてみると確かにいろいろと登場する。アメリカなどでは多分市民権を得たものなのであろう。どれも実用性第一という存在感のあるものばかりである。徳田さん所有のアメリカ製の台は、年季は入ってはいてもメープル材の大変しっかりしたものだった。

手づくり家具屋の端くれとしてもう少し端正なものを、ということで山桜を使ったアンプ架台に挑戦した。最初は、実用的であればヨカンベ、と木ねじでゴリゴリと組み立てることで了承をもらったのだが、いざ板の鉋掛けが終わった段階で変心。ホゾはさすがに手が掛かりすぎるのでビスケットとダボを用いて木ねじは一切使わないことに勝手に変更。

で、本日出来上がったのがこれ。左右の間隔が自由に調整出来、なおかつL字部分の傾斜角度を必要に合わせて調整することでアンプ・シャーシー内の作業がしやすく出来るようになっている。日本語で検索しても全くヒットしなかったので、日本でこのような架台を使う人は、極めて少ないに違いない。

ということでまたまた貴重な経験を積んだのでありました。どこぞにこれ欲しいという人、いませんか?  いたとしてもこのホームページに来る確率はゼロだわな。

アイロン曲げ木

先日、講習会を受けて来たアイロン曲げ木を工房に戻って早速やってみたのだが。。。 先週、あえなく失敗。

手で曲げきれないことを想定してハンドウィンチも準備。

曲げ木用に仕入れていた天然乾燥のブナに濡れた布を巻いてアルミホイルを巻き付けアイロン掛け。

手だけで簡単に曲げることが出来た。 一見うまく曲げられているように見えるのだが、実は失敗。

講習会で曲げ木のカーブの半径(R)は板厚の10倍が最大と聞いてはいたが、子供椅子に使う予定の曲げ木の型はR=9cm、なのでこの式を当てはめれば9mm厚の板が限界になるのは分かっていたが、いくら何でもそれじゃ薄すぎるので敢えて24mm、そして幾分遠慮して13mmでも挑戦したのだが。・・・・

曲げ木のカーブが型通りの綺麗な円にならずにいびつになった上、何か所かにひび割れも発生。やはりこのカーブのきつさでは、曲げ木では無理っぽい(一番左のは数年前の失敗作、右のカーブの途中で切れているのは大きな割れが入って折れてしまった今回のもの)。子供椅子用は無理かなあ?  テープのように薄い板を接着剤で集成するやり方じゃないとダメなのかもしれない。ウーン、まだまだ実用には遠そう。子供椅子を目標にするのはやめて、もう少し緩いRの家具に目標を変えるべきか、模索は続く(多分ね)。

椅子修理完了

インターネット検索を通じてこのホームページに来られた東京在住の方から椅子修理のご依頼を受け、少し日数が掛かってしまったが、無事納品を終えることが出来た。以前、Winds 太平という会社のウィンザーチェアタイプの椅子修理について書いたことがあるのだが、たまたま同じ会社の椅子を所有されている方が、よく似た椅子という事で問い合わせていただいたのである。

配送されてきた直後に撮ったこの写真で、両方の椅子それぞれ左端の丸棒が共に折れている。特に一方では中間の太い部分が二ヶ所で破断している。背板に突きささっている両端の丸棒上部のほぞで折れた箇所もある。これは以前修理した同社の椅子も全く同じ症状。背板のほぞ穴と丸棒のほぞの角度が合致していないのが、共通する設計製作上の問題のようである。このあたり修理を通じて勉強の機会となっている。また座板に力を掛けてみると下半身も接着箇所が外れた部分があるようで脚がぐらつく。

 

という事で、まずは椅子を分解。接着の切れている部分は、単に突きささっているだけだが、しっかりと接着された状態の部分も残っている。 下半身は、ゴムハンマーで叩くだけで簡単に分解できたものの、上半身は比較的しっかりしている。叩いたり治具を使って引っ張ることで一方の椅子は分解できたものの、他方はどうやっても外れず。力を掛けすぎて棒が破断すると修理どころでなくなってしまうので、違う手を考えざるを得ない。

 片方は分解成功

続いて折れた部材の形状に合わせて旋盤でナラ材を削り出し。ウィンザーチェア系統の特徴ある装飾を真似て加工。

折れた部分が背板や座板内に残っているので、ドリルで穴を掘るようにしてキレイに穴を再生し新たな部品を差し込めばいい。

もう一方の分解できない上半身が難問。 幾つか方法を考えてみたが、最終的に折れた丸棒相当の部材を上下に分けて削り出し、中間でつなぐことにした。

 

下半分を一旦座板に深く差し込み、上半分を接着後に上にスライドさせて合体すれば、つなぎ目はわからない。最後にもう一脚と同様に丸棒下端に掘り込んだ溝に楔を打ち込めばビクともしない頑丈な取り付けとなる。

というような経過を経て無事組み立て完了。 似た色のウレタンニスを重ねて塗り(カーボン粉末で少し濃度調整も)、仕上げ完了である。

接着が固まるのを待つ間に戯れで折れた部材を旋盤加工して、孫の手を作ってみた。棒の形状が手で掴むのにちょうどいい按配でフト思いついた依頼主への贈り物である。この椅子、30年以上前に父親から送られた思い入れのある椅子という事から今回の修理に結びついたようなのだが、そう聞けば不要となった部材も処分するに忍びない、と思ったからでもある。

 座板の上に立てた孫の手

修理の出来上がりにも満足いただいた上に、このオマケの孫の手も気に入ってもらえたようで「可愛いです、リビングに置いて愛用します」と、大変嬉しい連絡をいただいた。職人冥利に尽きる、というところである。

木工講習会に参加

岐阜県美濃市にある岐阜県立森林文化アカデミー主催の木工関連講習会が開催されることを知り2月25日午後から2日間にわたり参加させてもらった。講演会のタイトルとしては、「アイロン曲木」と「ガラス塗料」のふたつ。公式の講習案内はこのリンク先記述の通りなのだが、著名な木工芸家・徳永順男さんによる講演では、実際にはこれらの外にも凄まじい切れ味の玉鋼製の鉋刃紹介や研ぎ手法、椅子のカーブした部材の南京鉋を用いた削り方など広範な木工技術を惜しげもなく披露してもらえるという、誠に濃い内容であった。木工に関して教えられた常識、読んだ常識は必ずしも正しいとは限らない、教えを疑って自分なりの正解を探すことも大切という氏の言葉(もう少し過激だったけど)が印象に残った。

曲木に関しては、実は以前曲木用のスチーム発生器を準備し、挑戦したのだが、曲木もどきは出来たものの、カーブにヒビが入り、それきりだった。今回は、なんと家庭用のアイロンひとつで僅か30分程度で4cm角の棒がぐにゃりと直径40cm程度の曲木になるという手品のような技なのである。ウーン、明日早速工房用のアイロンを買わねばならぬ。

 1時間足らずで完成

角棒の曲木が出来れば、南京鉋などを用いて四角の棒から任意の丸棒形状に削り出す技も必要となる。椅子として完成までには更に多くに技術が必要となるが、そのスタートに着くことが出来る訳である。

 南京鉋での加工実演

ところでこの学校、今回初めて訪れたのだが、「森と木に関わるスペシャリスト」育成を謳い、広大な敷地に数々の建物設備を擁した上で、80人の全学生を16人の常勤教員が2年間教えるという信じられないような羨ましい学校である。5年前にこの存在を知っていたらここで勉強したかったなあ、と羨望の思いで後にしたのであった。お世話になった徳永工房の皆様、それにコーディネータの久津輪先生、誠に有難うございました。

ベンチ椅子

今月に入り工房近くの女性が訪ねて来られて、ベンチ椅子の注文をいただいた。四角四面なベンチではなくて、工房作業場の壁に立てかけてあった節穴のある野趣あふれるナラの板を見て、それを選ばれたのであった。予算に合わせて、シンプルな構造ながら長さ1メートルほどの頑丈な椅子が出来上がった。

普段、直線・平面で構成された家具ばかりを作っているのでこういう元の板を生かし、節なども残して作るのはなかなかに面白かった。

数日前に降った雪が残る工房前で記念撮影した後、納入完了。

こちらは製作中。通し丸ほぞにクサビを打ち込んで接着後、飛び出した部分をカットし、オイル塗装後脚を高さ40cmでカットして完成。

手押し鉋盤の刃交換

長く使ってきた手押し鉋の刃を年明け早々にようやく交換。切れ味が落ちて来ていることは感じていたものの、殆どの場合、手押しの切削面は厚さ調整の段階で自動鉋を通すので、交換せずじまいだった。切削負荷(回数)は、自動鉋の方がずっと大きいので手押し鉋の刃は自動鉋の刃より大分長持ちするのである。

安全カバーを取り外して、スパナで刃を緩め古い刃物を取り外し、キレイに木くずなどを掃除した後に新しい刃を差し入れて、定盤面に刃物取り付け高さが一発でセットできる磁石付きの治具を取り付けて、中央のボルトから外側に徐々に締め付けて行けば交換終了。案ずるより産むが易し、というやつである。切れ味爽快。

交換した刃物は、近所の一円機械さんで研磨してもらった。

合わせて手道具の鉋も切れ味の落ちたものを一通り研いだり台調整したり。こちらは、砥石でシコシコと研ぐので、機械の刃物交換より何十倍も手間が掛かる。とはいえ、うまく研げるようになると気持ちいいもので(逆も真なりではあるが)それはそれで面白いものではある。

太鼓台ようやく完成

2月中旬になって今年初のブログアップ。昨12月、出来るだけ頻繁に投稿しようと努めた結果、年明けはすっかり気が緩んでしまい瞬く間に50日ほど過ぎ去ってしまった、のでありました。

で、今回は12月に本体が完成した太鼓台塗装の顛末。濃色塗装を何種も試みたものの満足いくものにならず、年明けに納品予定のオイルステイン待ちと書いたのがこれまでの経過だった。

で、年明けに到着したそのステインを試しみるも残念ながら期待に届かず。ホームセンターでまた別のウレタンスプレーを買って試すもやはりダメ。ということで途方にくれてしまい、ついに某大手塗装メーカ相談窓口にアドバイスをお願いした。

そのメーカーのオイルステインを塗ったブナ木片を同封し、ラベルに印刷されているような色に染まらないのだが、どうすればいいか助言してもらえないか、また適当な濃色塗装可能なものを推奨してもらえないかとブナ板を数枚送らせてもらったのである。

同社から(名前は出さないでと言われたので書きませんが)期待を上回る懇切丁寧な対応をもらうことが出来、同社製の塗装剤を塗った10通り以上の塗装サンプルを送っていただいた(感謝!!!)。ブナは、非常に稠密な材で塗料の染込みが悪く基本的に塗装が難しいようで、これぞベストというスッキリした仕上がりのものは残念ながらその中になかったのでありました。木材に塗る以上は、木目が透けて見えて欲しいのだが、濃色となるものはほぼ不透明で木材感が失われ、木目が見えるものでは色が薄かったり見るからに塗りむらを感じるのである。

 送ってもらった塗装サンプル

ということでいささか途方にくれていた時にやって来てくれたのは、近所に住む漆工芸家の藤井氏。漆に混ぜて使うカーボン粉末を持っているからこれを使ってみたら、と持ってきてくれた。早速、同社のウレタンニス(これだけでは濃色にならず)にカーボンを適量混ぜ込んで塗った後軽く拭き取ることで遂に濃色ながら木目が見える塗装となった。

刷毛への塗装剤の含ませ方、刷毛運び、拭き取りの加減が難しく場所によって出来具合に差があるものの、苦節一カ月、ようやく締め太鼓用太鼓台が完成したのでありました。

これは、近江八幡文化会館で2月5日に行われた和太鼓イベントでの晴れ姿。もっともステージ一番奥に置かれているので殆ど見えません。八中太鼓の演奏、例年に違わず若さとエネルギーあふれる感動の演奏だった。

歳末大掃除と機械整備

2016年もあと数時間。 30日に今年最後の仕事として椅子修理を終えて無事に引き渡し完了。その後、木屑や木の粉がそこいらじゅうに散っている工房内を普段より丁寧に掃除。最後の最後は、自動鉋主軸のベアリング・オイルバスの潤滑油交換。 工房オープン前に中古機を購入して以来、補充は時々したもののそっくり入れ替えるのは実は初めてである。バス下の金属ドレインを外して下に受けたプラスチックコップに抜き取った後、新しいオイルを規定量注ぎ込んで無事完了。 2年少しの運転で(述べ時間にしたら大した事ないですが)、オイルはすっかり黒ずんでいた。 ということで、今年の工房作業完了です。

今年1年間大変お世話になりました。良い年をお迎え下さい。

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台兄弟

ボールバスケット台、完成。 太鼓台は、濃色オイルステインの納品待ちで最終完成は新春となってしまったので完成したクリアオイル塗装の弟分のボールバスケット台のみ年内納品。 回転軸が、水平と垂直の違いで文字通り兄弟台。材も同じブナ。

ボールバスケット台は今回が初製作。上に乗せる四角いバスケットが布製で大きさも引っ張り具合で変わるのでサイズ決定がやや難。更に脚を直角に開いた状態で固定しないといけないのでそのストッパー機能が新要素となった。 設計時のパーツを最初に試作したところ難ありとわかり、作りつつ設計変更したのであった。とは言え、なかなか使いよさげ、と自己満足。というわけで3兄弟で記念撮影、双子の太鼓台に乗せる太鼓がなくて残念だけど。

2016年も残りあとわずか。年内は、あと一件椅子修理を終えれば工房大掃除の予定、ではある。

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ボールバスケット

東京に住む友人からの依頼でテニス練習時に使うボールバスケットを作らせてもらっている。 元々はアルミ製の折り畳み式の既製品があるようだが、それを敢えてブナの木で作る訳である。 先日紹介した折り畳み式太鼓台のデザインにヒントを得て、やはり回転式で収納時は平たくなるように考えてみた。

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太鼓台と違って、傾斜した部分はないのでホゾ加工は柔道一直線である。 大昔、まだ子供の頃テレビで見ていたなあ、この番組。というわけで、今日のところこんな感じ。横田君、年内には送り届けるから(多分ね)待っててね。

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こだわりの手作り家具工房