締め太鼓台、ほぼ完成

SketchUp設計図面に従って製作をつづけ、太鼓台本体がほぼ完成した。 きょう注文主の太鼓奏者・大橋さんに、この台に乗る予定の締め太鼓を携えて工房に来てもらうことが出来、無事に所定の高さ傾きで出来上がっていることを確認することが出来た。脚や太鼓保持部の傾斜も設計値にドンピシャである。

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「ほぼ完成」と書いたのは、塗装が年明けを待つことになったため(キャスター取り付けは更にその後)。黒っぽい濃色塗装を希望されていたので、何通りかの濃色オイルやオイルステインを材料のブナの切れ端に塗ってみたのだが、残念ながら思うような濃い塗装とならなかったのである。ブナは、他の木材と比べると極めて稠密で導管も少ないので染料がうまく木地にしみ込まないのである。以前使ったことのあるオイルステインでは濃く仕上げることが出来たので、別メーカーのものを取り寄せ中だが、在庫がないのか年明け発送の見込みとなったのである、残念。

透明オイルの場合は、どんな木材でもほぼ期待通りに塗りあがるのだが、濃色塗装の場合はオイルだろうとステインだろうと木との相性が大きく結果を左右するのである。まだまだ塗装修行が必要と改めて実感。

締め太鼓台のお題

これまで幾種類かの太鼓台を作らせてもらったが、現在製作中なのは締め太鼓台。市内在住の和太鼓プロ演奏家のOさんが教えている工房近くのH中学校太鼓部に納める予定。太鼓台を作るのは、数学の応用問題を解く楽しみのような面がありなかなかに面白い。今回のお題は、下図のごとくである。

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太鼓自体は、現物から寸法を取らせてもらうのだが、「演奏時に太鼓面が16度の傾斜となり鼓面中央の高さを床から76cmとせよ」という課題である。厳密にいえば解は無数にあるのだが、それなりのプロポーションと折りたたむと平らになるようにデザインするのは、それなりに難しい。デザインツールとして使っているSketchUp はいきなり3Dで図面が書けるので、X字状の脚を適当に書いておいて16度に傾けた平面を所定の高さに持って行き交わった部分に横棒(貫)を渡せばいい。

とは言え、いきなり図面通りで木の加工まで済ませてしまうにはやや勇気がいるので、念のため墨付けをした後の角柱を所定の角度で並べてみてのチェックをしてみる。幸い、間違いはなかったようなので一気にほぞやほぞ穴もを刻んでしまった。今日で本体の接着も終えたので、完成間近。設計通りに出来ているかどうか、明日にはっきりする予定。

携帯顕微鏡を買った

昨日の竹中大工道具館での刃物研ぎ講習会で携帯顕微鏡なるものに触れた。刃物先端の研ぎ具合など無論目では見えないので軽く指先で刃物に触れゾワッとする感触(?)を確かめた上でこれまでは手の甲の毛を剃ってみたり、紙切れで切れ具合を見るのが習性だったが、初めて小型顕微鏡なるもので覗いてみてすっかり気に入った。目には鏡のように見える刃先も顕微鏡で見てみると、研いだ痕跡や微小な刃の欠けなどがしっかり見える訳である。という事で講習会から戻った夜に早速Amazonに注文してしまった。講習会で使われたのと同じ機種を買うつもりだったが、さらに評価の高い同様な携帯顕微鏡があったので、そちらを選択。驚きの1600円。 きょうびのネット通販、夜中の注文も驚きの翌日配達である。カメラ好きの人なら聞いたこともあると思うがケンコーという日本の会社のものである(生産はむろんChina だけど)。 値段の10倍以上よく見えるのである、これが。

img_6805  LED照明も付いて60~120倍ズーム

家に転がっていた鉋(切れないので捨て置いていた)の刃先を見てみるとこんな具合である。上から1/4ぐらいのところに刃の欠けがしっかり見える。この刃で鉋掛けをするとこの欠けによって鉋屑が1枚にならず2枚に分かれるのである。この小さな投資で研ぎの腕アップ間違いなし、かもね。

img_6816  iPhone のカメラレンズで覗いて無理やり撮影

調子に乗って、ティッシュペーパーを見て見たり、液晶画面を見て見たり、木の表面を見て見たり子供に戻ったかのようである。液晶画面の撮影は、顕微鏡とスマホを手で支えながらなのでピンボケばかりだったが、しっかりRGB画素が見える。オモロイ。孫たちへのクリスマスプレゼントにいいかも。

img_6814 東芝レグザ。画素って複雑な形なんだ。

自分の顕微鏡なんて、中学の頃親に買ってもらって以来か? 半世紀ぶりという事になる、ワハハ。

刃物研ぎ講習会へ

新神戸駅から徒歩3分の好立地にある竹中大工道具館。同館への3度目の訪問は、大工道具の刃物研ぎ教室に参加するため。9月に申し込んだが、幸い一発で抽選に当選し今回参加OKとなった。我流での刃物研ぎは、もう何年もやっているのだが未だに正しいやり方なのかどうかサッパリ自信がない。3年前、高山の職業訓練校に通った際にも研ぎの授業はあったものの座学ゼロでとにかく実践あるのみというやり方だったので、それなりに研いではいるものの我流の感が否めず、ちゃんとしたやり方を是非学びたかったのである。

今回、5時間講習で講師2人に生徒は10人という構成。竹中大工道具館専属の研ぎ名人のしっかりした解説や質疑応答もあり、充実した内容だった。受講生それぞれが刃物を持ち込み、各人にひとセットづつ用意された研ぎ道具を使って研ぐ、という非常に贅沢な内容だった。一人ひとりには用意されていないものの、裏出し用道具類や台直しの道具、天然砥石を含む各種の砥石、丸のみ研ぎに使う各種Rのかまぼこ型や逆かまぼこ型の砥石セット、金盤を使っての裏押しと至れり尽くせりである。参加者は、平日昼間の講習会という事もあってかほぼ同年輩中心の木工同好者のようである。無駄口もあまり叩かず黙々とそれぞれが用意した刃物を研ぎ、5時間はあっという間に過ぎ去ったのであった。いやぁ、はるばる(というほど遠くもないが)神戸まで行った値打ちはあったなあ、というのが実感である。

竹中大工道具館、新神戸駅から徒歩3分というとんでもない好立地にもかかわらず林の中の静かな博物館といったたたずまいで、古今東西の木工道具の名品や宮大工の技の数々が実際に目で見て触れて、おまけにこの手の教室も開いたりと、まこと素晴らしい施設である。

img_6789 持って行った鉋やノミ。それぞれ研ぎの課題あり。

img_6779 講師K氏の鮮やかな研ぎ

img_6793 千代鶴是秀作、垂涎の超名品鉋刃。

img_6800 超巨大な鉋。鉋職人の意気?

img_6803 粋な建物、貴重な大工道具と技術を後世に。

鉋を大改造

いつの日か、留型隠し蟻組継ぎという最高級難度の仕口にチャレンジしてみたいと思っている。ネットからコピーして来た次の写真がその2枚の板の掘り込みを終えた写真である。 表面から見ると、45度(留めという)にカットした板と板を直角に継いであるだけに見えるが、見えない内部にこのような蟻ほぞが仕込まれていてとても頑丈な継ぎ方なのである。機械加工だけでは不可能な仕口でかなりの部分で難度の高い手加工が必要となる。

k0008-1b 向こうの板を手前の板に直角に差し込む

で、この加工をするには側面が45度に傾いた特殊な鉋(留め鉋)が必要になる。先日、三木の金物市でも探してみたが見つけることが出来なかった。先日、例によってヤフオクをチラ見している際、とある特殊鉋に目が留まった。板に波型の模様を削り込む特殊な鉋だが、留め鉋に改造できそう。とひらめき思わず落札してしまった。こんな形の鉋である。特殊すぎて他に欲しい人もおらず、驚きの300円(+送料)。

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昨日、無事に届いたので家具製作を休んで早速改造開始。底を平らにして側面を削って45度の傾斜をつけるまでは木工なのでまあ何とか形は出来た(精度はやや怪しいが)。先端が波型になっている鉋刃を台形に研ぎ直すのに半日以上掛かってしまったが、まあ何とかそれらしい形にはなった。底を大きく削って平らにしたので刃の先に大きな隙間が空いたので別の木で刃口埋めもしてほぼ完成。まだ刃の台形側面の調整(この部分では削らなくていいので台から出ないようにグラインダーで削ればいい、多分)が残っているが、取りあえず平らな板を削ってみてうまく薄く削れたのでまあよしとしよう。いつの日か留型隠し蟻組継ぎにチャレンジする日まで眠りについてもらおう。

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食卓テーブル完成

ここしばらく掛かり切りだったダイニングテーブルがようやく完成。数日前に作業台の上で上下逆の状態で組み立て終えたテーブルを知人に手伝ってもらって二人掛かりで何とか裏返して床に置き、最後が天板上面の仕上げ。 手鉋である程度まで逆目痕を減らして、最後はサンダーで仕上げオイルを塗ってとうとう完成した。体積計算からすると70kg近い重量のはず。木工を始めて以来の最大かつ最重家具記録更新ではある。自宅用の食卓なので息子にも手伝ってもらって近々自宅に運び込む予定。

6cmの厚さに製材してもらったケヤキ板を2010年春に購入し、5年ほど自宅軒下で乾燥し工房に持ち込み壁に立て掛けて1年。6年半以上かかってようやく家具に姿を変えたわけである。兄弟板があと2枚、まだ軒下で出番を待っている。家具になれるのは、いつの日になるのやら。

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img_6729a 長辺は、半径13.5mの緩やかなカーブ。

img_6727a 塗装前、鉋掛け中。ムズイ。

因みに今年初めの頃、天板を作っていた時の書き込みはこちら

隈研吾 講演会

神戸の竹中大工道具館に隈研吾の「木の心」講演会を聞きに行って来た。2020年の東京オリンピックのメイン会場のザハ・ハディド案に代わって採用された設計者である。今回の競技場も木材を多用した巨大建築と聞いているが、従来から一貫した姿勢であることを初めて知った。家具と木材建築は、材料や加工方法を含めてかなり共通した部分が多いのだが、最近は木材を生かした建築が一段と見直されて来た感がある。彼の一連の建築を見て、次々と木の使い方のチャレンジが続いていることを知り、オリジナリティ追求の姿勢の大切さが非常に印象に残った。家具作りにもそういうチャレンジを入れ込まねばと感じさせられたのであった。

講演後に道具館の見学も閉館まで小一時間したのだが、まだまだ見足りない。

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食卓テーブル製作中 その2

引き続き、食卓テーブルの脚部材を製作中。 出来上がった吸い付き蟻桟のある天板受けにほぞ穴を掘り、同じような寸法の脚材(床に乗る部分)にもほぼ同様の加工をした後、左右の脚板にはこのほぞ穴にぴったり合うほぞを切る。クランプで三つの部材を仮組してみるが、このあたりは毎回やっている作業なのでスムーズに進行、ドンピシャで隙間なく組みあがることを確認。

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次に見た目を若干よくするために天板受けや端の部分を斜めに切り落としたり、床に当たる部材の中央部分を3mmほどすき取り床から浮くように加工。さらに角部分は使用中に足などが当たっても痛くないよう丸面取り。

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さらに左右の脚板間に長い棒材を渡して両方を接続する貫とするのだが、まずはその通しほぞを受けるほぞ穴を脚板中間あたりにあけた。部材が大きすぎて角のみ盤では加工できないので手のみで地道に作業。出来あがった左右の脚材をテーブル裏面に軽く差し込んでみたのがこれ。奥まで入れるの最終組み立てまでおあずけである。

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脚板の横に置いている前後に長い棒の両端に通しほぞを次回加工して左右の脚板に通せば(楔で脚に固定する予定)、ほぼ下半身が完成の見込み。天板と脚や脚間の貫はどれも接着せず木の動きを吸収するとともに、将来の輸送時には天板と脚部分が分解できるわけである。この状態にまで組みあがると長さ180cmのテーブルはもはや一人作業ではひっくり返すことも全くできない重さとなる。助っ人を呼ばねば。

 

食卓テーブル製作中

天板だけ作って半年近く放置していたダイニングテーブルの製作を再開している。まずは、最難関の吸い付き蟻桟に挑戦。吸い付き蟻桟とは天板下面に下の広がった溝を掘り、更にその溝が先にいくほど僅かに狭まっていくのであるが、この溝にピッタリはまる桟をやはり同じだけ先すぼみにして、力ずくでこの溝に差し込むことで天板と桟がピッタリと吸い付いて、天板の反りを防ぐと同時に経時変化や湿度変化で天板の幅が動いた時にその動きを吸収してしまうという昔からの高度な加工法である。こんな加工を昔の職人は、ノミやノコでやっていた筈だが、そんな腕があるはずもない今日では、ルーターと呼ぶ機械でそれなりに作れてしまうわけである。とはいっても、テーブル幅85cmの長さに対してわずか2mm程度の先すぼみ加工を溝側と桟側両方に施すのはそれなりの工夫と治具が必要にはなる。本をじっくり読み込んだり、ネットで先輩職人の技解説を集めたりした上でようやく加工開始。数日掛かりでようやく加工出来た。パイプクランプでギリギリと押し込んだ時に丁度天板の中央に桟が位置する。見事に天板に吸い付いて、幅方向に中央で1mmほど反っていた天板が真っ平らに戻った。 時間は掛かったが、満足できる出来ではある。

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向こう側の桟は所定の位置に収まった。手前は、まだここまでしか入らないのであと0.2mm ほど追加で桟を削らねばならない。

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日本語で蟻桟、この形、英語では鳩の尻尾のダブテイル(dove tail) と呼ばれる。日本語でなぜアリなのか?  アリの口先の形とか書いている本もあったが、ホンマかいな?

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桟となる手前の棒にテーパーが付いた治具を固定してルーターテーブルで滑らせるとテーブル下から飛び出ているdove tail ビットで僅かにテーパーが付いた蟻加工が出来るという次第。一昨年、高山の訓練校での実習でやって以来の蟻桟加工である。失敗したら分厚いケヤキの予備の板はないので慎重に慎重に。何とか無事に完成。

陳列用ペンケース

工房で陳列販売している手作りボールペンをカフェでも売ってあげるよ、といってもらってウンヵ月、ようやく陳列用のペンケースを新たに作った上でペンと一緒に渡すことが出来た。 ペンケースは、ホコリ除けというか多少なりとも見栄えが良くなることを期待してのこと。残り物の栗板材を矧いで少し幅広にしたうえで、高さ10cm程度の箱に組んだ後に上部(フタ部分)と下部に切り分けると、バッチリ上下でサイズの合ったケースの出来上がり。上部には塗装後ガラスを入れ、下部にはペンを並べるための窪みを並べた板を大きなエグレの入った部分を残して作ってみた。この板は、オノオレカンバという国産樹の中で最も重いもののひとつといわれる珍しい木。固い木で斧も折れるという事で斧折樺の字が当てられる。先月木材市で初入手したのだが、硬くて稠密な材で鉋を掛けた後サンディングすると磨いた金属のようにスベスベした触感。櫛に適した材というのに頷ける。今度は、ボールペンのボディーにも使ってみたい。

というわけで、近江八幡のコミュニティーカフェ・スマイルさんに今月から置いていただいたので、お近くの方はコーヒーがてらどうぞ、と一口営業。

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ケースいっぱいにペンを並べた写真を撮り忘れたもので。。。

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栗は独特の味があっていいなあ。オノオレカンバの台を置く前

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えぐれた部分は、樹皮が溝状にえぐれ込んでいた部分。凹んでいるのでペンを掴むのにちょうどいい按配。

こだわりの手作り家具工房