フォトフレームふたつ

殆ど同時に2種類の木製フォトフレームを作った。

昔の同僚から適当な結婚祝いを考えてほしい、というお題をもらったのが3カ月ほど前。そろそろ期限が迫る中、ようやくひねり出したのがフォトフレームをふたつつないだもの。 アメリカン・ブラックチェリーの板からハート型を糸鋸でくり抜いた。切り出したハートもきれいに整形してお隣の革工房cogocoroさんにレーザーで送り主のメッセージを焼き入れてもらった。幸せなカップルの写真がもうすぐ入るかと思うと製作者も幸せである。

ハート型フレーム1 ハート型フレーム2

もうひとつは、結婚して2週間足らずのプロ和太鼓奏者Oさんへの工房からの結婚祝い。 オープンしたばかりの当工房をひいきにしてもらい、太鼓台改造や新規太鼓台製作の機会を幾つも頂戴しているのである。 つい先日納品したばかりの太鼓台をイメージした太鼓台型フォトフレームである。こちらも同じくハートをくり抜いた。ご本人の了承を得たので登場いただくこととする。下の息子と同年ながら、既に和太鼓界で多方面に活躍されていて大変うれしい。

太鼓台フレーム1 太鼓台フレーム2

太鼓台6セット納品完了

11月から製作を進めていた太鼓台6セットが本日完成して練習用にと早速嫁いでいった。同じものを6セットも作るのは、家具としては(家具と呼ぶとするなら)初めての経験。さすがに同じものをいくつも作るからには、知恵を絞って楽に作れるように工夫をするのだが、工夫する分時間を食ってトータルでは結局のところあなり効果がないということが分かった。とはいえ、同じことを6回繰り返すと後ほどスピーディーにはなる。塗装なんぞ、6台目では1台目の半分程度である。 塗装が乾くのを待って、X字型の台の開き具合を調整する綿ロープを通して焼き印をほどこせば晴れて完成である。今回初めて使ってみた栗の木だが、濃色オイルで木目が引き立ち素朴ながら味わい深く、一人悦に入ったのでありました。

この台を今夜の練習から使い始めて年明けの1月23日近江八幡文化会館での和太鼓教室発表会でデビューの予定と聞いている。もちろんチケットも購入済み。保育園児から小中高生、成人に至るいくつものグループや、知る人ぞ知る八中太鼓(八幡中学校)の演奏が聴ける。聴衆のなかで私ひとりだけ目線が台に向かうのでありましょうか?  頑張って支えろよ、と。

IMG_5209 ウーン、壮観

IMG_5206  焼き印も押させていただきました。

太鼓台製作中

市内のプロ和太鼓奏者Oさんからの依頼で大太鼓用のX字型の太鼓台を製作中。持ち運び時は折り畳み、使うときに広げて上部に太鼓を水平に載せ、時には両側から二人で叩くというものである。見せてもらった見本の台を参考に寸法やデザインは少し変更して見た目と安定感を改善し、キャスターも追加。楢や桜より幾分軽い栗材を用いて、最初の1セット目がほぼ完成したので、今日現物を確認してもらいOKとなった。 1月の発表会に使われる予定で12月中旬頃までに追加製作し6セット納品予定。同じものを6セットも作るのは家具としては(家具と呼んでいいのか微妙だが)初めて。塗装色も決まったのであとはひたすら作るだけ。

今月は、部屋のコーナーに置く三角棚も納品済み。角部分の脚がコンセントに近いので抜き差し時に支障がないようコンセントに近い部分だけ脚を細くしている。

というようなわけで木工なら何でも特注賜りま~す。

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リビングテーブル完成

9月中旬から製作を開始していたリビングテーブルだが昨日ようやく完成して納品も終えることができた。製作期間およそ40日間、過去三本の指(ホントは二本だけど)に入る大作である。どこにも曲線・曲面のない直線・平面だけで構成したテーブルで、板の角の部分も一切円弧成分のない45度の平らな面取りをほんの少し(1mm程度)手鉋で施しただけである。これまで作った家具の中で一切R要素のない初のチャレンジでもある。

依頼者の希望で天板とロの字の脚も面を揃えた面一のデザインになったので、その思想を徹底してみた訳である。とはいえ完璧な面一構造は、わずか0.1mm程度のずれも照明の当たり具合や指の感触で目立ってしまうので、最低限の面取りを入れたうえで天板は脚から1mm程度張り出すようにした。

広いリビングルームのかつてピアノが置いてあったという壁面に向かって置かれたテーブルを幸いにもご夫婦そろって気に入っていただけた。リビングルームがグレードアップしたとの有り難い感想までもらい、恐縮しつつも作者としては大変嬉しいことであった。最高級のウォルナット材をふんだんに使い、時に痺れながらの(ミスの許されない天板最終カットやカンナ掛けに)経験は大変勉強になった。自動カンナの切れ味が落ちてきたため途中で機械の設定や刃物交換の試練も乗り越えての無事完成、達成感に浸っている今夜である。

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ちなみにここが引き出し(納品前)

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引出し製作

リビングテーブルの引き出しの箱部分が出来上がった。木工の修行中は(今も継続中だけど)手鋸とノミでホゾを刻んで作った時もあったが、アリ継ぎ(先が広がったホゾ)など手作業でやると精度よくやるにはべらぼうな時間が掛かり、複数の引き出しを作るには集中力が続かない。と言うわけで最近はもっぱらアメリカ製の道具を使っている。設定方法を思い出すのにマニュアルをしばらく読まないといけないのだが、一旦設定が終わると極めて短時間でアリ継が出来る(アラレ継とかもOK)。1インチピッチのほぞしか刻めないが(可変のもあるが手持ちのは固定)引き出しにはこれで何の問題もない。

この道具(治具ですね)は、写真のような分厚いアルミでできたテンプレートを加工する材の上に固定してルーターに定められたビットを取り付けて型に沿ってなぞればOK。ただ、ピッタリと合うほぞを切るのはそれなりの経験と使いこなしが必要(だと思う)。 ほぞ加工が終われば底板を入れる溝を掘り底板と共に箱を組み、手カンナでホゾの出っ張りを平らにすれば完成となる。何度も使っているのに、やり方が未だしっかり身に付いておらず、使いたびにマニュアルを読み直すところからスタートとなる。ひたすら修業を積まないと出来ないような精密な加工を道具の工夫であっさりと誰にでも出来るようにしてしまい、その道具を安い量産価格で広めてしまうという点にもアメリカ木工の凄さがあると思う。

Dovetail2

設定さえ済んでしまえば、こういう加工がたちまちのうちに完成。集塵機構のないルーターを使うので机の周りは木くずだらけ。

引き出し1

脚の組み立て接着も完了し、リビングテーブル完成まであと少しである。

リビングテーブル製作進行中

リビングテーブルの製作が進行中。注文していたテーブル天板に使うウォルナット厚板もシルバーウィーク明けに無事届いた。反りや曲がりも少なく節もない素晴らしい材で(値段も素晴らしいけど)、大きいのは44cmもの幅がある。そこから惜しげもなく白太部分(外周側の白っぽい部分)を切り落としてもう一枚の板と矧ぎ合わせて50cm幅×140cm長の天板を作るのである。ただ、2.5mほどの長さの板から1.4mの天板を切るのはなかなか勇気のいる作業ではある。万が一、測り間違えて短く切ってしまえば一巻の終わりだし、切断面に節や穴が出たらガックリ来ることになる。 板の右側から切り出すのと左側とどちらがいいかなどと板を何度もひっくり返しながら悩んでいるうちに時間が過ぎていく。

とは言いつつも製作は着実に進行し、脚材のほぞやほぞ穴加工も完了し、テーブル天板の矧ぎも本日完了した。 反りもなくパシッと平面が出ていてよしよし、である。天板を矧ぐ前にテーブル全体の仮組みをして万が一にも左右の脚間と天板の寸法に勘違いのないことも確認済みである。ということでいよいよ引き出し加工に入れそうである。

(角のみ盤の押さえ部とハンドルを外してほぞ穴加工中)

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(脚材加工終わり)

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(天板矧ぎ)

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(仮組み、矧ぐ前の天板を乗せた状態、引き出し板はクランプで仮止め中)

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自動かんな盤整備

昨年秋に購入以来、一度も整備することなく1年近く使ってきた自動かんな盤の調子が徐々に落ちてきた。包丁の刃先同様に刃の消耗が進み切れ味も悪くなって来た。鉋を掛けた後の木の表面が以前ほど美肌でなくなり、細い線状キズも残るようになった(単に線上に出っ張っているだけなので簡単に取れるのだが)。 不快なのは、極く薄くカンナ掛けした時に送り込みローラーの跡が筋状に残る点である。またカンナ掛け中の送材がもたついたりすることも増えて来た。

ただ、調整箇所があちこちあるため、一度手を付け始めたら何日も掛かりそうな予感がしてなかなか手を付ける決心がつかなかった。とはいえ、リビングテーブルのウォルナット材の最終寸法カンナ掛けを前に意を決して整備に手を付けた。機械整備については、訓練校の授業にもなかったので自力でやらねばならない。購入時に機械屋から簡単な整備方法の説明を受けたが、メモも記憶もすこぶる曖昧である。その後購入した木工機械の教科書に整備についてのしっかりした記載があるが、一般論で機種固有の整備ポイントなど当然ながら書かれていない。

実は、しばらく前にこの日に備えて手に入れておいた機械の取扱説明書が手元にある。この機械メーカーが随分前に消滅した際に業務を引き継いだ小さな会社が今も存在する。以前、その会社に電話をして取扱説明書の存在を確認したところコピーを有償で譲ってもらえるとわかり、購入したのである。 わずか20ページ足らずの薄い冊子だが、先の教科書(350ページほどある)の数倍の請求書が届き、内容も見ずにままよと振り込んだのである。何しろ昭和50年代の機械なのでその説明書も貴重品と考えた次第である。

ということでその冊子を熟読しつつ、あちこちのネジを締めたり緩めたりはずしたり油を差したり、悪戦苦闘して何とか整備を進めた。肝心の刃物も機械購入時に入手しておいた予備と交換である。長さ45cmもある触れなば切れん、と言わんばかりの恐ろし気な新品刃物4枚を取り出して、苦労しつつ交換を進めた。

で、結局3日も掛かってとうとう整備完了。材の送り込み具合はまだ満足が行かないが、あちら立てればこちら立たずのトレードオフの調整個所の最適解には至っていないが、整備前と比べれば大幅改善、一目瞭然ではある。まあ自己満足80点、といったところか。これにて木工再開である。

因みに交換した刃物、近所の機械屋で研磨してもらって次回交換に備えることになる。

FullSizeRender (6) この機械の整備開始

IMG_4766 (1) せっせと刃物交換中、何度もやり直し

IMG_4763 恐ろし気な刃物、上新品、下旧品

IMG_4769 自己満足の仕上がりじゃ

リビングテーブル製作開始

現役時代、職場の上司だった方からリビングに置く奥行きの浅い洒落たテーブルが欲しいということでいくつかデザインを書いてやり取りした中から注文を頂戴する運びとなった。微調整を繰り返し、最終的には、次のデザインに決定した。

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fb用B  (こういう案も登場)

材料は、ウォルナットに決定。家具用材の中でも非常に人気の高い北米産の高級材である。更に天板には、30数ミリの厚材を使うことに決定。ウォルナットは、家具になるために生まれてきたような材で、他材にはない色調や優美な木目が人気の最大の要因かと思うが、作る側にとっても実に加工性に優れた材である。硬過ぎずかといって柔らかくもない、木に粘り気があるので刃物での切り心地がいいのである。切断面の端が欠けたりすることも少なく、気持ちよく加工を進めることが出来る。更に、仕上げた木の表面はしっとりとした肌触りの上に塗装した瞬間に一気にシックでエレガントな表情に一変するのである。 日本中の森を杉とヒノキだらけに変えたのが誰の判断だったのか知らないが、当時ウォルナットにでもしていれば(日本で育つかどうか知らないが)、今頃林業の様子も全く違っていたのではなかろうか。北米では、計画的に植林をして高級材として世界に供給されているようである。

で、その北米からはるばる丸太のままで日本にやって来て日本で製材された中から(これを国内挽きと呼び、現地で製材された現地挽きより高級材となる、らしい)何枚かが縁あって滋賀県までやって来て、いまテーブルに生まれ変わろうとしている。帯鋸で製材され人工乾燥された板材は、3m近い長さでほぼ確実にどこかに節(枝のあったところですね)があり、反っていたり曲がっていたり、板の端の方にはまずヒビが入っていて、また元の木の外周部に近いところは白太(ウォルナット色でなく白っぽい部分)となるので、出来上がりの家具の場所ごとにどの部分を使うかをかなり慎重に検討することが必要となる。これを「木取り」と呼ぶのだが、何枚もある板材のどこを使って無駄少なく、適材を適所に割り振るかという、木工の中でもかなり想像力や決断を要する面白い作業である。その面白くも難しい木取りを終えて(ほぼ上手く行ったかな)若干大きめに切って鉋掛けをした材を並べたのがこの写真である。奥の方の白い板は引出しに使うシナの木。

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充分乾燥した板材でも切ったり鉋を掛けたりすると、木の内部応力バランスが変わるため若干木が動くのでこの状態で数日シーズニングしてから最終厚さに再度鉋掛けする必要がある。因みに原木丸々一本(枝まで含めてだと思う)のうち家具に使われるのは1~2割というのをどこかで読んだ覚えがある。製材された板からですら半分近くは鉋屑・おが屑や使えない端材となってしまうのである。

(しばらくこのトピックス続く)

玄関椅子

工房の近所の方からの依頼で玄関椅子を作らせてもらった。 車いすを使われていたご主人が歩行出来るまで回復され、玄関で靴を履く際に使われる椅子である。玄関スペースやドア位置などの関係から椅子の奥行きを左右で変え、杖を使いながら立ち上がる際に利用する肘掛けがほしいということでややユニークな形となった。実用的でありさえすればいいということで建築用の材を用いて些か無骨ともいえる椅子になったが、昨日お渡しできた。塗装前と塗装中はこんな感じ。こういう家具を作らせてもらえるのもしみじみ嬉しいことである。

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グラインダーとベアリング

工具やたまに使う金属材の研磨や加工にグラインダーが欲しくなり、例によってヤフオクを検索してみた。工房には幸い三相200Vの低圧電源があるので三相の日立製グラインダーを見つけて入札したところ他に誰も入札せず1980円で落札できてしまった。オークション添付写真のグラインダー銘板は、写真のように判読不能で型番はおろかサイズもワット数も読めないが、雰囲気で200mm径と判断した次第。 稼働確認済みとは書いてあるものの正常稼働とは書かれていない。

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送られて来たグラインダー、やはり200mm程度の砥石径ではあった。 サンドペーパーで銘板表面をを軽くサンディングしたら文字も何とか読めるようになった。型番、ワット数など全て判明。ちょうど欲しかった程度のもので安堵。早速、電源コードを接続しスイッチを入れると強烈な振動と作動音で慌ててしまった。ベアリングが駄目で、さらにウエイト・バランスも崩れているようである。

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きょうび、Google博士の助けを借りれば、いくらでも先人の知恵を学ぶことが可能である。というわけで、初ベアリング交換へといざなわれたのである。押さえ板が錆びて固着した砥石を苦労の末ようやく外して、次がモーター本体の開腹手術である。やはり錆び付いてドライバーも効かないボルトを外すのに更なる苦労をしつつ何とかローターを取り出すことに成功。ベアリングを外すのもこれが初体験。以前バンドソーのモータ修理用に購入したプーリープーラー(プーリー引き抜き器)は、脚が短くてベアリングまで届かない。脚の長いのを買えばいいが節約して得意の(?)木工で延長治具を自作し、無事取り外し完了。外したベアリングの型番を見て、早速ネットで注文。直径47mmの比較的大きなベアリングだったが、モーター用の高速回転に耐えるという品番を選んでも、何とひとつあたり僅か360円であった。1ミクロン以下の精度で作った鋼球8個と内輪、外輪、スペーサー、シールざっと数えても20個近い超高精度部品から出来ているのに360円!!!  ラーメン一人前で2個も買えてしまうのである。と、ベアリングにいたく感激しながら次に進む。

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新しいベアリングをシャフトに挿入するのは、パイプを使って力ずくで押し込むかヒートガンでベアリングを熱して膨張させてスムーズに入れるか、どちらかの選択らしい。当然スムーズなのがいいが、工房にはヘアドライヤーもないし・・・と思ったところで天啓を得て、ベアリングを新品のビニール袋に入れて湯沸かしポットの熱湯に5分ほど浸したのであった。何と、ホントにスムーズに入ってしまった。冷えるとびくともしない。というわけで無事難所を超えることが出来た。後はワイヤブラシをボール盤に取り付けて掃除機のノズルで受けながらひたすら錆取り。錆がとれたらスプレー塗料で全身をお化粧して、新調したネジ・ボルト類で組み立ててるだけである。最後に押さえ板に付いているバランサーを調整して(さすが産業用)めでたく修理完了となった。

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かくして、生まれ変わったグラインダー。電源を入れると、ヒューンという快い回転音とともに勢いよく振動もなく回ったのでありました。明日、amazon から届く予定のダイヤモンドドレッサーでややいびつな円形の砥石を真円に整形すれば新品同様となる見込みである。

 

最後に何というか、ポンコツ機械を再生できた達成感はあるのだが、一番に感激したのは実はベアリング。 恐らく世界中の機械に日本のベアリングが搭載されていると思うのだが、最高品質の超高精度の部品を素うどん(最近聞かなくなったが死語なのかも)の値段で供給する日本のメーカーの良心と矜持に密かに感激したのでありました。

ところで近江八幡に天辻鋼球製作所という会社があるのは知っていたのだが、その前を通るたびにパチンコの玉でも作っているのかなあ、と思っていたら何と世界一のベアリング用鋼球メーカーであることを今回の検索のどさくさで知ることとなった。誠に失礼しました。これからは、近江八幡名物としてたねやとともに語り継がねばならない。

こだわりの手作り家具工房