カテゴリー別アーカイブ: 作品

神戸で「我谷盆を作ろう」

竹中大工道具館でひらかれた「我谷盆を作ろう」ワークショップ(10月4日開催)に参加して来た。我谷盆(=わがたぼん)というのは未乾燥の栗の木の一枚板を掘り込んだ素朴で味のあるお盆で、今はダムの水底となってしまった石川県の我谷(こちらはわがたに)でかつて盛んに作られていたらしい。

これを木工家の森口信一さんが長年かけて復興し、その作り方を広く普及しようと努力されている。そのご本人を講師として招いて同館でひらかれたイベントである。参加総勢12名、幸い抽選に当たってその一人として参加することが出来た。

SNSでの拡散や宣伝、大いに結構という事だったので、写真を貼っておきます。こうやってステップごとに作り方の実演があり、それを見習って受講生がそれぞれ作業台で進めていくわけです。

受講生の約半数は(私も含めてだけど)年配男性ではあるのだが、私と同じテーブルの6名のうち女性3名、若い男性2名であった。最近木工界にも木工女子勢力が着実に増えている、どこぞの内閣とは大違いではある。

このブログを読んでくれる奇特な方の中に自分でもやってみたいと興味を持たれる方は僅少だとは思うが、そういう方のためもう少し詳しく製作過程を記録されているホームページを見つけたのでそのリンクをここに貼っておきます。やはり森口さんが講師で2017年に開催されたワークショップのようなので殆ど今回と重なるかと思います。因みに岐阜の森林文化アカデミーで昨年開催されたときの記録のようです。

という訳でワークショップの内容はそちらを参照してもらうことにして、私の作ったお盆がこちら。森口さん特製の栗のアク汁で調合された塗装液を塗って仕上げている。

  製作途中

 完成後

長辺の片側に栗材をクサビで割った際の割れ面が残っていて、このカーブが面白くそのまま残したので、そこだけは平のみではうまく対応できず少し苦労。あと四隅は、掘り込んでいく際に最初に丸のみで木目を断ち切る必要があるのだが、そこを強く打ちすぎて丸い傷跡が四隅とも残ってしまった、残念。

まあ一回目のチャレンジとしては良しとしたい。栗の木は、工房に沢山転がっているので、材料としては幾らでもあるのだが、家具用の材は乾燥済みで生木と違ってすっかり硬くなっているので掘るのは困難と聞いた。でもまあ、今度再チャレンジしてみたい。

私の作る木工品や家具は、どれもこれも直線と平面がメインで多少は円弧の部分もあるのだが、基本数式で表現できるようなものばかりである。何しろ根が理系出身者なものでついそうなってしまう。数年前から付き合いのある近所に住む漆工芸家の藤井氏には、そんなまっすぐなものばかり作って何が面白いの、としょっちゅう皮肉を言われている。彼の作品には、一切直線も平面も登場しないのである。芸術品と実用品は違う、とか言って反論したりもするのだが、最近少しづつこういう自然な線のものに惹かれ始めているのを白状しておきたい。

因みに新神戸駅から徒歩数分のところにあるこの竹中大工道具館、私のお気に入りの博物館で、これまでにも講演会や鉋の研ぎ教室など何度も行っている。木工や刃物好きにおすすめの場所である。以前のブログをさがせば、その際のが幾つかあるはず。

手づくりボールペン

工房開設以来最大規模の受注となったのが 、ソメイヨシノのボールペンづくり。総数300本以上という工房にとってはとんでもない数である。いくら何でもひと月やそこらでは作り切れないので、話を聞いたとき一瞬悩んだのだが納期を半年ほど頂けると聞き、有難くお受けした次第である。

事業拡張で事業所の桜を切らねばならなくなり、それを使って何か記念品を関係者に配りたいという事から話がスタートしたと聞いている。何種類かのペンの試作品を提出して、ついに先月正式注文となったのである。

という事で切った桜の木を板状に製材した後、充分乾燥するのを1年近く待って、ようやく届いた材がこれである。表裏鉋掛けをした後、棒状にカットして木取り完了。

更に穴をあけて真鍮パイプを接着すれば、ようやく旋盤に掛けられる。角棒を丸く削って、次にペン状にカーブを付けて仕上げていく。同じ樹種で連続してこんなに沢山のペンを作るのは、もちろん初経験。いやでも刃物遣いがうまくなっていく(ような気がする)。

という訳で、この作業延々と年明けまで続くはず。最後の頃には目を閉じても出来るようになっていることだろう、なんてことはないか?

 

小さな丸テーブル

建設中の新居の玄関に置かれる予定の小さな丸テーブル。ようやく完成にこぎ着けた(未塗装だけど)。直径40cmの小さな天板には、虎斑(トラフ、虎の縞模様のような杢)がキレイに入ったホワイトオークの柾目材を使っている。このオーク材、もうずいぶん昔に手に入れたのだが、量が限られていて大きな机が出来るほどでもなく、このような機会を大事に待っていたのである。

 残すは塗装のみ

 天板の杢

同じくオークの曲げ脚を3本、この天板に取り付けた。椅子の場合なら脚材上端に丸ほぞを作り、天板に突き刺してそこに楔を打ち込んで座板と固定するのだが、今回は小さいとはいえテーブルなので天板下に小さな受けの板を用意してそれに脚を突き刺すという構造にして天板には脚材が出ない構造にしている。また、脚の中間には脚同士をつなぐ貫を円盤状の板を介して取り付け、アクセント兼補強材としている。

この丸テーブルと並べて使う小さな木の丸椅子の注文もいただいていて、上の天板と同時に入手したもう少し厚みのあるやはり虎斑入りのホワイトオークを用いることにしている。そちらは、丸座板のみカットしただけで、脚部分の加工に入れていない。納期までまだ数カ月残っているので(新居完成までまだ数カ月)、時間は十分あるのである。(この項続く、予定)

ミシン台テーブル納品

しばらく前に、昔の脚こぎ式ミシンからミシン部分を取り外した台を使ってテーブルにして欲しいという依頼を受けた。市内のJazz Café Yugeya で同様のテーブルが置いてあるのを見ていいなと依頼主のご夫婦で話していた折に、知人が昔のミシンを処分しようとしているところに遭遇したのだとか。そんなわけでそのミシン台が工房にやって来た。

天板の樹種としては、幾つかサンプルを見てもらい栗の木に決定。希望としては、90cm x 60cm 程度の耳付き板という事になったが、そんなデカい一枚板は入手困難で値も張るので板を接いで作ることで了解を得た。

幅45cm、長さ2.3m程の手持ちの栗の板(厚さ45mm)から節を避けて木取りをしてつなぎ合わせて90cm x 60cm の板に仕上げることにして製作開始。

木取りした板を鉋掛けしてきれいにした上で、反りを除いて厚さを確保するために幅方向に3枚の板を接着することにした。これで完成厚さ37mm 程度を確保でき、そこそこ厚板の天板となった。耳の部分は、皮を落として南京鉋や小さな反り鉋を使って自然な感じに仕上げる。

合わせてミシン台の経年の汚れを掃除して、サビた箇所もあったので全体をつや消し黒ペンキで再塗装。一度目を工房内でやったら溶剤のにおいでひどい目にあったので、仕上げは屋外でブルーシートの上で青空塗装。倒したり裏返したりしながら全面塗装して綺麗にお化粧完了。

という事で、オイル塗装で仕上げた天板をミシン台に固定して無事完成。SINGERミシン第二の人生の始まりである。

下の写真は、昨日納品した際リビングルームに置かれたテーブルの様子。栗の色調・木目、耳の具合も気に入ってもらえて、製作し甲斐を感じる瞬間である。

物置に昔のミシンが転がっているそこのアナタも如何ですか? と、最後に営業。

 

家具展に向けて

この週末と来月1日からのダブルイベントに向けて小さな木工品を製作してきたが、取りあえず一段落。ひとつは箱類。ティッシュペーパーボックスは、専用箱だがそれ以外は、ペン類やカトラリー、あるいは身の回りの小物やアクセサリー収納など目的は使う方に考えてもらうことにして、とにかく色々作ってみた。

四角四面な箱以外にも材木を割って作ったへぎ板の箱も。そのうちのひとつは、市内在住の漆器作家の藤井氏に生漆を塗ってもらった。実は、その漆を少し分けてもらったので一段落したら訓練校の実習以後初めての漆塗装にチャレンジの予定。どうなるか今から楽しみ。

あとは、薄皿も製作。何年も手元で転がっていたケヤキの面白い杢の薄板を平らに鉋掛けをして小皿にしてみた。また神代欅と呼ばれる長年土に埋もれていたケヤキの短い板がありボールペンなどに使っていたが、割れが多く入ってペンに使えない部分を切って同様に小さな厚皿にしてみた。ヒビだらけだが、意外と面白い。ついでに最近依頼を受けて鍋敷きを沢山作ったのだが、その治具があるので少し追加で作ってみた。

まずは、19~20日の「かんじる比良」@慧夢工房で見てもらう予定。

工房開設4年目に

先月書こうと思いながら書きそびれてしまったが、先月で工房をオープンして早くも4年目に突入しました。相変わらず超低空飛行(?)を続けていますが、それでも石の上にも3年じゃないですが木の側で丸3年やってきてこのホームページへのアクセスもほんの少しづつ増えてきています。お世話になった皆様、本当に有難うございます。

ホームページを見たという方からの問い合わせでユニークな木工品の注文をいただくことも。最近の変わった依頼は、折れたバットの材で作るぐい呑み・おちょこのご依頼。その前にはコスプレ用の銃の部品なんてのも。まあ、木の加工なら面白そうなら基本何でもやりますという事でお受けしてます。出来ればもうちょっと巨大なモノを作りたいとも思いながら、このところ小さなものが続いてます。材木の増加ペースが消費ペースをはるかに上回っているので、なんぞ大きなものを作らねば、と思ったりもする4年目の春です。

バットから生まれたぐい飲み。右端は完成直前に旋盤から外れて吹っ飛んで割れてしまったもの(涙)

 

 

 

 

木のお皿を旋盤加工

工房近くにお住いの奥様から、お孫さん兄弟に木の手作り皿を贈りたいので作ってほしいと注文をもらいました。いくつかの候補の中からブラックチェリー材に決定。厚さ23ミリ程度で直径23センチ(工房の旋盤で掴める最大径)ほどの薄いお皿を作らせてもらいました。

丸い板に旋盤取り付け用の金具を取り付け、皿尻側にチャックで掴む凹みを作り、次にこの凹みを旋盤のチャックで掴んでお皿の表側を掘り、再度表裏をひっくり返して今度は外周部を大きなチャックで掴み直して、先ほどの皿尻の凹み加工部を削り落として底面を平らにします。

食器にも使える安全安心な塗装を数回施し(室内ではやりたくないほど強烈に溶剤が匂うのですが、乾けば無臭です)、耐水性のある仕上げをすれば水洗いも出来るのです。

小さなお孫さんたちが、これから毎日木の食器に接して、木の温かみを知ってもらえればこんな嬉しいことはありません。

テーブル完成

ようやくウォルナット製のテーブルが完成。二本脚風で実は四本脚なのだが、脚の取り付けは、レッグジョイント金具を使ってみた。天板裏に円盤型の金具を、脚側には棒状の金具を8cmほどねじ込んで(更に側面からテーパーピンで抜け止めを施す)両者をボルトで締め付けて天板にガッチリと脚を固定するわけである。伝統技法の吸い付きアリ桟にホゾ穴を掘って脚を固定してアリ桟を天板に固定するやり方も頑丈な仕上がりでいいのだが、運搬時などに脚部分をそう簡単には取り外し出来ないのが玉にキズ、なのである。

金具を使うと手のひらに乗るような小さな六角レンチひとつで脚の付け外しや締め増し(将来的に木が収縮してもボルトを締め増しすればOK)が可能という大きなメリットがある。脚さえ外せば天井の低いワンボックスカーでもテーブル運搬は容易になる。

ということで、近江八幡市文化会館で今週からスタートしたおやじ連の作品展に以前作ったスツールと一緒に搬入して来た。毎年の恒例行事である。巨大な節が目だつ、「大節テーブル」である。

おやじ連の作品展には色々な作品が展示されるのだが、一番人気は、この爪楊枝でできた建物であろう。

彦根城や法隆寺金堂、市内歴史建造物の白雲館などこれまでの大作をまとめて見ることが出来る。大型家具製作など比較にならないほどの周到な準備と根気と長時間にわたる製作時間を掛けて完成に至ると製作者のSさんから聞いている。

テーブル製作中

昨年11月ごろから小さめのウォルナットの一枚板テーブルに手を付けている。なかなか前進しなかったが、ようやく完成に近づきつつある。この板には10cm近い巨大な節が中央にあり、最初は節を除いてテーブルの脚にでも使おうと思っていたのだが、自分用の机になら(勉強なんてしないので多分電子工作机になるはず)この節を残した一癖あるテーブルも面白いそうと思い天板に昇格したのである。

大き過ぎて鉋盤には掛けられらないので、反り返ったこの一枚板を暇を見ては手鉋で徐々に削って平面に近づけるのだが、手鉋だけで何ミリも削り落とすのはなかなかの力仕事。大面積の鉋掛けなど滅多にやらないので鉋掛けと研ぎの修行でもある。で、数日掛かりで何とかほぼ平らになったのがこれ。

合わせて、テーブル脚のウォルナット材の選択。天板に大節があるので脚もそれに負けない癖のある材にしようと巨大な割れ目の入ったこんな厚板を探し出してきた。これを脚材にしようと準備をしていたら近くに住む漆工芸家のF氏が工房にやって来た。

こんな面白い木を脚に使うのはもったいない、これには花器がいい、と工房前の木の枝とシャコバサボテンの花をちぎって来てこんな花器が即興で出来た。

そんな訳でこの材はお蔵入りして、脚材変更。もう少しまともな材を(でも癖のある部分で)引っ張り出してきて、ホゾ加工して組み立てたのがこの脚材。ヒビの代わりという訳でもないが、真ん中でふたつに切り分けて脚の間に隙間を入れてみた。まだここから面取りやら丸みを付けたりする予定だが、概ねこんな感じ。

ということで、天板(その後更に鉋掛けを続けて遂に表も裏も平らになりました)と脚が姿を現してきたので、脚の上に天板を乗せてついでに天板を濡らして塗装後のイメージを見てみたのがこれ。

ウーン、いいじゃないかと勝手に喜ぶ、の図である。

で、ようやく脚材の取り付け加工に取り掛かったのが今日である。実は、来週12日から近江八幡市の文化会館で開催される「生きがい発見フェスティバル」の展覧会におやじ連のメンバーとしてこのテーブルを出展予定である。急がねば間に合わないぞ >自分。

今年はこんなに雪が降るし、ストーブを付けても工房は冷え冷えとして、なかなか作業が進まないのです。

ドン!と一発 和太鼓響演

2月4日に近江八幡市文化会館で開催された「ドン!と一発 和太鼓響演」を聴きに行ってきました。毎年恒例となった太鼓演奏会で、市内在住のプロ太鼓奏者の大橋さん主催の発表会コンサート。工房でもいろいろな太鼓台を作らせていただいたり、台の修理や改造をやらせてもらっているのです。

出演者は、保育園の幼い子供のチームから小学生、障がい児チーム、中学生、成人チーム、シニアチーム、最後はプロチームと年齢層も構成も幅広い素晴らしいコンサートでした。今回初めて一緒に行った孫たちは、聴き入ったり眠ったり騒いだりといつものように活発に(?)太鼓初体験を楽しみました。

この3年間に作らせてもらったいろいろな太鼓台に再会できるのも大きな楽しみのひとつ。最後のプロチームの演奏ステージでも工房のオリジナル太鼓台が複数登場してダイナミックな音響とともに密かに酔いしれたのでありました。