カテゴリー別アーカイブ: 製作記

家具再生

古い家具の再生がいくつか続いている。

ひとつは、20年近く我が家で使い込みそれなりに傷が付いたカリモクのダイニングテーブルである。昨年暮れ完成した欅材のダイニングテーブルに交換して以来、脚を取り外して半年ほど工房に立て掛けておいたものである。長男一家が大きなテーブルが欲しいという事で、このテーブルを再生することにした。ウレタン除去液というものを初めて使ってみたが、どうもまどろっこしくてやってられず、電動サンダーの登場である。まずは120番の荒いペーパーを取り付けたベルトサンダーでひたすら古い塗装被膜を削り落とす。掃除機を接続してサンダー粉を吸い取りながらではあるが、随分な量の削り粉が工房中に飛び散って、終わった後は工房中が真っ白である。ひたすら続けるサンディングは、木工作業の中で最も辛い作業のひとつだが、塗装を落とすサンディングは粉を吸い込むのも嫌でひときわ忍耐力がいる。でも、元の濃い茶色のテーブル天板は、すっかり色白美人になった。

 Before

 After

塗装色の好みを聞いた所、白っぽい方が好きとのことでクリアオイルで仕上げることになった。完成写真を撮り損ねたので、実際に使っている時の写真で失礼。

もう一つは、なら集成材で出来た座卓の再生。相当年数がたっているので、元のウレタン塗装は所々がはがれ落ち、傷も多くみすぼらしい感じになっていた。

 Before

最初のダイニングテーブルの塗装除去はサンディングで行い、工房内が粉だらけになって大変だったので、この座卓の場合は、天板中央で二枚にカットして、機械で鉋掛けをして塗装を削り落とした。もちろん圧倒的に楽である。再度天板をつなぐ際にアクセントにウォルナットの板を中央にサンドイッチしてみた。

続いて、脚や幕板なども全て塗装を落として再度仕上げのサンディングをして組み立て直したら、いい感じの雰囲気になった。

畳の部屋に置くという事で濃色のオイルで塗装。しっかりと蘇ったのでありました。

 

電子工作三昧の1日

半月ほど前、友人からロボット入門の教えを得て、直後にアマゾンに注文したArduino と呼ばれるワンボードマイコンやら関連パーツが、昨日ようやく 中国から届いた。と同時に昨日所用で東京に行った機会に秋葉原でラズパイと呼ばれるやはりワンボードマイコンのキットも手に入れた。結果、2種類の電子工作のセットが今朝目の前に転がっていた。

という訳で今日は、丸一日木工改め電子工作日となった。小さな液晶のディスプレー部品に文字を表示するというのが、Arduino の最初の一歩。老眼で細かい所がサッパリ見えないのも気にせず、細々とした半田付けからスタートし、あとは参考書やらネット情報と首っ引きで格闘しながらプログラムを作り、何とか簡単な文字の表示に成功。パラレル入力とI2Cシリアル入力の2種類である。青と黄色のバックライトがなかなか美しい。こんな部品が僅か500円前後で手に入る、しかも送料込み。信じられない。学校を出て最初の頃、ミニコンピューターなるもので工場の機械をコントロールするような仕事をしていたが、あの頃の数千万円のミニコンより性能も容量もこの数百円のが上回ってるぞ。

ここまで来れば、もう止まらない。続いてRaspberry Pi と呼ばれるワンボードマイコンに挑戦。こちらは、言ってみれば名刺サイズのパソコンみたいなものである。中国製のArduino 基板の10倍ほどの値段だが、5000円程度。ネットからプログラムをダウンロードして、数ミリ角のSDカードメモリーに書き込んだ後、キーボードやマウス(昔のを押入れから引っ張り出して来た)を基板に差し込んで電源をつなぐと、あっという間にLinux が立ち上がる。無線LANと繋げばいきなりネットサーフィンも出来るし、Microsoft Office 同等品も最初から入っている。ちょっと前のパソコン並みの動きで思いのほか俊敏。わずか16GBのメモリーカードに全てが収まるコンパクトなコンピュータである。それでもモーターのコントロールなどもお得意(らしい)。

という事で電子工作三昧の1日を終えた。次の目標は、Arduino で戦車を動かせるようにして、孫たちにプレゼントしたい。本当はスマホから無線で操作出来るようにしたいのだが(出来ればスマホを傾けるだけで曲がったり止まったりとしたいが)、そこまでは無理っぽい。

で、そういうプロセスを経て、究極は木工とこれら組み合わせたハイブリッドの仕掛けを作ってみたいと密かに考えているのである。それが何なのか? それを考えるのがこれからの楽しみ。

まもなく家具展

家具展まで残り1週間余りになってしまった、オロオロ。

今日は、ウォルナットの自然木ベンチが完成。やや薄い板なので座板に脚を丸ほぞで直接差し込むのは止めて脚の部材を別の厚板と反り止めの幕板に固定してから座板を乗せる構造にしてみた。

使ったウォルナット材は木の股の部分の割れ目が入っていたのだが、その割れに赤みのあるカリン材でチキリを作ってアクセントにしてみた。節や股の部分など木の内部に応力が掛かる箇所には面白い木目や杢が現れるのだが、まさにそういうややこしい木目が描かれている。

あと、電波時計の置時計も製作中。何年も前に手に入れた欅の瘤部分の板を使った。いつか時計を作ろうと決めていたのだが、この機会のようやく実現。電波時計のムーブメントなので誤差のない時計となる。あとひとつ、これと似た樺の瘤材もあるのでこれも同じく置時計に加工予定(間に合えば)。

黒檀棒を8mm径に削り出して、盤面に埋め込んで3/6/9/12時のマーキング。塗装したばかりで濡れているのでムーブメントと針の取り付けは明日。

あと、丸い革座のスツールも作らねば。

家具展の準備中

来月はじめの家具展に向けてこのGWも黙々と製作中。去年の反省を生かして品揃えを増やすべく、ま四角っぽいスツールをいろいろな座面(板、革、ペーパーコード)の組み合わせで作ってみつつある。初めて革張りにも挑戦。ウレタンマットとスポンジを座板に貼り付けた後、渾身の力で革を引っ張ってタッカーで座板に留めていく。角部の処理が結構難しく、シワをうまく散らしながら固定しないと角に大きなシワが入ってしまう。この黄色いのが二層目のスポンジであんこのチップウレタンの周りを囲っている。
で、ほぼ完成した革座面スツールがこれ。木部はまだ塗装前。手元に持っていた革でスツールに貼れる大きさがあったのはこれひとつ。
もうひとつ同サイズでウォルナット版も本体部分は出来上がっていて、隣の革工房cogocoroの田中さんに革を張って貰っているところ。革屋さんなのでいろいろな色のが揃っている中で、彼の強いお勧めで黄色の革に決定。自分一人のセンスではとても選べなかったパンチあるスツールとなるに違いない(まだ出来てない)。
他にも、4本の脚をナラの耳を残した厚い座板に斜めに差し込んで固定したスツールとベンチも完成。この後時間があれば、栗やウォルナット版も作る予定。三角形のスツールは以前作ったのが残ってるので、取りあえず十数脚は出来そう。骨組みだけのスツールは、きょう接着が終わったばかりで、今週中にもペーパーコードで座面を編む予定。
 これらが完成したら、やり掛けのままの小物類も仕上げねば。夏野菜もそろそろ植えつけないといけないし、今月は忙しい。

テレビ台完成

ここしばらく製作が続いていたテレビ台がようやく完成。

上に置くテレビサイズや台の下に設置する機器類はハッキリしていたので縦横サイズはすんなり決まったので全体のデザインを何通りか提案。ガラス戸付きからスタートして、前面を覆うガラスはない方がいいという事で・・・

こんな箱状のも書いてみたが、側板も棚板も無くして下部に置く機器をたくさん重ねて置けて(いずれプリンターも)四方からアクセス出来るのがいい、ということで最終的にとてもシンプルなデザインに落ち着いた。

基本は、天板と底板を4本の角丸脚でつなぐだけだが、板の反り防止や剛性を持たせるために天板・底板下には目立たない程度の貫を入れた。 材は栗に決定。で、完成したのがこれ。リビングとダイニングの両方で向きを変えて見られるようにキャスター付き。45x85cmほどの板サイズを栗で作ったのだが、栗の味がとてもいい。野性的ながら素朴で温かみを感じる材である。

半年ほど前に木材市で幅40~50cm で厚さ44mmの板を何枚か購入して現在乾燥中なのだが、使える日がとても待ち遠しい。

アンプ修理架台

当工房にいつもユニークな木工品を注文してくれる隣り町野洲市でギターアンプの製作・販売・修理をされているGampsの徳田さんからまたまたユニークな依頼を受けた。

アンプの修理をする際に金属製のシャーシーを裏返して傾斜台に乗せることで修理の際の半田付けなどの作業が随分やり易くなる(らしい)のだが、その架台を作らせてもらう機会を得た。

私が知らなかっただけのことで、Google博士に”amplifier chassis cradle” と入れてみると確かにいろいろと登場する。アメリカなどでは多分市民権を得たものなのであろう。どれも実用性第一という存在感のあるものばかりである。徳田さん所有のアメリカ製の台は、年季は入ってはいてもメープル材の大変しっかりしたものだった。

手づくり家具屋の端くれとしてもう少し端正なものを、ということで山桜を使ったアンプ架台に挑戦した。最初は、実用的であればヨカンベ、と木ねじでゴリゴリと組み立てることで了承をもらったのだが、いざ板の鉋掛けが終わった段階で変心。ホゾはさすがに手が掛かりすぎるのでビスケットとダボを用いて木ねじは一切使わないことに勝手に変更。

で、本日出来上がったのがこれ。左右の間隔が自由に調整出来、なおかつL字部分の傾斜角度を必要に合わせて調整することでアンプ・シャーシー内の作業がしやすく出来るようになっている。日本語で検索しても全くヒットしなかったので、日本でこのような架台を使う人は、極めて少ないに違いない。

ということでまたまた貴重な経験を積んだのでありました。どこぞにこれ欲しいという人、いませんか?  いたとしてもこのホームページに来る確率はゼロだわな。

アイロン曲げ木

先日、講習会を受けて来たアイロン曲げ木を工房に戻って早速やってみたのだが。。。 先週、あえなく失敗。

手で曲げきれないことを想定してハンドウィンチも準備。

曲げ木用に仕入れていた天然乾燥のブナに濡れた布を巻いてアルミホイルを巻き付けアイロン掛け。

手だけで簡単に曲げることが出来た。 一見うまく曲げられているように見えるのだが、実は失敗。

講習会で曲げ木のカーブの半径(R)は板厚の10倍が最大と聞いてはいたが、子供椅子に使う予定の曲げ木の型はR=9cm、なのでこの式を当てはめれば9mm厚の板が限界になるのは分かっていたが、いくら何でもそれじゃ薄すぎるので敢えて24mm、そして幾分遠慮して13mmでも挑戦したのだが。・・・・

曲げ木のカーブが型通りの綺麗な円にならずにいびつになった上、何か所かにひび割れも発生。やはりこのカーブのきつさでは、曲げ木では無理っぽい(一番左のは数年前の失敗作、右のカーブの途中で切れているのは大きな割れが入って折れてしまった今回のもの)。子供椅子用は無理かなあ?  テープのように薄い板を接着剤で集成するやり方じゃないとダメなのかもしれない。ウーン、まだまだ実用には遠そう。子供椅子を目標にするのはやめて、もう少し緩いRの家具に目標を変えるべきか、模索は続く(多分ね)。

椅子修理完了

インターネット検索を通じてこのホームページに来られた東京在住の方から椅子修理のご依頼を受け、少し日数が掛かってしまったが、無事納品を終えることが出来た。以前、Winds 太平という会社のウィンザーチェアタイプの椅子修理について書いたことがあるのだが、たまたま同じ会社の椅子を所有されている方が、よく似た椅子という事で問い合わせていただいたのである。

配送されてきた直後に撮ったこの写真で、両方の椅子それぞれ左端の丸棒が共に折れている。特に一方では中間の太い部分が二ヶ所で破断している。背板に突きささっている両端の丸棒上部のほぞで折れた箇所もある。これは以前修理した同社の椅子も全く同じ症状。背板のほぞ穴と丸棒のほぞの角度が合致していないのが、共通する設計製作上の問題のようである。このあたり修理を通じて勉強の機会となっている。また座板に力を掛けてみると下半身も接着箇所が外れた部分があるようで脚がぐらつく。

 

という事で、まずは椅子を分解。接着の切れている部分は、単に突きささっているだけだが、しっかりと接着された状態の部分も残っている。 下半身は、ゴムハンマーで叩くだけで簡単に分解できたものの、上半身は比較的しっかりしている。叩いたり治具を使って引っ張ることで一方の椅子は分解できたものの、他方はどうやっても外れず。力を掛けすぎて棒が破断すると修理どころでなくなってしまうので、違う手を考えざるを得ない。

 片方は分解成功

続いて折れた部材の形状に合わせて旋盤でナラ材を削り出し。ウィンザーチェア系統の特徴ある装飾を真似て加工。

折れた部分が背板や座板内に残っているので、ドリルで穴を掘るようにしてキレイに穴を再生し新たな部品を差し込めばいい。

もう一方の分解できない上半身が難問。 幾つか方法を考えてみたが、最終的に折れた丸棒相当の部材を上下に分けて削り出し、中間でつなぐことにした。

 

下半分を一旦座板に深く差し込み、上半分を接着後に上にスライドさせて合体すれば、つなぎ目はわからない。最後にもう一脚と同様に丸棒下端に掘り込んだ溝に楔を打ち込めばビクともしない頑丈な取り付けとなる。

というような経過を経て無事組み立て完了。 似た色のウレタンニスを重ねて塗り(カーボン粉末で少し濃度調整も)、仕上げ完了である。

接着が固まるのを待つ間に戯れで折れた部材を旋盤加工して、孫の手を作ってみた。棒の形状が手で掴むのにちょうどいい按配でフト思いついた依頼主への贈り物である。この椅子、30年以上前に父親から送られた思い入れのある椅子という事から今回の修理に結びついたようなのだが、そう聞けば不要となった部材も処分するに忍びない、と思ったからでもある。

 座板の上に立てた孫の手

修理の出来上がりにも満足いただいた上に、このオマケの孫の手も気に入ってもらえたようで「可愛いです、リビングに置いて愛用します」と、大変嬉しい連絡をいただいた。職人冥利に尽きる、というところである。

ベンチ椅子

今月に入り工房近くの女性が訪ねて来られて、ベンチ椅子の注文をいただいた。四角四面なベンチではなくて、工房作業場の壁に立てかけてあった節穴のある野趣あふれるナラの板を見て、それを選ばれたのであった。予算に合わせて、シンプルな構造ながら長さ1メートルほどの頑丈な椅子が出来上がった。

普段、直線・平面で構成された家具ばかりを作っているのでこういう元の板を生かし、節なども残して作るのはなかなかに面白かった。

数日前に降った雪が残る工房前で記念撮影した後、納入完了。

こちらは製作中。通し丸ほぞにクサビを打ち込んで接着後、飛び出した部分をカットし、オイル塗装後脚を高さ40cmでカットして完成。

太鼓台ようやく完成

2月中旬になって今年初のブログアップ。昨12月、出来るだけ頻繁に投稿しようと努めた結果、年明けはすっかり気が緩んでしまい瞬く間に50日ほど過ぎ去ってしまった、のでありました。

で、今回は12月に本体が完成した太鼓台塗装の顛末。濃色塗装を何種も試みたものの満足いくものにならず、年明けに納品予定のオイルステイン待ちと書いたのがこれまでの経過だった。

で、年明けに到着したそのステインを試しみるも残念ながら期待に届かず。ホームセンターでまた別のウレタンスプレーを買って試すもやはりダメ。ということで途方にくれてしまい、ついに某大手塗装メーカ相談窓口にアドバイスをお願いした。

そのメーカーのオイルステインを塗ったブナ木片を同封し、ラベルに印刷されているような色に染まらないのだが、どうすればいいか助言してもらえないか、また適当な濃色塗装可能なものを推奨してもらえないかとブナ板を数枚送らせてもらったのである。

同社から(名前は出さないでと言われたので書きませんが)期待を上回る懇切丁寧な対応をもらうことが出来、同社製の塗装剤を塗った10通り以上の塗装サンプルを送っていただいた(感謝!!!)。ブナは、非常に稠密な材で塗料の染込みが悪く基本的に塗装が難しいようで、これぞベストというスッキリした仕上がりのものは残念ながらその中になかったのでありました。木材に塗る以上は、木目が透けて見えて欲しいのだが、濃色となるものはほぼ不透明で木材感が失われ、木目が見えるものでは色が薄かったり見るからに塗りむらを感じるのである。

 送ってもらった塗装サンプル

ということでいささか途方にくれていた時にやって来てくれたのは、近所に住む漆工芸家の藤井氏。漆に混ぜて使うカーボン粉末を持っているからこれを使ってみたら、と持ってきてくれた。早速、同社のウレタンニス(これだけでは濃色にならず)にカーボンを適量混ぜ込んで塗った後軽く拭き取ることで遂に濃色ながら木目が見える塗装となった。

刷毛への塗装剤の含ませ方、刷毛運び、拭き取りの加減が難しく場所によって出来具合に差があるものの、苦節一カ月、ようやく締め太鼓用太鼓台が完成したのでありました。

これは、近江八幡文化会館で2月5日に行われた和太鼓イベントでの晴れ姿。もっともステージ一番奥に置かれているので殆ど見えません。八中太鼓の演奏、例年に違わず若さとエネルギーあふれる感動の演奏だった。