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教室から(今年の新人)

2018年1月からスタートした木工教室ですが、今年の年明けとともに新しく加わってくれた方たちでメンバーも倍増しました。最初に挑戦してもらったのは、ノコギリ練習課題の馬づくりです。4人の方の4匹の馬。縦・横・斜めにノコでまっすぐ切る練習です。

次は、A4用紙が楽に入る書類箱の製作。ここでは、上端留五枚継ぎという伝統的な組継ぎを題材にノコギリ、ノミ、それにカンナといった代表的な手道具の練習と共に墨付けの基本を学んでもらいます。ほぞ部分の墨付けに使うのは、伝統的な加工法ではケビキを使うのですが、ケビキの使いこなしはなかなか難しいので教室ではケガキゲージという超便利な墨付け道具を使ってもらいます。これは、一度使うとこれ無なしではやっていけないほどハマる道具です。

ホゾ加工を墨付け通りに加工するのはなかなか難度の高い加工なので、仮組をした段階ではそれなりに隙間があちこちに出来たりしますが、はたがね(小型クランプ)で締めあげ、残った隙間には木の粉をノリで練ってふさいだ上、手鉋で丁寧に仕上げると、驚くほど立派な家具の完成です。

3つ目の課題として、ティッシュボックスに挑戦してもらっています。書類箱の組継ぎと違って、45度で切った留接ぎという接合なので接着する際には、四辺をバランスよくクランプで締めて行かないと四隅をピタッと合わなくなってしまいます。4枚の板の8辺を45度に仕上げるのは、このような留削り台を使い手鉋で斜めに仕上げてもらいます。ティッシュペーパーの箱サイズは、メーカーによってかなり幅があるため、ご家庭で普段使われているサイズに合わせて調整してもらっています。

先行しているおふたりのが、まず完成したところです。木工をスタートしてふた月経過すると、このような加工が手道具だけで出来るようになります。

 

教室から(ベテラン組)

前回ブログをアップしたのは昨年末だったので、ほぼ2ヵ月半ぶり となってしまいました。まずベテラン組の皆さんの作品紹介をしたいと思います。ふた月余りの間にいろいろなものが完成しました。

1.折り畳み脚の屋外用小テーブル

栗の木を使った力作の小テーブルです。毎回何かの新仕掛けを必ず設計に入れ込むTさんですが、今回は折りたたみ脚に挑戦ですね。小さめの天板に四角い脚を通す穴が開いていて脚の先端が顔をのぞかせるのが洒落てます。持ち上げても脚が固定されるよう得意の磁石仕掛けが施されています。さらに折りたたんだ時にも脚が勝手に動かないよう、ここにも磁石で折りたたんだ脚を固定しています。濃色オイルで塗装した栗がとても素敵です。

脚を立てる際の動画もあるのですが、編集してサイズを縮めないとアップできなかった・・・。またいずれ。

2.水槽カバー

滋賀県で知らない人のいない飛び出し坊やに琵琶湖のシルエットを背景パネルにした水槽カバーを作ったHさんです。上下の桟にはきれいなタイルも埋め込まれています。水を入れた水槽を置くとご覧の通り。

3.看板ふたつ

知り合いの方から依頼を受けて看板をつくられたベテランKさんの作品です。女性らしい実に丁寧な作りで、依頼者からとても喜んでもらえたそうです。木の色と白く塗装した文字が実に上品な仕上がり。これらの文字を彫刻刀で掘り込むだけでも随分時間が掛かりましたが、その甲斐がありました。

4.スマホ・タブレットスタンド

こちらもHさんの作品。お使いのスマホやタブレット端末、それにリモコンなども並べて置けるように工夫されています。

5.座卓

ブナ材を使った大きめのご自宅用座卓です。脚はボルトで取り外しが効きますので使わない時には分解して片付けられます。耳付きで野性味も感じる色調のブナの仕上げで落ち着いた雰囲気を醸し出しています。幅広材でやや反りのある板だったので天板を平らにする際に厚さを残すため普段見えない天板裏には多少平らでない部分を残すなどして工夫されています。

3人とも3月に入って新作に取組中です。完成をお楽しみに。

 

今年も残りわずか

今年もあと数時間でおしまい。28日が工房の仕事納めで最後の納品は、今月分のボールペン50本。これで延べ250本の納品となった。もうあと少しだぞ。

本年最後の仕事は、機械整備と工房掃除。木工機械の摺動部全部(多分?)に注油し、定盤にも油をぬる。最後に自動鉋盤のベアリングが浸っているオイルバスの潤滑油入れ替え。最後に床掃除をして工房を引き上げたのでありました。

29日からは、自宅の年末仕事が待っている。毎度のことながら元旦配達が間に合いそうにもない年賀状印刷、庭木の剪定に落ち葉の清掃、風呂場の大掃除(因みに最近の風呂場清掃用の薬剤凄い進歩、カビキラーとこれを使い分ければ石鹸カスからカビ黒ずみまですっかりキレイ)、網戸やサッシの掃除、とバタバタしているうちに、今年も残り6時間足らずでR。

お世話になった皆様、今年もいろいろと有難うございました。それなりに元気にこの一年を過ごせたことを感謝せねばなりません。来年も皆様にとっていい年となりますことを祈念しつつ、今年最後のブログといたします。有難うございました。

木工教室から

木工教室から今年最後の作品ご紹介。

まず、Kさんの作品2点。両方同じ程度の大きさのスツールですが、ひとつは肘掛け無しで座面が開閉式になっていて座面を持ち上げるとこのような収納スペースが現れます。

もうひとつは、肘掛け付きで座面は固定ながらやはり座面下に収納スペースがあり、前面から出し入れ可能です。細部にわたって非常に丁寧な作りで女性らしい細やかさと大胆さを兼ね備えたステキなスツールです。

肘掛け部分には、特徴のある木材部位を利用して個性的です。丁寧にサンディングしてあるのでヒビ割れの部分も指にやさしいのです。

一方、こちらは木工教室歴1年になるHさんのコーナー棚。ホゾとホゾ穴加工をものにして、キレイに組み上げられました。フローリング材を利用した棚板は、これまた初めてのダボを使った固定で木ねじ類は一切利用していません。ご自宅のテラス・コーナーにピッタリと合っていい雰囲気です。

この12月になぜかほぼ同時に3名の方から教室への申し込みがあり、年明けから木工をスタートされます。春ごろには、基本を身に付けて、ひとりひとり個性あふれる家具の製作を始められるようになるかと思います。その階段を一緒に上がっていけるのは、工房にとって大変光栄なことです。

アンプ・クレードル

去年の春ごろに野洲市でギターアンプの製作や修理をされているGamps 徳田さんの依頼でアンプ・クレードルの製作をしたのですが(Gamps のクレードルに関するブログ記事はここ)、そのブログを見た大阪の印刷屋さんから同じクレードルの注文をいただきました。これを何とか年内に完成し先日納品しました。

久しぶりに作ることになり、木工部分の図面は無論残っているのですが、細かな金具の選定など、どうしようかと考えているころにタイミングよく工房に徳田さんがやってきました。スピーカボックスを工房の一日教室で自作したい、ということでそのついでに以前納品したクレードルを持ってきてくれたのです。

前回、山桜を使いましたが、今回は白い木肌が硬くてきれいなブナ材を使います。という事で製作開始。

荒材を切って鉋掛けをして所定の長さに切ったり、溝を掘ったり。思いのほか細かなパーツがあるので、家具とは少し違った要素もあります。で、出来上がった塗装前のクレードルとお借りしたものを並べてみました。

桜材は、年数と共に木の色が濃くなって行くので製作直後と比べると大分貫禄が出てきています。まだ塗装前の新しい方はなんだか嫁入り前の白無垢の花嫁さんのように見えなくもない(私だけ?)。

塗装後、うっかり写真を撮り忘れてしまったので納品後に依頼主に写真を撮って送ってもらいました(Oさん、お手数かけて申し訳ありません)。畳の上に溶け込むように落ち着いた雰囲気の、オイル塗装後の完成姿です。これからこの台の上でどんなアンプが置かれるのか想像すると嬉しくなりますね。

この印刷屋さんでは、昔の活版印刷機の修理・復元もされているそうで、操作レバーに使う取っ手の注文もいただきました。完成後、こんな感じで重厚な鉄製のレバーに組み込まれて使われるようです。硬くて頑丈なオーク製なのでこの先何十年ももつことでしょう。

(アンプ・クレイドル)

太鼓台のお題②

この太鼓台で太鼓の位置を10cm高い位置で打てるようにして欲しい、というのがプロ和太鼓奏者・大橋さんから与えられたお題②である。ずっと高くなりっ放しはダメで、必要に応じて元の高さと10cm高くするのを両立させるべし、という条件もある。

脚を延長するとか、太鼓を乗せる板の高さを増やす、とか考えてみたが、脚が上すぼみに傾いていることや脚の延長の付け外しというのは、難しそうなので素直に10cm高く出来るようなキャスター付きの台を作ることに決定した。

最初は、四角い固定枠で出来た台を考えたのだが、この櫓太鼓台自体は、クサビを抜くと全部材がバラバラに分解出来てコンパクトに収納できる構造になっている。台だけがかさばることはいかにもマズい。という事で同様にクサビ式の分解できる台を作ることで最終決定となった。ということで、製作後の塗装前の台がこれである。こんな感じで4つの部材とクサビが4本。

これを太鼓台に近い色に塗装して完成した後、上に櫓太鼓を台ごと乗せた姿がこれである。大橋さんに写真をいただいた。

彼のfacebook に演奏中の写真があったのでコピーさせてもらったのが下の写真。カッコいいなあ。無論、台がじゃなくて演奏の雄姿ですよ。今回の台の塗装色が、櫓台とちょっと合ってないのに気付いて悲しい。

更に次の太鼓台のお題が、待っている。目下思案中。来年2月には演奏会があるとのこと、それまでに納品して、聴きに行かねば。

太鼓台の改造

いろいろな太鼓台の製作や修理・改造で工房開設以来贔屓にしてもらっているプロ太鼓奏者のOさんからの今回のお題は、平戸太鼓櫓台の改造である。その巨大な太鼓台がこれ。

台の前後の四角の部分(2本の脚、太鼓を支える上部の板と脚の下の方を連結する貫が一体構造)を4本の抜き差しできる棒材を通してクサビで固定すると丈夫なやぐら台となる。上の写真は、クサビの代わりにクランプで仮固定している状態。

ところがこの四角の部材が巨大で重く、おまけにキャスターもやたら大きくて重いので運搬の際に不便な上にワゴン車のスペースを食いすぎるという事で改造の依頼を受けたのである。全部の部材が(脚とか太鼓を受ける板とか)バラバラに分解できるようにしてほしいとのこと。無理難題ほど嬉しいという変態工房主の出番である。という事でこんな改造図面をいつものSketchup3Dソフトで書いてみた。

茶色く塗った部分が改造後の追加パーツである。で、さっそく分解開始。元の部材同士は接着剤やほぞでがっちり接続した上さらに木ねじで固定されて、まず木ねじを取り外し、接着部分を手鋸でキコキコと切り離す訳である。久しぶりの手鋸、こういう時は他に代わるものがない貴重な手道具である。で、何とか分解終了。切り離した脚の写真は撮り忘れてる。

分解が終われば、切断面を少しきれいにした上で、脚に通しのホゾ穴をあけて、あらたに貫を4本作り、クサビ穴もあけて、合わせてクサビも8個製作。で、取りあえず組み立てたのがこれである。工房主、満足げにニタつく、の一瞬である。

あとは、塗装をしてもう少し軽くて小型のキャスターと取り換えれば一丁上がり、のはずだがいつものように濃色塗装が関門である。家具のオイル塗装は、塗膜を形成しないので塗りむらも発生せずきれいに仕上がるのだが、ウレタンニスのような厚い塗膜を板の上に残す塗装は、塗りむらや色むらが出て何十倍も難しい。今回、初挑戦すべしとスプレーガンも購入したのだが、部分的な塗装にスプレーガンは向いていないので結局使わずじまい。

というわけで完成した雄姿がこれである。ぱっと見、何も違いが分からないと思いますが、実はバラバラになるんです。バラバラにした台は、車の隙間にも積み込み可能となり大層満足頂けた。

白状すると、新たに作った左右をつなぐ4本の貫の色がまだ浅くて(3回塗り重ねたがまだ足りない)、追加塗装をさせてもらう予定である(練習で使うからというので途中で渡したもので、と言い訳)。写真を拡大すると分解時の切断箇所の塗りむらがバレるので小さいままで見てね。

誰か、濃いウレタンニスの上手な塗り方や色合わせのテクを教えて。家具にウレタンニスを塗ることは絶対ないけど、修理ではせざるを得ないのです。

 

ボールペン量産中

前にも書いたボールペンの大量受注。毎月50本づつ分納させてもらっているのだが、11月分の納品を今週ようやく終え、梱包前に全部を並べて写真を撮ってみた。

乾燥した染井吉野の板を棒状の角材に加工した後、中心部にドリルで穴をあけて、7mm径の真鍮チューブをその穴に通して接着し、両端面を直角にトリミングしてようやく旋盤に掛けることが出来るのである。

木工で全く同じものをこのように継続してたくさん作るのは、初経験である。繰り返して作っているので目を閉じてでも作れるようになるだろうと以前書いたので試しにやってみたが、粗削りはともかく、当然ながら仕上げられるわけはなかった。

ようやく今月で半分以上の納品を終えたことになる。来春、桜の季節に落成記念の式典でこのペンもお披露目と聞いている。一気に当工房の木製品ユーザーが300人以上増えるのかと思うと気も引き締まる、というものである。

 

Winds 太平・椅子修理

はたまた、飛騨高山の今はなきWinds 太平製の椅子修理を依頼された。今回は、兵庫県の方がネット検索で工房のホームページを見つけられたようで、そこからのスタートである。初めてこの会社の椅子修理をしたのは、工房近くの知人に依頼された時なのだが、その際の修理顛末をネットに書いたので、それ以来この会社の椅子修理が何件か続いている。ネット時代なればこその出来事ではある。

家財宅急便で到着した椅子の破損状況。2脚依頼されたのだが、ひどい方は、このように座板が割れ(接着箇所のはがれ)、背中の丸棒が一ヶ所折れてしまい、接着箇所のあちこちで接着が外れてしまっている。全ての接着がダメになっているわけではなく、半分ほどは、しっかりしているので当時の接着の徹底方法に課題があったに違いない。

という事で、まずは椅子を分解する。ゴムハンマーで叩くと接着が切れているところは容易にバラバラになる。驚かされたのは、下の写真のように左右両端の丸棒が背板とつながった部分とその下でふたつの部材を木ねじで繋いだ構造だったこと。製造上は、作業効率がいいかも知れないけど強度的にこんな設計はイカンでしょ、と言いたい。

折れた背中の丸棒をいつものように旋盤で同じ形に削り出し、座板は切断面に鉋を掛けた後ビスケットを入れて再接着する。

後は、元の塗装に近い塗装になるようにウレタンニスを何度も重ね塗りをすれば、またこれから長く使える状態に戻る訳である。

で、これが修理完了時の姿。右側の椅子の上に立てているのは恒例となりつつある(僅か2回目に過ぎないが)折れた部材を使った孫の手である。ご両親が入手されたという思い入れのある家具なので、不要となった材も捨てずに生まれ変わってもらうわけである。

完成後、依頼主が芦屋から車で近江八幡まで引き取りに来ていただいたのでそのご夫妻にお会いでき直接話す機会が持てたのも大変に嬉しい事であった。ご夫妻には近江八幡の観光ポイントを幾つか事前に伝えておいたので、帰途、立ち寄って帰られたのでありました。

実は、引き取りの際に大きな丸座卓を入れ替えで預かった。脚を支える部材が破損して使えなくなっているのだが、製造メーカーから修理を断られたとのこと。そう言われたら断る訳にはいかない。と、勢いで引き受けてしまった。はてさてどうなるか?