カテゴリー別アーカイブ: 製作記

太鼓台のお題②

この太鼓台で太鼓の位置を10cm高い位置で打てるようにして欲しい、というのがプロ和太鼓奏者・大橋さんから与えられたお題②である。ずっと高くなりっ放しはダメで、必要に応じて元の高さと10cm高くするのを両立させるべし、という条件もある。

脚を延長するとか、太鼓を乗せる板の高さを増やす、とか考えてみたが、脚が上すぼみに傾いていることや脚の延長の付け外しというのは、難しそうなので素直に10cm高く出来るようなキャスター付きの台を作ることに決定した。

最初は、四角い固定枠で出来た台を考えたのだが、この櫓太鼓台自体は、クサビを抜くと全部材がバラバラに分解出来てコンパクトに収納できる構造になっている。台だけがかさばることはいかにもマズい。という事で同様にクサビ式の分解できる台を作ることで最終決定となった。ということで、製作後の塗装前の台がこれである。こんな感じで4つの部材とクサビが4本。

これを太鼓台に近い色に塗装して完成した後、上に櫓太鼓を台ごと乗せた姿がこれである。大橋さんに写真をいただいた。

彼のfacebook に演奏中の写真があったのでコピーさせてもらったのが下の写真。カッコいいなあ。無論、台がじゃなくて演奏の雄姿ですよ。今回の台の塗装色が、櫓台とちょっと合ってないのに気付いて悲しい。

更に次の太鼓台のお題が、待っている。目下思案中。来年2月には演奏会があるとのこと、それまでに納品して、聴きに行かねば。

太鼓台の改造

いろいろな太鼓台の製作や修理・改造で工房開設以来贔屓にしてもらっているプロ太鼓奏者のOさんからの今回のお題は、平戸太鼓櫓台の改造である。その巨大な太鼓台がこれ。

台の前後の四角の部分(2本の脚、太鼓を支える上部の板と脚の下の方を連結する貫が一体構造)を4本の抜き差しできる棒材を通してクサビで固定すると丈夫なやぐら台となる。上の写真は、クサビの代わりにクランプで仮固定している状態。

ところがこの四角の部材が巨大で重く、おまけにキャスターもやたら大きくて重いので運搬の際に不便な上にワゴン車のスペースを食いすぎるという事で改造の依頼を受けたのである。全部の部材が(脚とか太鼓を受ける板とか)バラバラに分解できるようにしてほしいとのこと。無理難題ほど嬉しいという変態工房主の出番である。という事でこんな改造図面をいつものSketchup3Dソフトで書いてみた。

茶色く塗った部分が改造後の追加パーツである。で、さっそく分解開始。元の部材同士は接着剤やほぞでがっちり接続した上さらに木ねじで固定されて、まず木ねじを取り外し、接着部分を手鋸でキコキコと切り離す訳である。久しぶりの手鋸、こういう時は他に代わるものがない貴重な手道具である。で、何とか分解終了。切り離した脚の写真は撮り忘れてる。

分解が終われば、切断面を少しきれいにした上で、脚に通しのホゾ穴をあけて、あらたに貫を4本作り、クサビ穴もあけて、合わせてクサビも8個製作。で、取りあえず組み立てたのがこれである。工房主、満足げにニタつく、の一瞬である。

あとは、塗装をしてもう少し軽くて小型のキャスターと取り換えれば一丁上がり、のはずだがいつものように濃色塗装が関門である。家具のオイル塗装は、塗膜を形成しないので塗りむらも発生せずきれいに仕上がるのだが、ウレタンニスのような厚い塗膜を板の上に残す塗装は、塗りむらや色むらが出て何十倍も難しい。今回、初挑戦すべしとスプレーガンも購入したのだが、部分的な塗装にスプレーガンは向いていないので結局使わずじまい。

というわけで完成した雄姿がこれである。ぱっと見、何も違いが分からないと思いますが、実はバラバラになるんです。バラバラにした台は、車の隙間にも積み込み可能となり大層満足頂けた。

白状すると、新たに作った左右をつなぐ4本の貫の色がまだ浅くて(3回塗り重ねたがまだ足りない)、追加塗装をさせてもらう予定である(練習で使うからというので途中で渡したもので、と言い訳)。写真を拡大すると分解時の切断箇所の塗りむらがバレるので小さいままで見てね。

誰か、濃いウレタンニスの上手な塗り方や色合わせのテクを教えて。家具にウレタンニスを塗ることは絶対ないけど、修理ではせざるを得ないのです。

 

ボールペン量産中

前にも書いたボールペンの大量受注。毎月50本づつ分納させてもらっているのだが、11月分の納品を今週ようやく終え、梱包前に全部を並べて写真を撮ってみた。

乾燥した染井吉野の板を棒状の角材に加工した後、中心部にドリルで穴をあけて、7mm径の真鍮チューブをその穴に通して接着し、両端面を直角にトリミングしてようやく旋盤に掛けることが出来るのである。

木工で全く同じものをこのように継続してたくさん作るのは、初経験である。繰り返して作っているので目を閉じてでも作れるようになるだろうと以前書いたので試しにやってみたが、粗削りはともかく、当然ながら仕上げられるわけはなかった。

ようやく今月で半分以上の納品を終えたことになる。来春、桜の季節に落成記念の式典でこのペンもお披露目と聞いている。一気に当工房の木製品ユーザーが300人以上増えるのかと思うと気も引き締まる、というものである。

 

Winds 太平・椅子修理

はたまた、飛騨高山の今はなきWinds 太平製の椅子修理を依頼された。今回は、兵庫県の方がネット検索で工房のホームページを見つけられたようで、そこからのスタートである。初めてこの会社の椅子修理をしたのは、工房近くの知人に依頼された時なのだが、その際の修理顛末をネットに書いたので、それ以来この会社の椅子修理が何件か続いている。ネット時代なればこその出来事ではある。

家財宅急便で到着した椅子の破損状況。2脚依頼されたのだが、ひどい方は、このように座板が割れ(接着箇所のはがれ)、背中の丸棒が一ヶ所折れてしまい、接着箇所のあちこちで接着が外れてしまっている。全ての接着がダメになっているわけではなく、半分ほどは、しっかりしているので当時の接着の徹底方法に課題があったに違いない。

という事で、まずは椅子を分解する。ゴムハンマーで叩くと接着が切れているところは容易にバラバラになる。驚かされたのは、下の写真のように左右両端の丸棒が背板とつながった部分とその下でふたつの部材を木ねじで繋いだ構造だったこと。製造上は、作業効率がいいかも知れないけど強度的にこんな設計はイカンでしょ、と言いたい。

折れた背中の丸棒をいつものように旋盤で同じ形に削り出し、座板は切断面に鉋を掛けた後ビスケットを入れて再接着する。

後は、元の塗装に近い塗装になるようにウレタンニスを何度も重ね塗りをすれば、またこれから長く使える状態に戻る訳である。

で、これが修理完了時の姿。右側の椅子の上に立てているのは恒例となりつつある(僅か2回目に過ぎないが)折れた部材を使った孫の手である。ご両親が入手されたという思い入れのある家具なので、不要となった材も捨てずに生まれ変わってもらうわけである。

完成後、依頼主が芦屋から車で近江八幡まで引き取りに来ていただいたのでそのご夫妻にお会いでき直接話す機会が持てたのも大変に嬉しい事であった。ご夫妻には近江八幡の観光ポイントを幾つか事前に伝えておいたので、帰途、立ち寄って帰られたのでありました。

実は、引き取りの際に大きな丸座卓を入れ替えで預かった。脚を支える部材が破損して使えなくなっているのだが、製造メーカーから修理を断られたとのこと。そう言われたら断る訳にはいかない。と、勢いで引き受けてしまった。はてさてどうなるか?

 

 

 

 

漆塗り初挑戦

漆塗りに初チャレンジしてみた。市内の漆工芸家・藤井氏の数々の素晴らしい漆の器などを見せてもらっているうちにやってみたくなり、生漆を少し分けてもらったのである。木工関連書籍を次々と出版されている西川栄明氏が共同執筆された「漆塗りの技法書」も初版発行の2年前から手元に置いてある。機は熟した(?)のである。

5年前、飛騨高山の職業訓練校で木工家具の授業を受けていた時に一度だけ漆塗りの授業があり、手彫りの木の器やヒノキのおはしに拭き漆をひと塗りだけやったことがあるのだが、それ以来である。漆塗りの刷毛やらヘラだの拭きに使う和紙とか菜種油に陶器の皿(漆のパレットとでもいえばいいのかな)などをテキトーに買い集めて遂に開始となった。

ということでいろいろ作って塗ってみた。これは、一輪挿し。ブラックチェリーの端材を木工旋盤に掛けて、思いつくまま何個か一輪挿しらしきものを削り出したうえで生漆を3~4回塗って拭き漆塗装をしてみた。一回塗るごとに湿度を高く保持できるようプラケースに一昼夜置いて乾燥させてから塗り重ねた。右奥のドライフラワーを挿しているのは、比較用に漆でなくウレタン系の透明塗装をしたもの。

これは、太めのヒノキ棒を刃物でテキトーに割った上で上下にカットして中を掘り箱状に加工したものに漆を掛けてみたもの。ヒノキ棒を何個か割ってみて一番面白い割れ方をしたのがこれ。

蓋を外すとこうなっている。

ボールペンでも初めて漆塗りバージョンを作ってみた。いつも作っているペンは透明なワックス塗装で木目が若干の濡れ色になる程度でほぼ元の木の質感が残るのだが、拭き漆で塗り重ねると濃い漆色に染まるので、材料の木目は残るが、元の木材の色彩としては差が小さくなってはしまう。取りあえず、クラシック感の強い桑を選んで数本ペン用に削り出し表面を滑らかに仕上げた上で拭き漆をしてみた。完成後にゴールド、クローム、ガンメタル色のペンキットで組んでみたのがこれである。

一番上は、通常の透明ワックス仕上げのもの。上から2本目のは、生地固めとして砥の粉で桑の導管を埋めてみたのだが、桑のような道管の多い木材だと色が濃くなりすぎて木目が見えづらくなる。人により好き嫌いがあるかも知れないが、生地固めなしで多少明るい目の塗装の方が好きではある。

これらの漆を塗った木工小物、今週金曜からスタートする匠の祭で披露して、やって来る方の感想を聞いてみるのも楽しみである。13日のイイネタマルシェにも持って行ったのだが、ずっと「ボールペンを作ろう」コーナーに掛かり切りでそういう会話をする時間が全く持てなかったのである。

家具に拭き漆を施すのも興味はあるが、面積・体積の大きな家具は、漆を塗ると些か重くて暗い印象になるので、明るい洋室にはいまひとつフィットしないような気もする。とはいえ、今後もいろいろチャレンジしてみたい。実は、黒漆だの銀箔だの箔押し用の漆だのついつい合わせて入手してしまったので、当分遊べそう。漆かぶれだけは御免こうむりたいのだが、さてどうなりますか。

 

 

 

神戸で「我谷盆を作ろう」

竹中大工道具館でひらかれた「我谷盆を作ろう」ワークショップ(10月4日開催)に参加して来た。我谷盆(=わがたぼん)というのは未乾燥の栗の木の一枚板を掘り込んだ素朴で味のあるお盆で、今はダムの水底となってしまった石川県の我谷(こちらはわがたに)でかつて盛んに作られていたらしい。

これを木工家の森口信一さんが長年かけて復興し、その作り方を広く普及しようと努力されている。そのご本人を講師として招いて同館でひらかれたイベントである。参加総勢12名、幸い抽選に当たってその一人として参加することが出来た。

SNSでの拡散や宣伝、大いに結構という事だったので、写真を貼っておきます。こうやってステップごとに作り方の実演があり、それを見習って受講生がそれぞれ作業台で進めていくわけです。

受講生の約半数は(私も含めてだけど)年配男性ではあるのだが、私と同じテーブルの6名のうち女性3名、若い男性2名であった。最近木工界にも木工女子勢力が着実に増えている、どこぞの内閣とは大違いではある。

このブログを読んでくれる奇特な方の中に自分でもやってみたいと興味を持たれる方は僅少だとは思うが、そういう方のためもう少し詳しく製作過程を記録されているホームページを見つけたのでそのリンクをここに貼っておきます。やはり森口さんが講師で2017年に開催されたワークショップのようなので殆ど今回と重なるかと思います。因みに岐阜の森林文化アカデミーで昨年開催されたときの記録のようです。

という訳でワークショップの内容はそちらを参照してもらうことにして、私の作ったお盆がこちら。森口さん特製の栗のアク汁で調合された塗装液を塗って仕上げている。

  製作途中

 完成後

長辺の片側に栗材をクサビで割った際の割れ面が残っていて、このカーブが面白くそのまま残したので、そこだけは平のみではうまく対応できず少し苦労。あと四隅は、掘り込んでいく際に最初に丸のみで木目を断ち切る必要があるのだが、そこを強く打ちすぎて丸い傷跡が四隅とも残ってしまった、残念。

まあ一回目のチャレンジとしては良しとしたい。栗の木は、工房に沢山転がっているので、材料としては幾らでもあるのだが、家具用の材は乾燥済みで生木と違ってすっかり硬くなっているので掘るのは困難と聞いた。でもまあ、今度再チャレンジしてみたい。

私の作る木工品や家具は、どれもこれも直線と平面がメインで多少は円弧の部分もあるのだが、基本数式で表現できるようなものばかりである。何しろ根が理系出身者なものでついそうなってしまう。数年前から付き合いのある近所に住む漆工芸家の藤井氏には、そんなまっすぐなものばかり作って何が面白いの、としょっちゅう皮肉を言われている。彼の作品には、一切直線も平面も登場しないのである。芸術品と実用品は違う、とか言って反論したりもするのだが、最近少しづつこういう自然な線のものに惹かれ始めているのを白状しておきたい。

因みに新神戸駅から徒歩数分のところにあるこの竹中大工道具館、私のお気に入りの博物館で、これまでにも講演会や鉋の研ぎ教室など何度も行っている。木工や刃物好きにおすすめの場所である。以前のブログをさがせば、その際のが幾つかあるはず。

手づくりボールペン

工房開設以来最大規模の受注となったのが 、ソメイヨシノのボールペンづくり。総数300本以上という工房にとってはとんでもない数である。いくら何でもひと月やそこらでは作り切れないので、話を聞いたとき一瞬悩んだのだが納期を半年ほど頂けると聞き、有難くお受けした次第である。

事業拡張で事業所の桜を切らねばならなくなり、それを使って何か記念品を関係者に配りたいという事から話がスタートしたと聞いている。何種類かのペンの試作品を提出して、ついに先月正式注文となったのである。

という事で切った桜の木を板状に製材した後、充分乾燥するのを1年近く待って、ようやく届いた材がこれである。表裏鉋掛けをした後、棒状にカットして木取り完了。

更に穴をあけて真鍮パイプを接着すれば、ようやく旋盤に掛けられる。角棒を丸く削って、次にペン状にカーブを付けて仕上げていく。同じ樹種で連続してこんなに沢山のペンを作るのは、もちろん初経験。いやでも刃物遣いがうまくなっていく(ような気がする)。

という訳で、この作業延々と年明けまで続くはず。最後の頃には目を閉じても出来るようになっていることだろう、なんてことはないか?

 

椅子張替え

先月の椅子の張替え。何十年か使って来られたというカリモクの食卓椅子の座面生地が傷んでパックリ裂けている。座板に厚いウレタンをかぶせた上を箱状に縫った合皮が被せてある。背板には、写真のようなボタンが7個取り付けてあり、座面同様に周囲を棒状に縫った飾り合皮で取り囲んでいる。本体は、まだまだしっかりしているので張り替えれば、この先も長く使える。

さて、どう修復したものかと悩んだ結果、了解を得て箱状の縫い付けは止めて(工房にミシンも無いし)通常の張り方(平らな生地の張り付け)に変更し、ボタンも無くした。で、新旧並べたのがこれ。

ちょっとクラッシック感が薄まって、いい感じではないか。とは言え、背板の周辺のチューブ状の飾りをなくしたので一脚目の椅子では、背中の木部のくり抜き部分とはめ込んだ合皮を張った背板部分に少し隙間が空いてカッコ悪かった。隙間をなくすために背中部分の芯の板を各辺2ミリづつほど大きく作り直して、この隙間をなくすことにした。スポンジ類も大分ヘタっているので新しいウレタンチップとウレタンスポンジに交換して座り心地も改善。

という訳で、全部で5脚の椅子の張替え完了。元は、ワインレッド色のみだったが、張替え後はベージュ、ライトピンク、ワインレッドの3色に変更し、すっかり明るい印象となった。

一度に全ての椅子を預かる訳に行かないので、5脚が並んだ写真はないのが少し残念ではある。

木工品量産?

偶然にも数多く作る(かも知れない)木工お題が重なっている。

ひとつ目は、ボールペン。話によると会社敷地に植えられていたソメイヨシノの木を伐採して建物を建てることになった会社があり、その桜の木を使ってお客様や関係者に記念品として配布できる品を、との依頼が木材会社に舞い込み、知人の木工家を経てボールペンを作っている私のところに話がやって来た。もしかしたらボールペン200本ぐらい、とか。5本、10本なら何の問題もないが、200本となると朝から晩まで長期間必死にやらないと間に合わない。その間他のことが出来ないので、それは些か荷が重いとためらったのだが、納期は長く取って構わないとのことで、お受けすることにして(まだ最終決定ではない)、まずは試作品を作ることになった。最初、話があったのは昨年なのだが、切った桜の木が乾燥するまで数カ月待つことに。製材した薄板をしばらくストーブ側で乾燥させたという激しく反った板が今月になってやって来た。早速、切って鉋掛けをしてボールペン用に小さな木の棒にしたが、まだ少し湿気を感じたので工房でしばらく乾燥。ソメイヨシノは、初経験の桜だが(家具用に山桜やブラックチェリーはよく使われる)きめ細やかな上品な木で桜の花とどこか通じる印象を受ける。中心部にはこのような茶色のシマ模様があり、辺材はこのように明るい白色である。

ここから心材、辺材、その境目あたりの材を使って3タイプ5本の見本を完成させ昨日郵送した。なかなか上品な仕上がりで気に入った。少し木の模様がついた心材の方がどちらかと言えば面白みがあるかも。この先、どういう展開になるのかな。

 

もう一つは、こちら。知人の依頼で限られた予算で200個のイベント用の小さな木工土産との話からスタートした。色々と会話した結果鍋敷きに決定。材料の木の棒を準備するのを引き受けた。これらに穴をあけてダボで接合して完成させる工程は、大勢でワイワイやりながら作ってもらうことになっている。千個近いダボは、物干しざお用のシュリンクチューブで数多くの丸棒をまとめて締め付けてカットするという素晴らしいアイディアでYさんが一気に完成済みである。

5種類の木で約800個余りのパーツが出来上がった。最終的には下のような形の鍋敷きとなる予定。「井」の字型鍋敷きより作る手間が少なそうなのでこちらに決定。来月中旬には、10名ほどで一日で組み立てることになっている。

椅子解体修理

壊れた椅子の修理を依頼された。今回もウィンザーチェアに分類されるタイプの木製椅子。飛騨高山のメーカーのもので購入後40年以上経っているとのこと。さすがに40年以上も経つと接着剤の効きが衰え、座板も接着が駄目になり二ヶ所でパックリ割れているほか、背中を支える丸棒が座板にささっている部分ややはり脚のほぞ部分で何カ所もの接着が外れてかなりお疲れの状態である。肘掛けの塗装も40年間の使用で半ば剥がれ落ちている。

ブナ材が使われているようだが、木自体は非常にしっかりしたいい材で接着さえやり直せば、まだまだ使えそうである。最初のハードルは、椅子の分解である。10年や20年しか経っていない椅子だと接着剤がまだまだ強固に効いていて、全部を分解できないこともあるが、今回はゴムハンマーで叩いて写真のようにバラバラにすることが出来た。

文字通り、バラバラになった。接着剤がすっかり劣化してしまったようで、接着部で木が割れたりすることもなく接着箇所だけがきれいに外れている。ここまできれいにバラバラに出来ると有り難いというものではある。

最初に座板を再接着。元はいわゆるイモ接ぎという接着剤だけで貼り合わせてあるたのだが、接着強度の向上も狙ってビスケットを使って接着し直した。薄皮一枚分の鉋を掛けて新しい木材面を出すとともに平面を出し直して接着するわけである。

座板はこうやって接着し直すのだが、元の木が不均一に収縮していたり、接着箇所に若干の段差が出て、塗装も一部取れてしまうので、座板のカーブにそってサンディングして塗装も全て削り落とした。裏面もついでに平らに鉋掛け。

肘掛け部分の塗装も削り落として、あとは背板部分と脚部分を順番にエポキシ接着剤で組み立て直せば、組み立て完成となる。座板と肘掛け部分が真っ白な無垢の木状態になっているので、再塗装せねばならない。

このような部分的な塗装は、非常に悩ましい。色も合わさねばならないし、丸ごとのスプレー塗装も出来ない。というわけで刷毛を使って2種類の塗料を3度重ね塗りして何とか元に近い色に近づけてみた。

工房で作る家具の塗装は全てオイル塗装で、木の内部にオイルを刷り込むイメージなので塗りむらは発生しないのだが、今回のような濃色のウレタンニスでは木の表面に塗料の層を残さないといけないのでなかなかに難しい。刷毛を一気に木の端から端まで塗れればいいのだが、座板の奥は丸棒が邪魔をするのでどうしても塗り継ぎが必要となり、刷毛むらが見えてしまう。このあたり、更なる勉強が必要と感じる。

ともあれ、これでまたこの先何十年かは使い続けてもらえるであろう。