カテゴリー別アーカイブ: 製作記

太鼓台完成・納品完了

長太鼓用のオリジナル太鼓台がようやく完成して本日納品完了した。演奏に適した鼓面の高さと二通りの角度に変更出来るように、との注文に応じて知恵を絞り、希望に沿った(と思う)台が完成した。 角度調整の機構をボルトを使ったものにしようか、蝶番(ちょうつがい)式にしようか、とかいろいろとデザインを書いてみたが、工具なしで変更できる単純な方式に落ち着いた。 いつものプロ和太鼓奏者さんからの依頼ではあるが、実際の注文主は八幡の某有名和菓子屋さんである(詳細は少し先に了解をもらってから書きたい)。

和太鼓を載せる台なので、今回も栗の木を濃色オイルで仕上げ、さらに和風テーストを強調するため荒いアラレ組のほぞにしてほぞ先を5mmほど出っ張るデザインにしてみた。曲線で構成される太鼓を乗せ、しかも角度を変えた際にも収まり具合に問題が出ないかどうかの確認は、毎回使っている3Dデザインソフトあればこそである。傾けた太鼓を受ける板部分にはカーブを掘って太鼓の胴を受けるように加工したが、この部分のカーブなどこのデザインツールのお陰で容易に割り出すことが出来る。とは言え、台の完成は実際の太鼓(欅をくり抜いた最高級太鼓)が注文主に届いたのと同時だったので初めて太鼓を乗せる際はいささか緊張した。皮を張る際の引っ張り部分が予想外に大きく出っ張っていてドキリとしたが、ほぼドンピシャ・サイズで胸をなで下ろした。

IMG_4251 フェルトを貼り、キャスターを取り付け完成

IMG_4244 太鼓胴を受ける曲線はミニ四方鉋でコリコリと

文字塗りつぶし 実際に乗せて確認作業(完成前)

想定していた手間の数倍掛かったが、製作者としては満足の仕上がり。また腕が上がった、に違いない。かな。

 

欅のダイニングテーブル

先日からケヤキのダイニングテーブルに挑戦中。 実はこのケヤキ、今から6年近く前に長さ2mほどの丸太を買い6cmほどの厚さの板に製材してもらったものを自宅の軒下で乾燥していたのである。 趣味で木工を楽しんでいたころの出来心、というやつである。その頃の写真がこれ。

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譲ってもらった方に当時(2010年4月)送ってもらった写真である。こうやって苦労して軽トラに乗せたとその時のメールに書いてある。モザイクを掛けるソフトがないのでいい加減な白抜きの顔にしてしまいすみません。

現地で製材して滋賀まで送ってもらい、我が家の駐車場で割れ防止のカスガイ(鎹という漢字を当時初めて知った)を打ち込み、狭い軒下で5年以上放置して乾燥させた(つもり)。 いかにも風通しの悪そうな狭い軒下だが仕方ない、邪魔なことこの上なしである。

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このうちの2枚を昨年工房に持ち込んでいたのだが、ようやく今月になって手を付けたわけである。一枚板でそのまま食卓に出来るほどの幅はないので2枚を矧いで天板にするのだが何しろ重い。 そもそもケヤキは比重が大きいうえに体積もあるので計算すると多分1枚40kg程になる。元の板の幅は50-70cmほどあるので鉋盤に掛かる40cmほどに直線状にカットして2枚を貼り合わせることにした。切断面を左右に並べたいわゆるブックマッチと呼ぶ木目が左右対称形となる剝ぎ合わせである。

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これは、一枚を丸鋸でカットした後で鉋盤にかけて平らな状態にしてもう一枚の未加工の板と並んでいる時のもの。ケヤキは、非常に和風テーストの強い木なので間にウォルナットの板を挟み込んで少し洋風の味付けをすることにした。で、その張り合わせ中の写真がこれである。この状態で大きさおよそ180cm x 85cmの厚さ5cmほどである。 こうなるともう一人では作業台の上で裏表をひっくり返すのが関の山、台から降ろすことも出来ない。何カ所かテッポウムシ(多分)が食った跡の指先ほどの穴があるので別のケヤキを削って蓋をした。

ということで今はほぼ完成した天板を壁際に立て掛けた状態。これから依頼された別の家具に着手するので(材木がやっと今週手に入る予定)脚の製作はしばらく先の見込みである。注文があって作っているわけでなく、納期未定で自宅用となる見込み。

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朴のエンドテーブル

昨年から頼まれていた小ぶりのエンドテーブルが完成し、2月にようやく納品できた。いろいろな樹木がある中で朴の軽さを気に入ってもらい材は朴に決定。朴は、昔から彫刻板などによく使われる強いツートンカラーの材できわめて軽く、どんな向きからの切削にも強いという特徴ある。

天板サイズが30cmx40cm のコンパクトなテーブルで足元をソファーに差し入れたり安楽椅子の隣に置いたりと自由な移動を前提にした使い方を希望されてのご注文である。1月になって本体の製作が終わり、塗装色の希望を聞いたところ部屋に合わせて濃色のオイルを希望とのこと。 念のため端材を使って何色かのオイルを塗ってみたところ、クリアー色だと普通にきれいに塗装できるのだが、濃色オイルでは、激しい塗りムラが発生してしまうことが分かった。外周寄りの白っぽい部分が特にオイルの吸い込みに ムラが出て、見た目にもよろしくないと分かった。オイル仕上げにはOSMOオイルというヒマワリ油を主剤にしたものを使うことが多いが、濃色オイルを幾つか試したが全滅。過去使ったことのある別銘柄のオイルやウレタンスプレーとかステインとか濃色のものばかり幾つか試し塗りをしたがどれもいまいち。最後に下地に木工用プライマーを先にスプレーして木への吸い込みを抑えてから塗装することでようやくムラの目立たない塗装が出来た。 写真は納品後に依頼主のご自宅でのもの。落ち着いた部屋ともマッチしたようで気に入っていただけた。

木によって全く異なる塗装仕上がりという難しさを改めて知った次第である。

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謹賀新年

謹賀新年。

松の内が明けた頃に遅すぎでしょ、と叱られそうだが一応本年初投稿ということでお許しのほどを。正月前後も製作に明け暮れたうえ、自宅の大掃除やら元旦から息子家族達がやって来てあわただしく過ぎ去ったこの年末年始であった。

12月末に何とか仕上げたのは、何れもお孫さんへのプレゼント用の食卓椅子とお絵かきテーブル。食卓椅子は、以前自分の孫に作ったデザインを踏襲。背板にイニシャルを掘り込んだナラ材製で、依頼者の希望で濃色オイル仕上げ。小学入学ぐらいまでは、使えるかな。テーブルは、椅子と同じように傾斜させた脚を丸ほぞでパイン集成材の天板に留めて見た。何れも年明けにそれぞれのお孫さん宅へと旅立った。これらが初出荷となった。

幼児ハイチェア2  パインテーブル

一方、初完成家具となったのは、昨年購入したアフリカンチェリー材を使った小ぶりの2本足テーブル(約110cm x 60cm)。半年ほど作業机近くの壁に立てかけておいたものをテーブルに仕上げた。久しぶりに注文外の製作である。実は、近江八幡のおやじ連作品展が毎年市図書館で開催されるのだが、数カ月前のエントリー時点で適当にテーブルと書いて提出したのである。ところが上のふたつの家具に掛かり切りで、このテーブル製作開始は年末ぎりぎりとなってしまった。そんなわけで年明け3日からいきなり残業の連続で7日の搬入日朝にようやく仕上げ塗装して午後に運び込んだ次第である。アフリカンチェリー材は、天板分しかないので下半身は山桜にしてみた。天板は一見一枚板風だが、実際は2枚を中央で張り合わせている。まだら模様の杢が、個性的で非常に面白い。作品展が終わっても工房に置くには邪魔になりそうだし、自宅で使おうかなと密かに考えている。

ACテーブル

因みにおやじ連作品展の案内はがきも貼っておきます。お近くの方は是非どうぞ。あらゆる種類の創作品があります。風力発電機なんて言う凄いのもあります。

おやじ連作品展2016

太鼓台6セット納品完了

11月から製作を進めていた太鼓台6セットが本日完成して練習用にと早速嫁いでいった。同じものを6セットも作るのは、家具としては(家具と呼ぶとするなら)初めての経験。さすがに同じものをいくつも作るからには、知恵を絞って楽に作れるように工夫をするのだが、工夫する分時間を食ってトータルでは結局のところあなり効果がないということが分かった。とはいえ、同じことを6回繰り返すと後ほどスピーディーにはなる。塗装なんぞ、6台目では1台目の半分程度である。 塗装が乾くのを待って、X字型の台の開き具合を調整する綿ロープを通して焼き印をほどこせば晴れて完成である。今回初めて使ってみた栗の木だが、濃色オイルで木目が引き立ち素朴ながら味わい深く、一人悦に入ったのでありました。

この台を今夜の練習から使い始めて年明けの1月23日近江八幡文化会館での和太鼓教室発表会でデビューの予定と聞いている。もちろんチケットも購入済み。保育園児から小中高生、成人に至るいくつものグループや、知る人ぞ知る八中太鼓(八幡中学校)の演奏が聴ける。聴衆のなかで私ひとりだけ目線が台に向かうのでありましょうか?  頑張って支えろよ、と。

IMG_5209 ウーン、壮観

IMG_5206  焼き印も押させていただきました。

太鼓台製作中

市内のプロ和太鼓奏者Oさんからの依頼で大太鼓用のX字型の太鼓台を製作中。持ち運び時は折り畳み、使うときに広げて上部に太鼓を水平に載せ、時には両側から二人で叩くというものである。見せてもらった見本の台を参考に寸法やデザインは少し変更して見た目と安定感を改善し、キャスターも追加。楢や桜より幾分軽い栗材を用いて、最初の1セット目がほぼ完成したので、今日現物を確認してもらいOKとなった。 1月の発表会に使われる予定で12月中旬頃までに追加製作し6セット納品予定。同じものを6セットも作るのは家具としては(家具と呼んでいいのか微妙だが)初めて。塗装色も決まったのであとはひたすら作るだけ。

今月は、部屋のコーナーに置く三角棚も納品済み。角部分の脚がコンセントに近いので抜き差し時に支障がないようコンセントに近い部分だけ脚を細くしている。

というようなわけで木工なら何でも特注賜りま~す。

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リビングテーブル完成

9月中旬から製作を開始していたリビングテーブルだが昨日ようやく完成して納品も終えることができた。製作期間およそ40日間、過去三本の指(ホントは二本だけど)に入る大作である。どこにも曲線・曲面のない直線・平面だけで構成したテーブルで、板の角の部分も一切円弧成分のない45度の平らな面取りをほんの少し(1mm程度)手鉋で施しただけである。これまで作った家具の中で一切R要素のない初のチャレンジでもある。

依頼者の希望で天板とロの字の脚も面を揃えた面一のデザインになったので、その思想を徹底してみた訳である。とはいえ完璧な面一構造は、わずか0.1mm程度のずれも照明の当たり具合や指の感触で目立ってしまうので、最低限の面取りを入れたうえで天板は脚から1mm程度張り出すようにした。

広いリビングルームのかつてピアノが置いてあったという壁面に向かって置かれたテーブルを幸いにもご夫婦そろって気に入っていただけた。リビングルームがグレードアップしたとの有り難い感想までもらい、恐縮しつつも作者としては大変嬉しいことであった。最高級のウォルナット材をふんだんに使い、時に痺れながらの(ミスの許されない天板最終カットやカンナ掛けに)経験は大変勉強になった。自動カンナの切れ味が落ちてきたため途中で機械の設定や刃物交換の試練も乗り越えての無事完成、達成感に浸っている今夜である。

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ちなみにここが引き出し(納品前)

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引出し製作

リビングテーブルの引き出しの箱部分が出来上がった。木工の修行中は(今も継続中だけど)手鋸とノミでホゾを刻んで作った時もあったが、アリ継ぎ(先が広がったホゾ)など手作業でやると精度よくやるにはべらぼうな時間が掛かり、複数の引き出しを作るには集中力が続かない。と言うわけで最近はもっぱらアメリカ製の道具を使っている。設定方法を思い出すのにマニュアルをしばらく読まないといけないのだが、一旦設定が終わると極めて短時間でアリ継が出来る(アラレ継とかもOK)。1インチピッチのほぞしか刻めないが(可変のもあるが手持ちのは固定)引き出しにはこれで何の問題もない。

この道具(治具ですね)は、写真のような分厚いアルミでできたテンプレートを加工する材の上に固定してルーターに定められたビットを取り付けて型に沿ってなぞればOK。ただ、ピッタリと合うほぞを切るのはそれなりの経験と使いこなしが必要(だと思う)。 ほぞ加工が終われば底板を入れる溝を掘り底板と共に箱を組み、手カンナでホゾの出っ張りを平らにすれば完成となる。何度も使っているのに、やり方が未だしっかり身に付いておらず、使いたびにマニュアルを読み直すところからスタートとなる。ひたすら修業を積まないと出来ないような精密な加工を道具の工夫であっさりと誰にでも出来るようにしてしまい、その道具を安い量産価格で広めてしまうという点にもアメリカ木工の凄さがあると思う。

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設定さえ済んでしまえば、こういう加工がたちまちのうちに完成。集塵機構のないルーターを使うので机の周りは木くずだらけ。

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脚の組み立て接着も完了し、リビングテーブル完成まであと少しである。

リビングテーブル製作進行中

リビングテーブルの製作が進行中。注文していたテーブル天板に使うウォルナット厚板もシルバーウィーク明けに無事届いた。反りや曲がりも少なく節もない素晴らしい材で(値段も素晴らしいけど)、大きいのは44cmもの幅がある。そこから惜しげもなく白太部分(外周側の白っぽい部分)を切り落としてもう一枚の板と矧ぎ合わせて50cm幅×140cm長の天板を作るのである。ただ、2.5mほどの長さの板から1.4mの天板を切るのはなかなか勇気のいる作業ではある。万が一、測り間違えて短く切ってしまえば一巻の終わりだし、切断面に節や穴が出たらガックリ来ることになる。 板の右側から切り出すのと左側とどちらがいいかなどと板を何度もひっくり返しながら悩んでいるうちに時間が過ぎていく。

とは言いつつも製作は着実に進行し、脚材のほぞやほぞ穴加工も完了し、テーブル天板の矧ぎも本日完了した。 反りもなくパシッと平面が出ていてよしよし、である。天板を矧ぐ前にテーブル全体の仮組みをして万が一にも左右の脚間と天板の寸法に勘違いのないことも確認済みである。ということでいよいよ引き出し加工に入れそうである。

(角のみ盤の押さえ部とハンドルを外してほぞ穴加工中)

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(脚材加工終わり)

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(天板矧ぎ)

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(仮組み、矧ぐ前の天板を乗せた状態、引き出し板はクランプで仮止め中)

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リビングテーブル製作開始

現役時代、職場の上司だった方からリビングに置く奥行きの浅い洒落たテーブルが欲しいということでいくつかデザインを書いてやり取りした中から注文を頂戴する運びとなった。微調整を繰り返し、最終的には、次のデザインに決定した。

fb用C

fb用B  (こういう案も登場)

材料は、ウォルナットに決定。家具用材の中でも非常に人気の高い北米産の高級材である。更に天板には、30数ミリの厚材を使うことに決定。ウォルナットは、家具になるために生まれてきたような材で、他材にはない色調や優美な木目が人気の最大の要因かと思うが、作る側にとっても実に加工性に優れた材である。硬過ぎずかといって柔らかくもない、木に粘り気があるので刃物での切り心地がいいのである。切断面の端が欠けたりすることも少なく、気持ちよく加工を進めることが出来る。更に、仕上げた木の表面はしっとりとした肌触りの上に塗装した瞬間に一気にシックでエレガントな表情に一変するのである。 日本中の森を杉とヒノキだらけに変えたのが誰の判断だったのか知らないが、当時ウォルナットにでもしていれば(日本で育つかどうか知らないが)、今頃林業の様子も全く違っていたのではなかろうか。北米では、計画的に植林をして高級材として世界に供給されているようである。

で、その北米からはるばる丸太のままで日本にやって来て日本で製材された中から(これを国内挽きと呼び、現地で製材された現地挽きより高級材となる、らしい)何枚かが縁あって滋賀県までやって来て、いまテーブルに生まれ変わろうとしている。帯鋸で製材され人工乾燥された板材は、3m近い長さでほぼ確実にどこかに節(枝のあったところですね)があり、反っていたり曲がっていたり、板の端の方にはまずヒビが入っていて、また元の木の外周部に近いところは白太(ウォルナット色でなく白っぽい部分)となるので、出来上がりの家具の場所ごとにどの部分を使うかをかなり慎重に検討することが必要となる。これを「木取り」と呼ぶのだが、何枚もある板材のどこを使って無駄少なく、適材を適所に割り振るかという、木工の中でもかなり想像力や決断を要する面白い作業である。その面白くも難しい木取りを終えて(ほぼ上手く行ったかな)若干大きめに切って鉋掛けをした材を並べたのがこの写真である。奥の方の白い板は引出しに使うシナの木。

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充分乾燥した板材でも切ったり鉋を掛けたりすると、木の内部応力バランスが変わるため若干木が動くのでこの状態で数日シーズニングしてから最終厚さに再度鉋掛けする必要がある。因みに原木丸々一本(枝まで含めてだと思う)のうち家具に使われるのは1~2割というのをどこかで読んだ覚えがある。製材された板からですら半分近くは鉋屑・おが屑や使えない端材となってしまうのである。

(しばらくこのトピックス続く)